産業の変革:ライバルが手を組むIT産業・スマホ急伸、クラウド普及の需要とは

国内スマートフォン出荷台数:前年度比3、7倍に拡大
001610_3.jpg米調査会社のIDC(International Data Corporation)が発表した「Worldwide Quarterly Mobile Phone Tracker」によると、平成23年度第1四半期(4月〜6月)のスマートフォン(高機能携帯電話)の全世界での販売台数が、約9,960万台と前年同期の約5,540万台の約2倍近く普及とありました。シェアトップのフィンランドの「Nokia」は2,420万台で構成比24.3%となっていますが、前年同期の38.8%から大きくシェアを落としています。一方、米アップルの「iPhone」は昨年のシェア15.7%から18.7%と拡大し1,870万台に拡大。IDCではアップルの好成績を、米国と中国での販売が3桁成長だったことに要因と見ています。
国内でもスマートフォンの販売台数が伸びており、平成22年度の出荷台数は855万台と、前年度比で約3、7倍に拡大しています。メーカー別では「iPhone」がトップを守り、次いでシャープ、ソニー・エリクソン、サムスンが続いています。今年度の出荷台数は約2、1倍の1,820万台と予測され、縮小する国内市場に消費者の争奪競争が予測されます。アップルやサムスンに負けない国内メーカーのシェア拡大に期待したいところです。

シャープ:需要の変化を見極め「亀山モデル」工場をスマホ、タブレット向け工場へ
東芝とソニーは、スマートフォンやタブレット型端末に使われる中小型液晶パネル事業で統合が検討と報道がありました。電機のライバル社同士が統合を検討するのは、この先約3年需要が確実に見込めるとあります。次世代DVD規格では両社は真っ向からぶつかりましたが、全世界の液晶パネルのシェア確保を考えれば手を結びオールジャパンで海外市場を確保することも当たり前となるでしょう。米ディスプレサーチ社によると、平成22年度の中小型液晶パネルの世界シェアは、東芝が9.2%の4位でソニーが6.1%の7位となっています。両社が統合すればシャープの14.8%を抜いてトップに立ち、サムスンは3位に後退します。国際競争力を勝ち抜くにはライバルであれ手を組む時代。政界より大連立決断の早さは国際競争に勝って国内産業に波及効果をもたらすためなのです。
一方、シャープは、薄型テレビでブランド名にもなった「亀山モデル」の工場を成長市場への対応を理由に、中小型液晶向けに転換すると発表しています。同社の片山社長は「液晶産業に大幅な価格の下落など、大きな変化が起きている」と、国内では家電エコポイントの終了、海外ではサムスン、LGなど価格競争などで薄型テレビ市場が踊り場にきていると示しています。一方でスマートフォンやタブレット端末向けの高精細液晶のニーズが急拡大していることから亀山第1工場をスマートフォン向けに、第2工場をタブレット型向け高精細液晶工場にラインを設置するとしています。民間企業の決断の早さは、生き残りがかかっており雇用を守るためなのです。

パソコン不要時代に!?ネットとブラウザ(閲覧ソフト)だけでデータ利用可能に
IT産業では、米アップル社がクラウドコンピューティングを活用し、利用者の写真や音楽のデータを同社が保管しネット経由で随時データ提供する無料サービス「iCloud(アイクラウド)」を米国で発表しました。同社は、音楽や書籍データ化で、ネットからダウンロード販売するなど独自のルールで過去の常識を覆してきました。「iCloud」は、利用者がパソコンで作ったデータや、音楽配信サイト「iTunes Store」で購入・ダウンロードした音楽や書籍。また「iPhone」で撮影した写真などを全てアップル社のデータセンターで保管。これらのデータはネット軽油でパソコンや携帯端末「iPad」などに送られ、常にどの端末でも共有されるとあります。利用者にとっては、会社のパソコンでデータを作って、出先の取引先のパソコンや、持参した「iPad」などで修正、共有し、修正したデータはどの端末からも見られるなど利点があります。同社CEO・スティーブ・ジョブス氏は会見で、「10年前はパソコンがデジタルの中心になると考えていたが、これからはクラウドだ」と、また新しいビジネスモデルに独走態勢の感があります。

利用者にメリットある事業は成長を遂げる
消費者向けのクラウドサービスは、ビジネスとして捉えればアップル社は、「iCloud」のように利用者が増えることで端末機の拡販が見込め、米グーグルではスケジューリングやメールなどのサービスの利用増による広告収入の増加。米アマゾンでは通販の拡大と消費者の取りまき競争が始まっています。ここに日本企業が名を出さないことが残念ですが6月7日、クラウドの法人向けサービスとして、米マイクロソフトと富士通が共同で8月から国内でサービスを始めると発表がありました。国内企業にとってメリットのあるサービスが期待されます。
IT産業の新しい技術・システム、活用法などは日々報道され、その技術革新のスピードも年単位から月単位、日単位とスピードを早めます。まさしく変革を遂げるものであり、復興を遂げようとしている日本は他の産業でも大きく変わっていくものもあります。縮小する国内市場から政府支援の自由貿易で中国やインドなど成長力のある市場に目を向け、自社だけで無理なら異業種、ライバル社とも組み市場を獲得しなければならないでしょう。内需型産業では風評被害の早期解消で観光産業の復活や医療・介護、住宅・リフォーム、新エネルギーにIT産業と成長産業にも情報の目を向けなければなりません。政府の金融支援によって新しい融資やリスケジュールで体力温存の今、財務精査でしっかり事業の収益性を把握し、事業復興計画をたて会社再建しましょう。


[2011.6.11]

記事一覧


日銀はなぜ今、利上げするのか―物価を抑えて、成長まで抑えてよいのか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 09 / 19

◆二十四節気◆令和8年(2026)9月23日「秋分(しゅうぶん)」です。◆

季節のお便り

2026 / 09 / 18

最低賃金1,177円時代へ――「賃上げできない会社」がこれから直面すること

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 09 / 08

◆二十四節気◆令和8年(2026)9月7日「白露(はくろ)」です。◆

季節のお便り

2026 / 09 / 01

人手不足国家・日本は外国人材で救われるのか?――2027年「育成就労制度」で変わる中小企業の採用

八木宏之の経済時事ウォッチ 未分類

2026 / 08 / 24

◆二十四節気◆令和8年(2026)8月23日「処暑(しょしょ)」です。◆

季節のお便り 未分類

2026 / 08 / 18

日銀はなぜ利上げを急ぐのか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 08 / 14

◆二十四節気◆令和8年(2026)8月7日「立秋(りっしゅう)」です。◆

季節のお便り

2026 / 08 / 03

骨太の方針2026を読み解く

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 08 / 02

◆二十四節気◆令和8年(2026)7月23日「大暑(たいしょ)」です。◆

季節のお便り

2026 / 07 / 21

日銀金融政策決定会合(6月)を読み解く(後編)

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 07 / 17

日銀金融政策決定会合(6月)を読み解く(前編)

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 07 / 06

◆二十四節気◆令和8年(2026)7月7日「小暑(しょうしょ)」です。◆

季節のお便り

2026 / 06 / 30

◆二十四節気◆令和8年(2026)6月21日「夏至(げし)」です。◆

季節のお便り

2026 / 06 / 19

日銀はインフレの原因を見誤っているのではないか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 06 / 17

2026年上半期の日本経済を総点検

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 06 / 09

◆二十四節気◆令和8年(2026)6月6日「芒種(ぼうしゅ)」です◆

季節のお便り

2026 / 06 / 03

「関税ショック」後の中小企業サバイバル戦略

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 05 / 29

2026年「骨太の方針」はなぜ重要なのか ― 中小企業経営者が知るべき“国家の方向性”と与党内のせめぎ合い

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 05 / 21

◆二十四節気◆令和8年(2026)5月21日「小満(しょうまん)」です。◆

季節のお便り

2026 / 05 / 19

大胆な投資促進税制とは何か

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 05 / 07

◆二十四節気◆令和8年(2026)5月5日「立夏(りっか)」です。◆

季節のお便り

2026 / 05 / 02

日銀「金融政策決定会合」から読み解く日本経済

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 04 / 29

◆二十四節気◆令和8年(2026)4月20日「穀雨(こくう)」です。◆

季節のお便り

2026 / 04 / 17

値上げは悪いこと?物価高時代に企業が取るべき経営戦略

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 04 / 17

◆二十四節気◆令和8年(2026)4月5日「清明(せいめい)」です。◆

季節のお便り

2026 / 04 / 02

日本企業に起きている「静かな淘汰」

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 03 / 31

金融政策決定会合(3月)-中小企業経営者が知っておくべき金融環境の変化-

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 03 / 23

◆二十四節気◆令和8年(2026)3月20日「春分(しゅんぶん)」です。◆

季節のお便り

2026 / 03 / 16

エネルギー価格上昇に中小企業はどう対応するか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 03 / 12

◆二十四節気◆令和8年(2026)3月5日「啓蟄(けいちつ)」です。◆

季節のお便り

2026 / 03 / 02

第二次高市内閣で日本の産業政策はどう変わるのか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 02 / 26

◆二十四節気◆令和8年(2026)2月19日「雨水(うすい)」です。◆

季節のお便り

2026 / 02 / 16

【衆議院選挙後】新政権と金利上昇をどう読むか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 02 / 09

◆二十四節気◆令和8年(2026)2月4日「立春(りっしゅん)」です。◆

季節のお便り

2026 / 02 / 01

消費税減税は実現するのか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 01 / 31

日銀金融政策の転換期をどう読むか

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 01 / 25

◆二十四節気◆令和8年(2026)1月20日「大寒(だいかん)」です。◆

季節のお便り

2026 / 01 / 17

2026年度予算――規模・評価軸・企業経営への示唆

八木宏之の経済時事ウォッチ

2026 / 01 / 03

◆二十四節気◆令和8年(2026)1月5日「小寒(しょうかん)」です。◆

季節のお便り

2026 / 01 / 02

日銀・金融政策決定会合(12月) 利上げの背景と今後の政策運営

八木宏之の経済時事ウォッチ

2025 / 12 / 21

◆二十四節気◆令和7年(2025)12月22日「冬至(とうじ)」です。◆

季節のお便り

2025 / 12 / 17

取引適正化推進法(旧:下請法)とは?

八木宏之の経済時事ウォッチ

2025 / 12 / 10

◆二十四節気◆令和7年(2025)12月7日「大雪(たいせつ)」です。◆

季節のお便り

2025 / 12 / 03

外国人のビザ要件強化の背景とその影響

八木宏之の経済時事ウォッチ

2025 / 11 / 30

高市政権×21兆円補正予算:中小企業に訪れる“追い風”

八木宏之の経済時事ウォッチ

2025 / 11 / 24

◆二十四節気◆令和7年(2025)11月22日「小雪(しょうせつ)」です。◆

季節のお便り

2025 / 11 / 16

ガソリン税ついに廃止!軽油も2026年にゼロへ

八木宏之の経済時事ウォッチ

2025 / 11 / 10

◆二十四節気◆令和7年(2025)11月7日「立冬(りっとう)」です。◆

季節のお便り

2025 / 11 / 04

どう変わる?日銀の10月会合に見る金融政策の行方

八木宏之の経済時事ウォッチ

2025 / 10 / 31