6月6日7時18分「芒種」です。旧暦5月、午(うま)の月の正節で新暦6月5~6日頃。天文学的には太陽が黄経75度の点を通過するときをいいます。
芒種(ぼうしゅ)とは、稲や麦など「芒(のぎ)」〔※〕のある穀物を植え付ける季節の意です。芒の付いた実とは「もみ」を指します。梅雨入り前、いよいよ田植えの時期です。雨が降り続き、農家は田植えの準備などで多忙を極めます。
芒種のおよそ5日後が「入梅」となります。梅の実が熟する頃。雨が降って、カビが生える、うっとうしい季節でもあります。カマキリや蛍が現れ始め、梅の実が黄ばみ始めます。
◇◇◇五月雨(さみだれ)◇◇◇
陰暦5月(現在の6月)に降る雨で梅雨のことを指していました。すなわち日が差さないほど厚い曇が垂れ込めている状態の雲を「五月雨雲」と呼んで、曇天の代名詞でした。
◇◇◇五月晴れ(さつきばれ)◇◇◇
陰暦(旧暦)では「五月晴れ」は、曇天の中のほんの少しのぞいた青空を指ました。それが明治3年(1870)からの新暦5月は小満芒種のいい気候が続く時期で、いつの間にか「五月晴れ」は雲ひとつない晴天の意味に変化しました。改暦によって暦の解釈が変わったケースです。
◆◆「七十二侯」◆◆
◆初候「螳螂生」(とうろう しょうず):螳螂が生まれ出る時節。
◇蟷螂(とうろう)=カマキリ。昆虫綱・カマキリ目(蟷螂目、Mantodea)に分類される昆虫の総称。前脚が鎌状に変化し、他の小動物を捕食する肉食性の昆虫。
◆次候「腐草為蛍」(ふそう ほたる と なる:腐った草が蒸れ蛍になる。
◇腐った草が蒸れて蛍となる時節。この頃、腐った草などの下から、蛹(さなぎ)から孵化した蛍が夕闇を知り光を発し始めます。腐草(ふそう)=腐った草。
◆末候「梅子黄」(うめの み きなり):梅の実が黄ばんで熟す時節。
◇梅子(ばいし)=梅の実。
◆◆「6月の花」◆◆
「紫陽花(あじさい)」アジサイ属 雪の下科
学名:Hydrangea(ハイドランジア)水の器 語源:ギリシャ語のhydro(水)と
angeion(容器)開花時期:6月1日~7月15日頃。「あじさい」は、青い花が集まって咲く「あずさい」が変化したもの。「あず(集)+さあい(真藍)」
「紫陽花」は、唐の詩人・白居易〔※〕が命名した別の紫色の花のことで、あじさいの花のことではなかったのですが、平安時代の学者が「あじさい」にこの漢字を当て、その誤用が広まってしまったのだそう。中国では、「八仙花」「綉球花」などと呼ばれます。
日当たりと水はけの良い肥えた土を好みます。花の色は、紫・ピンク・青・白など。土壌が酸性なら青味が強く、アルカリ性なら赤味が強くなります。この色の付いている部分は実は「ガク」で、花は小さな点のようにガクに付いています。日本特有の花木で、西洋アジサイは江戸末期に長崎のオランダ商館の医師シーボルトらがヨーロッパに持ち帰って改良した品種の逆輸入品種です。
花言葉は「辛抱強い愛情」「元気な女性優しい心」「謙虚」など。北鎌倉の「明月院」〔※〕は、境内に多くのあじさいが植えられ「あじさい寺」として有名。
※芒(のぎ・はしか):稲や麦などの植物で、花の外側の穎(えい)の先端にある針状の突起。「禾」とも書く。
※白居易(はくきょい):中国、唐代の詩人。字(あざな)は楽天。本籍は太原(たいげん)、生地は新鄭(しんてい)。地方官吏の次男として誕生。口もきけぬ幼時、すでに「之」と「無」との字を弁別し、5歳のころから作詩を学び、16歳で早くも人を驚かす詩才をひらめかした。
※鎌倉明月院(かまくら めいげついん):通称「あじさい寺」は平治元年(1159)平治の乱で戦死した首藤(山ノ内)俊通の供養として、息子の經俊が明月庵を建てたのがはじまり。神奈川県鎌倉市山ノ内189 ◇JR北鎌倉駅より徒歩10分
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆
芒種から数えて5日後の6月10~11日頃が暦の上での入梅です。
例年だと小満(5月21日頃)から芒種(6月6日頃)を経て入梅(6月11日頃)までは気候もよく過ごしやすい日が続きますが、近年、線状降水帯やゲリラ豪雨による水害が発生しています。
ともあれ暦の上では入梅のあとは「夏至」。夏本番です。
梅雨時は食品の傷みに注意です。学校給食などで食中毒も出ます。食肉など食品関係の方は注意を要する時期です。
読者の皆様お体ご自愛専一の程
筆者敬白