都知事選 掲示板騒動とは

都知事選 掲示板騒動とは

史上最多の56人が乱立

今週末の2024年7月7日は東京都知事選挙の投票日です。

今回の都知事選では、候補者は史上最多の56人が乱立しており、その数の多さが話題となりました。ただ今回さらに世間を騒がせた騒動が「掲示板ジャック」です。

「掲示板ジャック」とは

今回の選挙が異例といわれるのは、候補者の数だけではありません。

市中の候補者のポスター掲示板に、イヌやネコの写真や動物のイラストのほか、候補者ではない人物など、選挙と関係ないポスターが貼られるという、前代未聞の事態が発生しました。ポスター掲示板の3分の1以上に候補者以外のポスターが掲示される選挙は後にも先にもないかもしれません。

(都内の掲示板。 加工処理しています)

何故このようなことが起こり得るのでしょうか

本来は各候補者のポスターが貼られるはずの掲示板に、同じデザインのポスター24枚が並ぶという異常事態が発生しています。

ではそもそもなぜこうした事が可能なのでしょうか。

実は今回の都知事選では、ある政党が19人もの多くの立候補者を立てました。またさらにその政党に協力する他の候補者5人が現れ、合計24人分の掲示板が寄付により「販売」されるという事態が発生したのです。

どういう仕組みかというと、本来であれば24人分の掲示枠には、それぞれの候補者のポスターが貼られるはずです。しかし今回はなんと1口2万5000円の寄付をすれば、その掲示板の枠には寄付した人が自由に「オリジナルポスターが貼れる」という呼びかけを行ったからです。掲示するポスターは、宣伝でも主張でも、極端な話し自分の飼っている犬の写真でもいいとなっています。

都内には1万4000カ所の掲示場がありますが、1カ所の掲示板に24枚の同じポスターを貼ることができるという契約になっています。もし仮にすべての掲示場に申し込みがあれば、2万5000円✕1万4000カ所分で、合わせて3億5000万円もの巨額な寄付が集まる計算になります。こうなるとすでに選挙というよりは、むしろ新手のビジネスと言え、これが今回の騒動の根本になっているのです。

何でもありの無法地帯

掲示された“異常”なポスターは下記のようなものがありました。

  • 女性風俗店に誘導するポスター(警視庁が風俗営業法違反で警告を出す)
  • 亡くなった若手俳優の似顔絵を使い、所属事務所が抗議した
  • 人気キャラクターのファンアートと見られるもの
  • アイドルグループらしき人たちの宣伝
  • 主張不明のかわいい動物のイラスト
  • 「歌舞伎町ホスト」などと書かれた男性の顔写真入りのポスターだった。

などです。開いた口が塞がらないとはこのことでしょう。

公職選挙法には禁じる規定がない!

こうした無法地帯を取り締まる法律はないのでしょうか。

実は、公職選挙法では選挙ポスターに他の候補者を誹謗中傷したり、虚偽の事実を掲載したりすることは禁じられていますが、選挙に当選することを目的としたポスター以外を禁止する規定はありません。今回の騒動は、まさにその“選挙制度の穴”をついたものと言えるでしょう。

結び

「法律に書いていないからやってもいい」などということを言っていると、次第にどんどんと法律や決まり事で縛らなければならなくなります。そうなると必然的に堅苦しい社会になっていくのではないでしょうか。

7月7日の選挙結果がどうなるは分かりませんが、一有権者として良識ある行動を取りたいものです。


中小企業融資 新法「事業性融資推進法」成立

国会議事堂.jpg 

 

「個人保証に頼らない」 新興融資へ120年ぶり新担保法案

令和6年6月7日、企業の技術力や成長性といった事業価値を担保に融資ができるようになる新法「事業性融資推進法」が成立しました。同法は、担保登記システムなどの関連する法律の更改を経て2年半以内に施行されます。最大のポイントは、企業の持つ事業価値全体に担保権を設定できる「企業価値担保権」を新設したことです。これは実に約120年ぶりに融資に関わる法律上の新たな担保権が生まれたことになります。

資金調達の多様化


一般的に銀行など金融機関が企業に融資する場合、返済されないリスクに備えて担保や保証をとります。経営者個人の資産が対象の経営者保証を利用したり、企業が持つ不動産を担保にしたりすることが一般的です。また在庫や売掛債権など「動産担保」と呼ぶものも登記することで担保になります。

 

新法.jpg

これらの担保は企業が傾いたときに企業活動に欠かせない事業所や生産設備のある工場を失いかねず、企業再生の足かせになって、再建が出来ない主な要因になっていました。また、新規のスタートアップ企業などは担保提供として差し出せる手持ちの資産が少なく、金融機関からの新規の融資を受けにくいという課題がありました。

新しい概念の企業価値担保権を使えば、担保を持たないスタートアップ企業でも運転資金を調達する道が開けました。金融機関による経営者の個人保証原則が緩和され、金融機関融資のあり方が抜本的に変わる可能性も秘めています。

 

金融機関の姿勢

問題は、金融機関がこの新たな仕組みをどこまで活用できるか。全資産を担保にとるため、管理のためのコストが高くなり、その分貸出金利が高くなるという可能性も出てきます。

 
みずほ三井住友.jpgのサムネール画像

 

みずほフィナンシャルグループは部門ごとにどのような活用が可能かアイデア会議を開きました。受託者が担保権の管理や保全を行う担保権信託など、類似の手法をみずほ信託銀行が手がけています。

三井住友銀行は外部講師を招き、行内で勉強会を開催しました。実務上の論点を洗い出すなど準備を進めているようです。

 

 

現実的な課題

金融機関にとっては事業の目利き力を見極められるかという課題が残ります。

地銀や信用金庫の多くが融資する際に使うのは、企業の貸借対照表や損益計算書、調査会社の評価を機械処理にかけ、評点を出して債務者区分する方法が一般的です。

事業性融資推進法での企業価値担保権が導入されれば企業のノウハウや技術力、将来性など財務諸表に表れない将来の価値を行員が見極めて評価する必要があります。金融業界では特に将来キャッシュフロー(CF)の現在価値をはかるディスカウントキャッシュフロー法(DCF法※)がよく使われますが、地銀や信用金庫などではなじみは薄く、どこまで対応できるのかは今のところ未知数と言えます。先ずはメガ銀行の動きをみてから、というのが地銀や信用金庫など実態でしょう。

 

※ディスカウントキャッシュフロー法(Discount Cash FlowDCF法)

企業価値評価の代表的な算出方法の一つ。企業が生み出すキャッシュフローに注目して企業価値を算出する方法であり、具体的にはフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算出します。

簡易例)金利3%、1年後の100万円の現在価値をDCF法で計算すると

    100万円÷(1+0.03)≒97874円  現在価値は97874

 

 

バスに乗り遅れるな

このように金融行政も大きく動き出しています。新法の施行は冒頭ご紹介したように、担保の登記システム更改などを経て2年半以内に施行されます。

まだ先の話のようですが、2年半以内はアッという間に時は過ぎます。

企業価値を高めるためには何が必要か。

自社の強みは何か、収益の源泉は何かといった洗い出しや、将来価値を現在価値に割り引く”ディスカウントキャッシュフロー”といった考え方も理解しておく必要があるといえるのではないでしょうか。

 

これからの中小企業

新法施行で金融機関担保の考え方に新しい概念が入ると、企業経営の考え方も変わってきます。すでに優良企業が不動産を資産として取得する時代は終わりを迎えつつあります。金融行政の通達や情報をいち早く取得して、これからの経営に活かす時代がすぐそばまで来ています。経営者はアンテナを上げて情報収集に邁進しましょう。

 

 

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