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<震災>二重ローン問題


二重ローン問題、解決せず支援期間を延長
平成23年に起きた東日本大震災から7年が過ぎ、地震や津波で被災した企業の二重ローン対策を支援する「東日本大震災事業者再生支援機構」の支援期限。
本来は、今年2月22日まででしたが、今年1月に2021年3月末まで3年延長する法改正案を全会一致で可決しました。
同機構によると、震災前の債務負担が大きい企業が依然として多く、二重ローン問題を解決して地域を発展させたいと述べています。
二重ローン問題は、企業によって状況が千差万別であり、再建しても資材や人件費の高騰などで運転資金が見込み額よりもかさんでいるといいます。
さらに、東京電力福島第1原発事故の賠償期限後の対応も不透明であり、資金繰りに懸念が残る状況です。

被災企業の債権を安く買取り、企業の負担を軽減、早期再建へ
「東日本大震災事業者再生支援機構」は、被災企業支援のために平成24年3月に業務を開始し、企業のほか個人事業者が震災後に新たな資金の借入れで債務を抱える二重ローンの負担を軽くするため発足。
銀行など金融機関から債権を元本よりも安く買取り、リスケジュール(条件変更)や一部債務を免除し、企業の負担を軽減し再生させることが目的です。
同機構へは、6年間で2,729件の相談依頼があり、740件の支援を決定しましたが、この件数を多いと見るか少ないと見るか。
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平成27年10月からは、被災企業の商品・販路開拓支援や、営業戦略・経費削減の発案、資金繰りアドバイス、スポンサー紹介など「ソリューション事業」を開始し、これまで353社をバックアップしています。

被災企業、債務軽減してもらったのに・・・・全額返済?
ただ、被災企業の再生を支援する「東日本大震災事業者再生支援機構」が、金融機関から債務を安く買取ったにもかかわらず、企業へ元本全額を返済させたことが、10月28日に判明。
宮城県の運送会社が、元本を全額返済させたのは同機構の不当利益として、差額の約2億6,000万円の返還を求め、東京地裁へ提訴しました。
債務の負担を軽減し、企業の再生を支援する機構の設立趣旨に反するとしています。
同機構にも言い分はあると考えられ、今後の展開が注目されます。

自然災害、年々増加?企業、個人の負担が懸念
今年は、例年になく地震や台風に豪雨・土砂災害・河川氾濫など相次いで自然災害が起き、企業や個人に大きな被災を与えました。
企業では、設備投資した工場や機械が損失したり、個人では、ようやく手に入れたマイホームが全壊したりと、ローンだけが残り新たな修復、再建に再び資金が必要となり、二重ローンは未だ解消されていないのが現状です。
地球温暖化により、自然災害は年々増えると考えられ、国土交通省では、「洪水」や「津波」、「土砂災害」などリスクをハザードマップで細かく知ることができるようにしました。
自然災害はいつ起こるかわからず、企業、個人も常にチェックし損害、火災・地震保険など十分検討する余地があります。


[2018.11.13]

被災企業の債権などの買取り、金融支援を延長
自民、公明両党は、平成23年に起きた東日本大震災で被災した企業など、二重ローン対策支援期限を今年2月21日から3年間延長する法案を1月22日予定の国会に提出、成立を目指す方針を示しました。震災前の設備投資融資など債権の買い取りなど被災企業へ支援決定期限を2021年3月末まで延ばします。
国が平成24年に設立した「東日本大震災事業者再生支援機構」の設置法改正案を提出し、支援期限切れの2月21日より前に改正法施行を目指します。震災からの復興、資金繰りを支援します。

これまでの支援件数729件、買い取り債権額1,306億円
同機構では、震災前の債権が残る中で、新たに事業所や工場、倉庫などの再建で資金が必要になった被災企業を金融支援し、事業再生計画を策定後に震災前の債権を銀行など金融機関から買い取る他、一部の債務免除やつなぎ融資などでも支援します。
これまで同機構の支援件数は昨年11月末時点で729件、買い取り債権の元本総額は1,306億円、債務免除額は647億円、出資額は43億円となっています。
支援の決定件数は平成25年をピークに減少傾向にあり、集団での高台移転などに時間がかかり、仮設の事業所、店舗、工場などから出て他県へ移転し本格的に再建を進める企業も出てきています。
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一方、東京電力福島第1原子力発電所事故の影響を受ける、懸念される企業から県や市町村などへ風評被害を訴える相談は現在も続いています。除染なども行われていますが、全地域をカバーすることは不可能であり、目に見えないだけに懸念は残ります。

原子力規制委員会・前委員長が飯館村に引っ越し、その覚悟とは
原子力規制委員会の更田委員長は今年1月11日、原発事故の避難指示が解除された福島県楢葉町を訪問し、松本町長と課題について意見交換。委員長は、昨年12月にも福島県の飯館村や南相馬市を訪問。全て前委員長の田中氏が案内役となりました。
田中氏は初代原子力規制委員会の委員長に就任、以前は原発を推進してきた日本原子力研究所に在籍していた経緯もあり批判も浴びましたが、昨年9月に5年の任期を終え、続投の誘いを断り、福島県飯館村に引っ越しました。その覚悟とは何か。飯館村にとっては強い味方となり大歓迎されました。
震災からの復興に関しては、政治家や経済評論家など「人ごと」のような意見や、地元民に「失礼な意見」も数多く出ましたが、新設された復興庁こそが福島へ引っ越すべきではなかったのでしょうか。

2020年度まで「復興・創生期間」とし被災地強化
安倍政権は、平成30年度予算案で、「東日本大震災事業者再生支援機構」の財務基盤を強化するため、100億円の予算を計上。2020年度までを「復興・創生期間」と位置づけ被災地での自立支援に全力を尽くす方針を示しました。
日本は社会保障費などで財政は切羽詰まった状態であるものの、年間100億円の予算でどれほどの企業を支援できるのかが見通しが立ちません。
同機構では、今後も債権管理や資金繰り管理にとどまらず、商品開発・販路開拓支援や営業戦略・経費削減案、補助金・助成金活用支援、専門家派遣支援など幅広く企業支援を継続するとしています。震災から7年近く経過、復興のスピードアップが期待されます。


[2018.1.19]

家があるのに帰れない!「帰還困難区域」2万5,000人
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東日本大震災から3年が経ち、現在も仮設住宅や親類宅で暮らす被災者は約27万人。この中でも原発事故により「帰還困難区域」に指定され自宅があるのに放射線量が高いため帰還できない人は約2万5,000人います。再建に向け、国に自宅を買取って欲しいとの声もあがります。
津波と原発事故の二重の被害を受ける南相馬市では、防災集団移転促進事業が進みますが,その買取り価格は1平米当たり4,920円〜1万1,280円と条件は厳しいようです。それでも買取りが決まらぬ土地は東電の賠償頼みとなっているのが現状です。

支援策,2万件の見込みが800件
震災前の住宅ローンと再建するための住宅ローンの二重ローン問題は、これまで国会でも議論されてきたしたが、思うように進んでいません。被災者の住宅ローンを減免する個人版私的整理ガイドラインは平成23年8月に策定され運用を開始。当初,2万件の利用が見込まれていましたが、これまでの成立件数は僅か800件。
ガイドラインは、わかりづらく敷居も高いとの理由でこれまで3回ほど見直しがされましたが、利用者は見直し前にすでに相談。「住宅ローンはやはり払うもの」として返済を再開し、避難先の家賃と二重に支払う被災者も少なくありません。

災害で自宅全壊したら住宅ローンの半分免除、日本初の新商品
三井住友銀行は2月28日から二重ローンを防ぐ住宅ローンの取扱いを始めました。住宅が地震や津波などの災害により全壊した場合,自治体が全壊と認定すればローン残高の半額が免除されます。地震保険では、住宅が被害を受けた場合,最大でも支払われる額は火災保険金額の半分が上限。新たな住宅ローンと地震保険に加入すれば負担はほぼゼロになる仕組みです。
同行では、自然災害への備えを手厚くすることで生活をいち早く再建する助けになればとしています。二重ローンは、阪神・淡路大震災では抜本的な対策もとられず、東日本大震災では個人版私的整理ガイドラインが策定されるものの、利用が進まず新たな施策、法案が必要なようです。

首都直下型、南海トラフ・・また二重ローン多発の懸念
ここ数年,日本は地震や台風、竜巻、洪水など自然災害が相次ぎ、いつ何時我が身に降り掛かるかもわかりません。首都直下型地震や南海トラフ地震など被害の想定は発表されるものの、再建に向けた計画はなく住宅が被害を受ければ同様の問題がまた起きる可能性は大です。
金融庁など今後,個人版私的整理ガイドラインの周知徹底を再度図り、金融機関や被災者へ利用を促進。被災者の一早い再建には、何よりも金融機関の協力が不可欠です。

[2014.3.14]

金融機関、一定の住宅ローン債権を放棄
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東日本大震災により住宅を失い、新たに購入する住宅との二重ローン問題の解消が少しずつ動き出しています。政府や金融機関、弁護士、有識者などでつくられた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づき金融機関が一定の債権放棄に応じています。
震災の影響により震災前の借入の返済が困難になった場合、ガイドラインを利用することで現預金を500万円残すことができ、弁護士費用も国が負担。破産手続き(法的整理)とは異なり、個人の信用情報の登録など不利益も回避できます。
▼個人版私的整理ガイドライン運営委員会:「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」

相談件数4,670件、成立は523件1割強、準備中865件、合計3割
個人版私的整理ガイドライン運営委員会が9月6日に発表した相談件数は、平成23年8月22日から今年9月6日までの約2年で4,670件。このうち債務整理の成立件数は、523件と全体の約1割強ですが債務整理成立に向けて準備中の案件865件を合わせ成立となれば約3割に上ります。
地域別でみると宮城は310件、岩手が136件と続きますが、福島ではわずか52件。原発事故による除染・汚染水問題など影響は深刻です。債務整理成立に向けた準備中の案件でも宮城の457件に対し福島は11件と極端な結果となっています。

被災地の住宅ローンのリスケ7,901件、債権額は1,127億円
金融庁が被災地3県に所在する金融機関からヒアリングした調査では今年5月末現在、住宅ローンをリスケジュール(条件変更)している被災者は7,901件。住宅ローンの債権額は1,127億円に上ります。3県以外のリスケジュール件数も含めればさらに数は増え、震災から2年半、スピードアップが求められます。
東日本大震災では、地震による倒壊や津波で流された住居は約20万戸に上り、このうちの約8,000~1万件が住宅ローンを抱えたままとみられます。住宅を失い二重ローン問題で新たに新築できないでいる被災者は未だに多く実在しています。

義援金、支援金がリスケ返済原資にも
私的整理ガイドラインを利用し債務整理の成立数はようやく500件を超えましたが、さらなるガイドラインの周知も必要となります。被災者への義援金や支援金などの現金は、仮設住宅終了後に役立てられますが、これまでリスケジュールの返済原資となっていたのが実態。ガイドラインは不良債権を処理するためにつくられ、利用されず先送りすれば仮設住宅退去後に新たな住居費の負担となり金融機関にも影響が出ます。
被災地で住宅ローンを抱える被災者の連絡先は地域の金融機関が把握しています。今後は金融機関が牽引しガイドラインの利用を促し、二重ローン問題の解消、生活の基礎である住宅の問題が解決されて真の復興が待たれます。


[2013.9.13]

震災事業者支援機構:発足1年で債権、免除額わずか87億円
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東日本大震災で被災した企業が新たに資金を借り入れる「二重ローン問題」を支援する東日本大震災事業者再生支援機構は4月2日、既往ローン買取りなど支援を決定した件数が昨年3月発足以来167件になったことを発表。このうち債権買取りを伴う支援は160件。免除された総額は87億円となりました。
同機構発足当初、被災企業の既往ローン買取り額は約5,000億円と見込み、来年3月までの支援決定目標数を500件と設定。支援決定へのペースは依然上がっていません。復興庁では人員拡大や出先機関増設、広報をさらに強化するとしています。

産業復興機構:金融機関の合意284件、うち債権買取りは109件だけ
一方、経済産業省が主導する産業復興機構は、被災地5県に設置され、今年4月12日時点で金融機関などによる支援合意が得られた件数は284件。このうち、既往ローンなどの買取りが決定したのは109件にとどまります。
同機構は、平成23年11月に岩手と茨城で設立され福島、宮城などにも拡充。買取額を約2,000億円と見込み県や地域の金融機関、中小企業基盤整備機構などが共同出資しています。
産業復興機構、東日本大震災事業者再生支援機構とも民主政権時代に設立。既往ローンの買取りでは民主、自民党、さらに所管省庁間の縄張り争いだけが先行し、支援決定へのしくみなどを改善する姿勢はみられません。

栄光債権回収「被災者の負担軽減が必要」即座に債権放棄を決定
東日本大震災から2ケ月半の6月1日、横浜のサービサー(債権回収会社)の栄光債権回収株式会社(横浜市西区浜松町2−5 代表取締役:濱田  修氏)は、被災地域所在の1,414件の債権、総額88億5,674億円を放棄することを発表しました。同社では、震災被害があまりに甚大であり、被災者が困窮しているため一刻も早い負担軽減が必要と決断し債権放棄を決めました。サービサーは、法務省より営業許可を受け、金融機関などから買取った債権を回収する会社。役員には弁護士がいることなど義務づけられています。
震災後の民主党政権時、進まぬ被災企業・被災者支援をさておいて政争に明け暮れた時期に、民間サービサーの栄光債権回収㈱は債務者からの要請でなく、震災の重大性に鑑み自ら債権放棄を決めたのです。
▼栄光債権回収株式会社:「東日本大震災」被災地域内所在の皆様に対する債権放棄のご案内(平成23年6月1日)

二重ローン問題の解消:本来の目的を再認識する必要あり
震災から1年が経過し、政府は債権回収機構を立ち上げました。依然進まぬペースは、安倍政権へになって一層早急な対応、わかりやすいしくみへの改善が待たれます。目的は、被災地、被災者の救済であり、いち早い元の生活への復旧・復興支援です。被災企業、被災者は、今後の事業再開のメドが立たない現状を毎日、何年も目の当たりにし不安をぬぐえなければ、精神的に追い詰められてしまします。
事業再生の現場で目の当たりにするのは、リスケジュール(条件変更)を延長したまま、義援金や国からの助成金、補助金を申請してその資金が入ったら、ここぞとばかり金融機関が債権回収した例もあるのです。これではまるで「ハゲタカバンク」と捉えられても仕方ありません。日本の金融機関は、いつから本来の目的を見失い、「ハゲタカ」になったのでしょう。和の心やおもてなしが見直されている中、金融機関にも和の心、輪の精神を忘れないでもらいたいところです。


[2013.5.1]

金融庁、金融機関調整中:被災住宅の抵当権を放棄で集団移転促進
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東日本大震災の津波で住宅を失った被災者の住宅ローンの抵当権を、民間の金融機関が放棄する方向で調整していることが10月12日にわかりました。近く、金融庁と金融機関が「被災地の特例措置」として合意する見通しです。
政府系金融機関の住宅金融支援機構では、すでに抵当権放棄の方針を示していましたが、銀行や信金、JAバンクなどの民間金融機関では不良債権化を恐れ消極的でした。自治体では進まぬ集団高台移転に金融庁へ金融機関の抵当権放棄を要請、調整を進めていました。

自治体が被災住宅を買取り移転先宅地を用意
金融機関では、被災によって住宅の資産価値は低下したものの、抵当権を放棄すればローンの残債回収は困難となりますが、自治体が土地を購入することで購入資金をローンに充てる考えに傾きました。集団での高台移転計画では、自治体が土地を買取り、移転先の宅地を用意。被災者と賃借契約を結び借地料を長期間無料にすることを想定。家屋は被災者が建てることとなります。
復興庁では、被災地3県の集団移転は3万件を超えると見込みんでおり、抵当権放棄によってようやく新しい街づくりが前進します。震災から1年半以上、あまりにも時間がかかり過ぎです。

国の被災住宅買取りシステム:私的整理ガイドラインの存在は?
被災者の二重ローンを減免する「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」は、被災者の迅速な生活再建、自力再生のために新設されました。ガイドラインでは、住宅を失った被災者と金融機関の合意に基づき、残った住宅ローンの全て、または一部減免する内容となっており、調整する弁護士などの費用も昨年度約10億円を計上しています。
金融庁の「東日本大震災以降に約定返済停止等を行っている債務者数及び債権額」によると、住宅ローンをリスケジュール(条件変更)している件数は、今年6月末時点で5,901件。既往ローンを買取る「産業復興相談センター」への相談件数は10月5日現在で1,511件。このうち買取りが決まったのはわずか3%の50件です。

リスケ中の住宅ローンも私的整理ガイドライン適用
五千件を超えるリスケジュールに住宅を失った被災者は、一時的に返済の負担を軽減し、生活再建支援金や義援金により生活再建を目指したことが伺えます。金融庁では震災でリスケジュールした件数を把握し、努力義務を果たした金融機関は債権を抱え込み、復興の進まない自治体が「被災地の特例措置」を要請する構図が見えてきます。
本来は、私的整理ガイドラインを活用し、住宅を失った被災者の住宅ローン負担を軽減するシステムが、被災者に充分伝わっていないようです。二重ローン買取りは、リスケジュール中の住宅ローンにも適用されます。お早めに「産業復興相談センター」へ相談して下さい。
▼二重ローンや事業の復旧・復興の相談:「産業復興相談センター・産業復興機構」


[2012.10.17]

東日本大震災事業者再生支援機構:被災事業者の既存ローンを凍結
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政府は2月23日、震災で被災した事業者などの二重ローンを買取る「東日本大震災事業者再生支援機構」を設立したと発表しました。同機構は、震災や原発事故などによって工場や農業地、医療施設など被害を受け、過大な既存ローンが残る事業者の二重ローン問題を解消を目的とします。
被災した事業者は、再建に向けた新らしいローンと、震災前までの既存のローンが二重となり負担が大きくなるため、同機構が既存ローンを買取り事業者の負担を軽減。さらに事業者へ助言やアドバイス、専門家を派遣し事業の再建を支援します。

支援対象地域:農林水産出荷制限地域にも拡大、11道県227市町村
支援の対象となる事業者は、資本金5億円未満、従業員1,000人未満の小規模事業者や農林水産業、医療・福祉事業者が対象となります。政府は2月23日までに東日本大震災事業者再生支援機構法による指定地域に、原発事故による農林水産物の出荷制限指示地域などの地域を拡大、11道県227市町村を対象としました。

相談など業務は3月5日から開始、3月上旬交付を目指す。
同機構は、実務を担う本店を被災地・仙台市に設置し、情報収集や省庁間の調整を担う本部を東京に設けました。同機構では現在、支援決定の条件や基準を策定中で、相談など業務は3月5日から開始され、3月上旬、被災事業者への交付を目指します。

既存ローン買取り額、5,000億円は政府保証
同機構の主な業務は、金融機関などから既存のローンやリース残高を買取り、最長で15年間保有。一定期間返済を凍結し、被災事業者の負担を軽減させ再建を支援します。既存ローンの買取り価格は、事業再生計画や被災地域の復興、再生支援後の事業者の経営状況の見通し、さらに担保財産の価格の見通しなどを勘案した適正な時価としています。同機構では、市場から資金調達をしますが、その買入れ限度額の5000億円については政府保証となっています。
専門家のアドバイスや助言、派遣につなぎ融資の拡充、対象事業者の拡大など小規模事業者や農林水産業などにとって使い勝手が良さそうな支援策となりそうです。

既存ローン買取に2機構2本立てで支援:偏りはないのか?
同じような業務内容で支援対象を中小企業などに絞った「産業復興機構」は、すでに昨年11月から被災地4県に設置され、約1,000件の相談が持ち込まれています。しかし、民間の金融機関も出資している事から「二重ローン問題解消」に至ったのはわずか2件。国が100%保証する「東日本大震災事業者再生支援機構」へ相談者が戸惑う姿が見えてきます。
被災した事業者、企業を再建させる二本立ての機構は、中小企業基盤整備支援機構など国や自治体、民間の金融機関など各々の役割、立場はあるものの目的は、自力で再建できない事業者、企業の再建です。震災から既に1年が経っています。素早い対応で1件でも多く救済できることを切に願います。


[2012.2.27]

「産業復興相談センター」へ相談1,000件に対し買取りはたったの2件!
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東日本大震災で被災した中小企業などの二重ローン問題を解消する「産業復興機構」は、昨年12月28日、福島産業復興機構が設立され、11月に設立された岩手と茨城、12月27日設立の宮城と被災地での課題解消へ準備が整いました。「産業復興機構」は、県と地域の金融機関、中小企業基盤整備機構などが共同で出資し、買取額は約2,000億円程度とされています。
昨年の11月以降、被災地4県には「産業復興相談センター」が開設され、これまで3ケ月で約延べ1,000件の相談がありましたが債権買取りまで到達したのは、「岩手産業復興機構」の2件にとどまっていることが2月14日判明しました。

使えない「産業復興機構」買取条件・価格合わず利用者から「期待はずれ」
二重ローション解消に中小企業は、買取り価格や条件をめぐり金融機関と交渉しますが、債権者との折り合いがつかないケースが多く見られます。「産業復興機構」は、被災企業の再生を大きく後押しすると打ち出したものの、買取り条件やしくみの使い勝手の悪さから「お役所仕事」とか「期待はずれ」の声も上がり改善が急がれます。
「岩手産業復興機構」は、昨年11月に続き1月30日までに2件目となる商業施設の支援を決めました。同施設は沿岸部にあり、1階部分を津波で浸水被害を受け営業を停止。主要金融機関が新規融資を行い、事業再生の見込みがあることを条件に既存ローンを買取り、返済を凍結。再建後に残債を地域金融機関など第三者へ売却することになります。

小規模事業者向け?「東日本大震災事業者再生支援機構」3月5日業務開始
政府は、幅広い事業者の支援を掲げ「産業復興機構」とは別に新しい「東日本大震災事業者再生支援機構」を今月設立。平野復興相は、3月5日から業務を開始すると発表しています。同支援機構は被災した零細企業や農業・水産業者、医療法人など小規模事業者を対象に既存ローンを買取り、最長15年返済を免除するとしています。
同支援機構の本店は被災地、仙台に置き、事業再生や金融の専門家が多い東京都にも拠点が設けられ約100名体制、買取額は約5,000億円を見込んでいます。支援対象は異なるものの両機構とも業務内容に大きな違いもなく、買取条件・価格など組織間のすみ分けに課題が残ります。
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政府案、民間金融機関出資が利用拡大の足かせ?高まる野党案の「新機構」買取り支援
二重ローン問題は、震災前に既存ローンがあった事業者が、再生のため新たな融資を受けることでローンが二重となる状態です。この問題を解消しなければ地域経済の再生ができないと既存ローンを金融機関などから買取り一定期間凍結するのが2つの機構の役割となります。政府案の「産業復興機構」は残債の猶予が5年で、地域の民間金融機関も出資しているため再生の可能性が高い事業者に限られるなど壁の高い支援策となっています。
一方、野党案の「東日本大震災事業者再生支援機構」は猶予が15年、国の全額出資のため対象が大幅に広がると業務開始前から期待が高まります。いづれも買取条件・価格などは金融機関との交渉となるため事業者の課題解消には容易ではなく一定の障壁も残ります。

[2012.2.16]

二重ローン解消、「岩手産業復興相談センター」相談に200件超え!
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岩手県は10月3日、東日本大震災で被災した中小企業の二重ローン問題解消に「岩手県産業復興相談センター」を設置。7日から相談を受け付けていますが、これまでに中小企業や個人事業主から200件を超える相談が寄せられており、再建への強い意気込みが伝わります。
岩手県経営支援課によると、当初の債権買取りファンドの出資規模は100億円としていますが、買取り規模に応じて500億円まで増額するとあります。同課では「11月下旬を目処に買取り体制を整えたい」とコメントしています。

地元金融機関など「岩手産業復興機構」債権買取ファンドを設立
震災から8ケ月目の11月11日には、中小企業基盤整備機構や岩手県、地元金融機関などが債権を買取るファンド「岩手産業復興機構」が設立されました。同様のファンドは宮城県でも500億円規模で準備が進められています。被災企業は、相談センターで専門家と買取り価格や事業計画を策定後、同機構に申請することになります。
債権の8割を買取る中小企業基盤整備機構は、産業復興相談センターが判断した被災企業から、二重の負担となるうる既存債権を買取ります。その後、企業は金融機関から新たな融資で復興を目指し、5年ほどで再建を果たせば残債を地元金融機関など第三者に売却するしくみとなっています。

再建可能と判断されなかった企業は?
一方で、相談センターで再建可能と判断されなかった企業の救済策は未だ打ち出されていません。今のところ諦めて廃業か、放置がせいぜいでしょう。政府の全額出資で被災企業の債権を買取る「岩手産業復興機構」の実際の買取方法などのは、細かいところが未定で、早期解決にはまだまだ課題が残ります。
自治体独自のファンドや企業、金融機関が設立したファンド、さらにはDDS(デッド・デッド・スワップ)によって債務残高を「最劣後債権化」させるなど具体的な復興決算支援策が待たれます。さらに業界の統合、再編などの地域企業間のマッチングなどのこれからの為に窓口支援を要請したいところです。

宮城県:復興相談センターを11月14日設立!
中小企業庁は11月14日、宮城県の被災企業に向けた二重ローン問題への対応に「宮城県産業復興相談センター」の開所式を行い16日から相談を受け付けると発表しました。同センターでは、岩手県の相談センター同様、窓口での相談や事業計画、買取り価格の確認、今後設置予定の「宮城県産業復興機構」への買取要請などをフォローアップします。岩手県から遅れたものの宮城県でも着実に二重ローン解消へ準備が進みます。

福島:原発事故の影響でセンター開設見通し立たず
一方で、福島県では原発事故による放射能汚染の影響により準備が遅れています。政府による原発の影響を受けた被災企業への対応が打ち出されないことが大きな要因です。福島県経営金融課では、「単純に原発の影響を除いて考えるのは難しいが、産業復興機構設置の計画が見えるよう検討している」としています。
原発の影響が大きくあるものの、特殊な福島県だけは政府主導で方針を早急に決め、岩手、宮城同様、二重ローン問題を早期解消し復興を目指したいところです。

[2011.11.16]

台風、洪水被害:企業救済の前例に期待
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民主党と自民、公明両党実務者は10月18日、東日本大震災で被災した中小企業や農漁業者の二重ローン問題の対策として、国が金融機関から既存ローンを買取り、最長で15年返済を猶予する支援をすることで一致、20日からの臨時国会で成立させるとしています。
被災企業の救済策はこれまで、事業の継続、再建が見込める事業者に対しての救済策は決まっていましたが、このような条件をなくして長期の返済猶予など幅広く救済することは阪神・淡路大震災でもなくはじめてのことです。この法案は東日本大震災に適用されますが、台風や洪水被害など大被害となった場合の前例にもなりそうです。

野党:既存ローン買取額は2兆円?政府は数千億円程度
二重ローン問題の救済策は自民、公明党など4野党が7月27日に参議院復興特別委員会に提出した「株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案」がベースとなります。問題となるのは既存ローンの買取り額で、同法案では2兆円が想定されていますが、政府、民主党案では、財源の確保問題から1,500~2,000億円を見込んでおり大きな開きがあります。
最終的な買取り額は3,000億円程度とみられ、11月中の成立を目指すとしています。8月22日からは個人向け二重ローンの救済策、「個人私的整理ガイドライン」が策定され、相談を受け付けています。
岩手県:11月から既存ローン買取
被災地の岩手県では10月3日、被災事業者の二重ローン問題への対応に、盛岡商工会議所内に「岩手県産業復興相談センター」を設置。同センターでは、中小企業や個人事業主、農林漁業者など幅広い事業者を対象に、二重ローン問題解決への相談や事業計画の確認、買取りファンドとなる「岩手県産業復興機構」への買取り要請などの業務をこなします。
経済産業省と岩手県では、県と県内の金融機関が「岩手県産業復興機構」へ出資することで合意しており、11月に設置が予定されています。同機構では、事業の再建に向け資金調達ができない事業者の既存ローンを買取り、新たな融資を発生させ支援。中小企業基盤整備機構が8割、県と金融機関が2割出資します。

福島県:岩手に続き産業復興機構創設
産業復興機構は福島県でも設立する方針を明らかにしており、今月中に設立準備会が開かれます。県によると支援対象になるのは事業再生が見込めると判断された中小企業や農業組合、医療法人などで、これらの事業者の既存ローンを金融機関から買取り、利子や元本返済を5年程度凍結後、放棄や売却などにより整理します。
震災から7ケ月が過ぎ、二重ローン解決に向け既存ローンの長期猶予や免除など、ようやく具体案が見えてきました。事業者や個人の住宅ローンなど二重ローンの負担となれば、再建へ向けた意欲も出てこないでしょう。あらゆる優遇措置や法案などを検討、議論を重ね、今後も中小企業支援策に期待です。

[2011.10.22]

二重ローン対策!債務減免申請8月22日から受付110826_5.jpg
震災によって住宅を失ない、住宅ローンだけが残った被災者を救済する「二重ローン対策」は、債務を減免する申請受付が8月22日から始まりました。ローンが残る被災者は、「個人版私的整理ガイドライン(指針)」に基づいて、金融機関との仲裁役となる第三者機関「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」にて相談。金融機関に提出する書類や、弁済計画の策定などの支援を受けチェックを受けます。

第三者機関のガイドライン運営委員会設置、相談・計画策定
ガイドライン委員会は同日、東京の本部や青森、岩手、宮城、福島、茨城5支部で業務を開始。委員会に登録した弁護士や公認会計士など500名を超える専門家が被災者を支援。弁護士などへの費用も国が負担となります。震災から5ケ月が経過し、二重ローン問題に頭を抱えていた被災者の生活再建への支援がスタートしました。

将来返済できなくなる「見込みの被災者」も対象
債務減免を希望する被災者は、私的整理の申請から3~4ケ月以内に専門家のアドバイスを受けながら弁済計画を作成し、委員会にてチェックを受けます。その後、ローンが残る金融機関との同意が得られれば、弁済計画に基づいて資産の処分と債務が減免されます。
私的整理では、自己破産などの法的整理とは異なるため、ブラックリストにも登録されず、新たな借入も受けられます。初日の8月22日には、東京本部や県庁所在地にある5支部へ朝から問合せが相次いだようです。
「個人版私的整理ガイドライン(指針)」は政府の方針を受け、全国銀行協会の研究会が作成。震災により返済ができなくなった被災者や、今後、返済ができなくなる見込みの被災者も対象となっています。お早めのご相談をお薦めします。
▼問い合わせ先:個人版私的整理ガイドライン運営委員会 フリーダイヤル(0120)380883

2次補正:二重ローン対策が柱なの??7割が交付金や予備費
政府は、今年度の第2次補正予算で1兆9,988億円を成立させましたが、二重ローン対策としては774億円にとどまっています。第2次補正予算は、福島原発関連の費用負担、被災者支援、二重ローン対策を柱としているものの、7割近い1兆3,455億円が使い道を定めない地方への交付金や復旧・復興予備費となっています。中途半端な予算編成に、二重ローン減免という被災者対策に水を差しかねません。
二重ローン対策は、家を失いローンだけが残った被災者に、これからの希望や意気込みを与えますが、見込み通りの結果とならない場合など混乱も予測されます。明確になっている審査基準の公表、収入のある被災への対応、個別対応には公平性を保つこと。また、問題が出るたび指針を見直して、早く被災者対策に尽くしてもらいたいものです。

不透明なガイドライン/ローン残債は誰が買い取るのか?
金融機関では債務減免を希望する被災者に明確か説明を徹底するため、勉強会や配布用パンフレットを制作してきました。しかし、金融機関の対応にも限界はあり、全て債務軽減では株主から経営責任を問われる懸念も残ります。政府は、金融機関では、金融機関に対し無税償却など優遇措置を示しますが、ローンの残債の買取りは誰の負担になるのか今のままでは不透明です。
個人版私的整理の購入は初で、法令でなく指針のため金融機関への強制力はありません。相談件数が増えるにつれ、様々な課題が浮き彫りになるでしょう。慢性な財源不足からすべてを支援するには限界がありますが、主目的は被災者の生活再建です。今回の被災者救済策を具体化して、大災害など被災時の標準的対応の模範的前例にしたいところです。

[2011.8.26]

達増知事:岩手復興特区提言「被災企業、法人税10年免除、二重ローン解消」
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政府は6月4日、首相官邸で第8回目となる東日本大震災「復興構想会議」を開き、達増岩手県知事から、「岩手復興特区」についての提案を受けました。復興特区は、住宅ローンや設備資金など個人、企業の二重ローン対策や漁業の再生、街づくりなど7分野に分けられ、各々規制緩和や税制優遇、特例措置などが盛り込まれています。
1次産業は、漁船や定置網の整備などの金融支援や、岩手産の木材を活用した住宅建設、木質バイオマスエネルギーなど林業再生支援を要望。地域医療では再構築を図り、医療・福祉施設の復旧補助や、医師不足を補うためにテレビ会議システムを取り入れた遠隔診療の促進が提言されました。被災企業にとって切実な法人税や固定資産税などは10年間免除とする仕組みを求め、公的なファンドの組成で融資残高買取りなどの中小企業支援も含まれました。知事は、特区構想に県や市町村の財政負担の圧迫を懸念、「早く2次補正予算を実現させてもらわないと困る」と訴えています。首相、前首相の間で「言った、言わない」と、あげくのペテン師呼ばわりには、被災者の呆れ顔が目に浮かびます。

高い資金需要業種:小売、サービス、飲食、宿泊で6割
政府系の金融機関の日本政策金融公庫(政策公庫)は6月6日、震災による被害を受けた中小企業や零細企業、農林漁業者への融資実績を発表。融資は震災後、5月25日時点で10,719件で融資額1,051億円となりました。融資先の業種別構成比では、小売業が25%、サービス業が20%、飲食・宿泊業で19%と多い順で、震災による消費低迷や風評被害、電力供給不足と影響を受けやすい産業の裏付けとも見られます。
政策公庫は、第1次補正予算の成立を受け、「復興特別貸付」を創設し、被災企業、農林漁業者向けに金利引き下げなどの措置を拡充。同公庫では、震災直後は運転資金確保のための融資依頼が多かったものの、最近では、事業再生に向けた設備の復旧費に利用する企業が増えているとあります。被災地の信用保証協会の保証承諾数も前年同月を超えるなど、復興需要に地域の活性化が期待されます。政府系の金融機関では他に日本政策投資銀行(政投銀)や商工組合中央金庫(商工中金)がありますが、いづれも被災企業には低金利で融資され、震災後から4月末までに731件、融資額649億円が融資されています。被災企業は復旧を急ぎ、成長産業などへ事業参入するなど復興への資金需要に政府金融支援を有効活用したいですね。セントラル総研でも、もちろんお手伝いいたします。

再生支援協議会:政府保証付き「中小企業再生ファンド」新設も昨年度の利用は8件
政府、与党は6月6日、岩手特区構想で提言のあった二重ローンの対策について、中小企業再生ファンドを被災各県に新設し、中小企業の融資残高を買い取り再建を支援する方針を固めました。ファンドは中小企業の再生を手がける中小企業基盤整備機構と地域の民間金融機関が共同で出資、設立し、政府が同機構の発行する債券に保証を取り付け資金を調達します。同機構では震災前、福島県に中小企業支援のためのファンドをすでに設立しており、宮城、岩手県にも同様の再生ファンドが新設されます。
ファンド活用の対象企業選定には、事業の収益性、将来性などを見極めねばならず、各県に設置されている中小企業再生支援協議会が増員を図りその役割を果たします。同協議会は、商工会議所や連合会、政府系・民間金融機関、自治体などで構成され、関係者間の連携で中小企業の再生を支援。平成22年度(平成22年4月~平成23年3月)の再生実績は、窓口相談企業数1,929件に対して再生計画の策定支援を完了した企業数は364社となっています。このうち策定支援の手法では、中小企業金融円滑化法「リスケジュール(条件変更)」が88%と圧倒的に多く、「ファンドの活用」はわずか2%の8件にとどまりました。

得意技術を生かし成長分野参入に復興ファンド活用も
経営・営業サポートを通じ、世界に通用する技術力、競争力をもつベンチャー企業に育成、支援する東北イノベーションキャピタル(仙台市青葉区本町1-1-1 代表取締役:熊谷 巧氏)は6月3日、環境、エネルギーなど成長分野で技術力のある中小企業に投資し、地域の雇用創出効果を高め、復興に繋げる地域復興ファンドを設立を発表しました。同社では平成16年より東北の官民出資で設立した総額31億8,000万円の「東北インキュベーションファンド」など3つのファンドを運営しており、技術力などで海外と競争力のある企業を創出と実績をもっています。

復興ファンド東北リバイバルファンド(仮称)は二重ローンの解消を目指す
新しく設立する復興ファンド「東北リバイバルファンド(仮)」は、目業額を当初10~20億円とし、東北の金融機関や企業、団体のほか、東京の機関投資家にも出資を呼びかけ来年の夏には40~50億円に増額とありました。国はもたもたしていますが、被災現地では、震災被害にあった企業を支援してゆく体制強化が着々と進んでいます。二重ローン問題を解消、さらには企業に技術力や競争力をつけ、海外新興国などの成長市場で事業拡大など、復興に向けた支援策が見えてきました。設備資金などには政府系金融支援も有効になるでしょう。また、ファンドからの資金調達に関して知識や馴染みがない方も多いと思いますが、しっかりとした計画に基づいて調達すれば、大きな力になります。もし、ファンド活用を希望されるならば、私たちセントラル総研がお手伝いいたします。一方、ファンド側は「広く浅く」という日本的な発想、つまり中途半端な支援ではなく、資金支援を含めてしっかりと支援するファンドとして力を発揮してほしいと要望します。


[2011.6.9]

分譲一戸建て:新設着工戸数16ケ月連続前年同月増
110606_1.jpg国土交通省が5月31日に発表した「平成23年4月分建築着工統計調査報告」によると、新設住宅着工総戸数は前年同月比0.3%増の66,757戸と低い水準ながらも微増となりました。フラット35など金利優遇措置の効果で分譲一戸建てが12.6%増の9,413戸と16ケ月連続して前年同月を上回り、分譲マンションも11.8%増の1万812戸と着工数を押し上げました。
地域別では沖縄が1,687戸と同比145.6%増、石川も873戸と同比123.8%と伸ばす一方、被災地では、宮城県は35.8%減の645戸、岩手県も32.9減の271戸、福島県も29.4%減の433戸と昨年同月の着工戸数を大きく下回りました。国土交通省では、「厳しい雇用や所得環境、さらに震災の影響で低い水準で推移している」とみています。被災地では依然避難所や、仮設住宅を待つ被災者の姿が報道にあります。一番必要な被災地に耐震構造の「強い・早い・安い」エコ住宅の着工が急がれます。

被災地住宅購入に5年間金利0%、据置・返済期間延長
住宅金融支援機構では、復興に向けた第1次補正予算が成立した5月2日、被災者向けに新たな購入に利用できる災害復興住宅融資や、既存住宅ローンの返済方法の変更など優遇措置を発表しています。災害復興住宅融資の金利は、当初5年間は0%とし、6~10年目は申込み時の災害融資金利から0.53%引き下げられます。元金据置期間も3年から最長5年に延長し、申込み期間も現行の罹災日から2年以内を平成27年度末まで延長しています。優良住宅に利用できるフラット35など、既存ローンを利用中の被災者向けにも優遇措置はとられ、返済金の据置期間、返済期間が現行の3年から5年に延長され、金利も引き下げられています。
国土交通省の調査によると、平成22年度の「長期優良住宅」の認定戸数が16万782戸に達したとありました。長期優良住宅は、日本の住宅の寿命が概ね30年とされ、欧米に比べ極端に短いことから耐久性を高く、耐用年数を延ばす構造など基準を設け、平成21年6月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」によって認定されるようになりました。住宅金融支援機構では、同法に合わせフラット35など長期優良住宅向けの住宅ローンや金利の引き下げなどを拡充。住宅購入の負担を軽減し、無理のないマイホーム購入を促しています。

被災者と金融機関2者間の話し合いで二重ローン問題解決へ
震災によって家屋を失った被災者は、住宅ローンだけが取り残され、新たな復興支援住宅の取得すれば、さらに住宅ローンが積み重なり二重ローンとなって大きな負担となります。この被災者の負担軽減に政府・与党は5月31日、住宅ローンを抱える被災者が新たに住宅購入で住宅ローンを組んだ場合、既存の住宅ローン分を放棄した金融機関などに対し、法人税を軽減する方針と報道がありました。個人向けの債権放棄の手続きを策定した「私的整理ガイドライン」を全国銀行協会などに求め、金融機関と個人が話し合いで債権を減免する「私的整理」を円滑にし、被災者の生活再建を後押しするとしています。金融機関にとっては放棄した額の一定割合が法人税の課税対象額から差し引かれば、放棄にかかるコストが減るため免除しやすくなります。政府では金融庁や国税庁との調整を経て正式に決定するとしています。
企業向けの事業再生の現場において「私的整理ガイドライン」は、平成13年9月につくられました。平成11年、経営難に陥った準大手ゼネコン救済のため金融機関が不透明な債権放棄をし、世の批判を浴びたことによる措置でした。企業の場合は、金融機関や取引先など複数の債権がある場合が多く、その全ての同意が必要で1社でも同意が得られなければ成立しません。一方、住宅ローンの場合は、個人と金融機関など2者間での話し合いになることから手続きも円滑に行われると期待がもてます。

罹災証明交付に3ケ月かかる自治体も
被災者は、新たに復興支援住宅の購入に際して、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資による金利優遇支援や返済・据置期間の延長。さらに財団法人都道府県会館では、被災者生活再建支援制度による支援金があり、全壊世帯に100万円と住宅購入世帯に200万円の計300万円の資金援助が受けられます。この支援を受けるために必要になるのが罹災証明で、このような支援・優遇策を得ることや義援金の受け取り、学校移転などにも必要となる書類で自治体で発行されています。朝日新聞が岩手、宮城、福島の3県、47市町村の取材を行った集計では、罹災票の申請された約18万件に対して交付されたのは約7割の13万件だったとありました。申請が最も多い仙台市では約5万3,000件の申請に交付は約1万6,000件と約3割の交付率。福島県白河市では約3,200件のうち交付は1割未満でした。自治体職員は、震災後から家族の捜索よりも住民の要望を聞き入れ、不眠不休で働き続ける報道もあり、全国の自治体からも応援部隊が被災地に派遣されました。しかしながら罹災証明の交付は、自治体によっては3ケ月かかる場合もあるようです。
政府や自治体などによって、二重ローンや新たな住宅ローンの軽減や支援、資金援助が検討・発表され、あとは罹災証明の交付までの時間だけです。内閣不信任案も否決され、政局から政策へ目を向け被災者が何を一番望んでいるか考え、早期罹災証明交付に支援策が欲しいところです。新たな住宅の着工で被災者の「安心・安全・快適」な生活を取り戻し、産業では関連する建材やエネルギー、輸送、内装業などに多くに経済効果を生み出し、被災地の復興、地域活性に繋げたいものです。

●参考記事:住宅エコポイント終了前倒し:太陽光発電、耐震強化/クリーンエネルギーに新ポイント[2011.5.17配信]
●参考記事:住宅金融支援機構:フラット35、申込み2,5倍/ローン減税・金利優遇でマイホーム率増加[2011.2.18配信]

[2011.6.6]


津波の被害で崩壊した家屋の融資残高1兆円超え
110531_1.jpg金融庁は、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸地域の企業や住宅などの融資残高が、概算で約2兆7,800億円となることを明らかにしました。内訳は中小企業向けが1兆4,300億円、大企業向けが1,800億円、住宅ローンは9,400億円で、津波の被害に限定すると1兆1,900億円とあります。調査対象は、3県の沿岸部ほか、福島第1原発の20km圏内にある39の市町村の大手3行と、地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫の融資残高の合計ですが、さらに内陸部や間接被害にあった企業や、住宅などの融資残高に、首都圏など他県の金融機関を利用した融資残高も加われば融資残高はさらに大きく膨らみます。

生活再建に向けて地場産業の復活は必定
地震による大津波で建物が玩具のように流され、残された土台だけを目の前にした事業主や家主のこれからを考えれば、残された融資残高は、国全体で負担を軽減しなければならないことは誰でも思うことでしょう。地震や津波、火山噴火、豪雨、洪水など自然災害は的確な予測は不可能に近く、わかっていても人間ではかなわず、ただ呆然と被害状況を見送るしかないことが多くあります。いつ、自分が被災者になるかもしれません。残された設備や住宅の融資残高は、生活再建、事業復活に向けて軽減する政策が急がれます。

七十七銀行:取引先被災企業1,700社の債権処理費用569億円
震災で遅れていた被災地の地方銀行8行の平成23年3月期の決算が5月26日に出そろい、不良債権処理費用は、被災した取引先企業の貸倒費用を大幅に積みましたため、8行で約965億円と前年から約6倍になったと報道がありました。このうち569億円は七十七銀行で沿岸部の取引先約1,700社が被災したのが要因としており、同行と仙台銀行2行は資本強化のため、金融庁が利用を促す金融機能強化法による公的資金注入の検討を表明しています。
サプライチェーン(供給体制)の混乱から自動車、電機産業などに減産の影響を与えた内陸部の企業は回復のスピードを早め、トヨタも6月の生産を平常時の7割としていましたが9割に前倒しました。しかし、沿岸部では土台だけが姿を見せ、がれきの処理もできず、そのままとなった工場跡地も多くあります。どこからどう手を付けていいのかわからなくなる事業主も多くいるでしょう。
七十七銀行の氏家頭取は5月26日の会見で、「全国経済は(復興需要で)V字回復するかもしれないが、被災地は別物」と、沿岸部の産業の見通しに警戒感を示しています。

投資家出資による融資残高の株式化で事業再生、拡大へ
被災者は生活再建に家を建て直し、企業は事業再開に設備・運転資金を金融機関から新たに融資を申し込みますが、既存の融資残高との二重ローンに政府や自治体などで課題解決に検討を重ねています。有力候補として、官民が出資する再生ファンドが、金融機関から中小企業向けの融資残高を買い取り、整理した上で企業の再生を進めるとあります。復興に向けた再生ファンドは、既存の融資残高を免除とする代わりにその企業の株式を取得し融資残高の株式化を実施するもので、政府では再生ファンドを資金支援と経営再建の担い手として活用する計画とあります。
再生ファンドは、事業再生が可能な企業に投資家から資金を集め出資される基金で、企業の早期復旧、事業再開に向けて設備・運転資金などのほか、資金繰りや事業計画などプロとともに事業再生を目指します。岩手県では、二重ローンの解消に国や自治体、金融機関などが再生ファンドに出資、設立し、企業支援を政府に要請していました。同県では、個人の生活再建も重要であるものの、雇用の場を復活させ、被災者の雇用による生活再建も重要としています。

雇用保険申請11万人超、就労先の早急な提供が課題
被災者の不安は、これから先の不透明な住む場所や資金、働く場、実行時期と、今後明確にいていかなければなりません。厚生労働省によると、東北被災地3県で雇用保険の申請に必要な離職票の交付を受けた人が5月22日までに11万1,573人とありました。完全復興には時間がかかるものの、雇用先さえ明確であれば精神的にも前向きになれるものです。被災企業は再生ファンドの活用で二重ローンの不安を解消し、日本の産業発展の支えとなってもらいたいものです。

個人事業主は債権放棄に特別措置、被災企業は再生ファンド活用で重複ローン状態解消
金融庁が5月26日、再生ファンドの対象にならない被災商店主など個人事業主の二重ローン対策として、過剰債務状態に陥るのを防ぐため、債権放棄に特例措置を設けることを決めたとありました。追加融資を受けやすいように信用力を示す格付けの維持も認め、金融機関へは貸倒損失を無税償却できる基準を新設するとあります。また国土交通省では、個人向け住宅ローンの負担軽減に、新たなガイドラインを設け、融資残高の免除する方向で検討とありました。

政府支援:もうすぐ二重ローン問題に具体策提示/情報の取得を怠らないように!
政府は、二重ローン問題に関して、今月内にも具体策を提示とあります。政府支援によって既存ローンは免除され、被災地に新しい家、新しい工場、設備で家主、事業主は震災前以上に前向きな気持ちとなり、再生への意欲向上を図りたいものです。新たな気分で一新、東北に震災前以上の活況を取り戻し、他の地域に経済的な波及効果をもたらせて景気浮揚に貢献して欲しいものです。

[2011.5.30]


東北3県の地銀8行だけで条件変更依頼件数1万件超え
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東日本大震災による被害で事業所や工場、家屋が全壊となったり、津波によって流されたり復旧が遅れるなか、残されたローンが大きく影響しています。新しく建て直すにも新たなローンを組む必要があり、二重ローンとなるためしばらくは仮設住宅や避難先などで考える被災者もいます。
被害の大きい岩手、宮城、福島の3県の地方銀行でリスケジュール(条件変更)を行っている企業向け融資や住宅ローンが1万件を超えたと報道がありました。リスケジュールを行った企業は約5,000件、住宅ローンなどの個人向けは約5,100件と、東北3県の地方銀行8行分だけでも猶予額は数千億円に上るとみられます。企業や個人ともに再建には新たな融資が必要となり、金融機関では被災者・企業に対して無条件でリスケジュールに応じるものの、残されたローンは事業再建の足かせとなっていて、これからの課題が残ります。

日弁連:被災企業や個人が二重に陥る不安が数多く寄せられる
日本弁護士連合会(日弁連)は4月19日、被災した中小企業や住宅など、被災者・企業が二重ローンに困惑しないよう枝野官房長官に緊急提言をしました。震災後、日弁連や地元弁護士会で行った被災地での法律相談は、工場や倉庫、トラック、住宅、漁船などを失った被災者が、再建へ向け二重ローンへ陥る不安の声が数多くありました。日弁連は、「被災者の負担を免除する一方、残債を放棄する金融機関へ公的資金を注入すべき」と提言しました。さらに、被災者・企業が地域密着を維持できるよう配慮も要望しました。

金融相コメント:民間金融機関に一律債務免除要請は困難
菅首相は5月1日の予算委員会で二重ローンについて「救済措置を検討したい」と述べ、被災者・企業の負担を軽減し、再建への意欲を促す考えを示しました。一方、自見金融相は翌2日、「民間金融機関に一律に債務免除を求めるのは困難だ」と、金融規律から難しいと指摘。確かに一律すべての負担を軽減を求めるには公正的な面からも課題は多く残るものの、再建への救済措置は必要なものです。

枝野官房長官:地域企業・住民への負担軽減策か
枝野官房長官は5月12日、二重ローン救済策について「壁を突破できないか様々な模索をしている。適切、公平に対応できるか検討している」と、課題が難航していることを示しました。翌13日の報道には、金融庁が被災地にある信用金庫と信用組合に、公的資金を受けても返済しなくていい特例をつくるとありました。信金・信組は、金融機関でも銀行とは異なり、協同組合形式の金融機関で、会員や組合員の相互扶助を目的にしています。被災者、被災企業は再建のために新たに資金を借入れれば二重ローンを抱え、従来のローンが返済されない可能性が高くなります。この分の損失を公的資金で穴埋めできるようにするものです。

金融庁:公的資金注入は返済が原則!覆す特例措置盛り込む
本来、公的資金は返済されるのが原則で、金融庁では特例措置として中央組織の信金中央金庫や全国信用協同組合連合会とともに注入するとして、今国会で提出予定の金融機能強化法の改正案に盛り込むとしています。
被災者・企業にとってマイナスからのスタートは再建を志しても現実的な負担は避けられません。事業再生においても復活を果たすために、自宅や家族を失えば再生意欲も失われるものです。二重ローン問題には信金・信組含め、金融機関や実施地域など今後も課題が出てきそうです。

借入れで負担が増えても次世代に伝統受け継ぎ、雇用を守る
東北沿岸を代表する銘菓「元祖いかせんべい」を製造販売する有限会社すがた(岩手県宮古市黒田町 菅田正義社長)が5月11日に工場を再開。4代目の菅田社長は20日から始めたいと報道がありました。同社の工場には1.8mの津波が押し寄せ、機械類に大きな被害がでたものの、顧客からの数多くの励ましに再開を決意。工場設備など今までのローンが4,000万円残りますが、再建のために新たに3,000万円を借入れ、二重ローンを抱えて厳しい営業再開となりました。当面の生産は震災前の半分以下となってしまうものの、130年の歴史を持つ伝統の味と、解雇し、再就職を希望する8名の雇用を守ることができました。伝統と雇用を維持できた事は地域にとって財産です。その財産を守った企業が、地域を活性化するために必要な支援策が政府に求められます。規律正しくがまんする日本人は、危機的な状況の今こそ、必要な支援策など声を上げるべきでしょう。被災者・企業の意見、需要に自治体や政府が対応する事が、地域産業の活性化、復興への早道となります。被災地の地域産業が一つ一つが事業を再開し、新しい街を見に国内外から観光客が集まり、震災前よりも賑わう地域となって欲しいものです。


[2011.5.16]

すぐにでも必要な資金に政府の金融支援:実態は時間ばかりがかかる
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東日本大震災を受け、首都圏で被災した企業が緊急融資のため信用保証協会へ相談するケースが増加しています。相談に訪れる企業は、「工場や倉庫が東北で全壊」といった製造業や、「マンションの壁が割れ人に貸せない」などの不動産業。「店舗が壊れ、自粛する客も減少」といった飲食業などが多くあるようです。4月末までに東京信用保証協会へ相談した企業は1,800件。これに神奈川、埼玉、千葉、横浜、川崎の5つの保証協会を加えると2,200件にのぼります。首都圏信用保証6協会では、相談の急増に午後5時の受付を7時まで延長、土日も開設し対応に追われています。

罹災証明の発行遅れ、手続き複雑さが原因で保証率たった12.5%
同協会のセーフティネット5号など災害関係保証は、限度額を28,000万円に、直接震災の被害を受けた中小企業などに100%保証するもので、主な事業所が被災地外であっても支店や工場、倉庫などが被災地域内にあれば適用の対象となり保証が受けられます。1都3県の6保証協会が4月末までに保証承諾をしたのはわずか274件と12.5%で保証額は47億円にとどまっています。低い承諾率は審査の時間や被災地での罹災(りさい)証明の発行の遅れにあるようです。

生活再建、事業復活に欠かせない罹災証明、発行率はわずか15.5%
信用保証協会の災害関係保証を受けるには、震災による被害に遭ったと言う罹災証明書を被災地の自治体に発行を依頼、保証協会へ提出しなければなりません。罹災証明は、自然災害などで建物などが被害を受け、市町村が損害状況を調査し認定するしくみで、全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4つに分類されています。
仙台市によると、4月29日現在、罹災証明の申請件数は39,572件に上っており、発行できた罹災証明は6,117件と15.5%にとどまります。被災した企業は、後片付けを済ませ、いざ事業の復活を目指し罹災証明を申請するものの、あまりの時間のかかり過ぎに苛立ちも覚えるでしょう。

地方自治体、罹災証明発行職員数に限界、応援の国税局員派遣も焼け石に水
一方、仙台市でも現地調査省略に航空写真での確認などで簡素化し、職員も休日返上で確認に努めています。ただし罹災証明の発行には税務経験のある職員が必要のため発行できる数もが限られているようです。担当職員は、窓口での対応に加え、殺到する問合せの電話の応対に、市議会内でも問題視。全国市長会などへ応援を要請。5月中旬までに全国の自治体や国税局職員など110人が応援に駆けつけます。1日も早い発行が望まれます。

罹災証明発行への地域格差:大船渡市は即日発行も
内閣府は、4月28日までに津波による建物などの流出や、1階天井まで浸水した地域を市町村が画定し「全壊」と認定できるよう決め、自治体の負担を軽減するとしています。同府では、1m以上の流水とがれきの流入が「大規模半壊」、床上浸水を「半壊」、床下浸水を「一部損壊」とし、自治体に通達。しかし航空写真での全壊や沿岸部の津波被害報告地域などは把握できるものの、曖昧な地域では、やはり現地調査が必要となり人手が足りない状況は続きます。街全体が津波被害に遭った岩手県大船渡市などは、4月28日から全壊とみなす約2,500戸について、申請があれば罹災証明を即日発行とあります。今後の発行への地域格差が懸念されます。
罹災証明は、金融支援を受ける以外にも公営住宅への引越など、生活の再建や事業の復活には欠かせません。1日も早い発行が望まれます。メディアには「一つになろう日本」と何回も訴えます。より一層、人手の足りない市町村へ、全国の自治体や税務関係者を融通し合いたいものです。浜松原発停止による国内の電力会社の電気の奪い合いも「ゆづりあい精神」をもって電力を融通し合って欲しいものです。

セーフティネットとは別枠の緊急融資「復興緊急保証」
政府は、復興に向けた第1次補正予算案を踏まえ、災害関係保証とは別枠の復興緊急保証の相談を5月16日から受け付けます。地震や津波によって直接被害を受けた企業に加え、間接的、原発事故によって被害を受けた企業。さらに被災地域の企業との取引関係で被害を受けた企業が対象も対象としました。限度額は28,000万円でセーフティネットとは別枠のため、最大で56,000万円の保証が受けられます。東北太平洋沿岸部の甚大な被害を受けた企業など、国が100%保証してくれる保証協会を活用し、復旧、復興に向けて動き出して欲しいものです。

民主党:二重ローン問題に専門チーム
新たな借入は、建物や機械など震災前までの負担に、加わり二重ローン問題が取り上げられています。民主党復興ビジョンチームは5月9日、「街づくりのための土地利用制限」、「医療介護など高齢者問題」、「エネルギー政策の信頼回復」という3つの復興チームに、「二重ローン問題」を新設することを決定しました。津波などで工場や住宅、漁船などが流されてしまっても負担が残れば「一からやり直す」わけにはいかず、復活意欲の抑制にも繋がりかねません。第2次、3次補正予算案に向けて身近な問題にチームが新設された知らせだけでもうれしいものです。政府支援の金融政策は、被災者、被災企業を救うことが目的です。政府や自治体、信用保証協会、金融機関などが円滑に行わなければなりません。「支援策は出した」、「書類を発行した」、「資金を貸し出した」と各々の業務をこなすのでなく、結果、その企業がどう復活したかを見届けて欲しいものです。円滑な流れで企業を復活させ東北の活況を取り戻したいものです。

[2011.5.12]
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がれきの撤去はいつかは終わる。住める土地になるかどうか
3月11日の東日本大震災はがれきの撤去から始まり、寸断されたインフラの回復段階を経て、通常に戻るスケジュールを踏んでいます。被災地に住民が戻っても仕事が無ければその土地には住み続けられません。被災地の産業復興が急がれますがこれからの復興スケジュールは現地企業、被災地殖産との兼ね合いで制度上の問題点にあたります。

流された家屋の住宅ローンをどうするか!二重債務問題

住宅を建ててローンを設定しようとしても、既に流された家屋の残債をどうするか。定期的な収入の無い状態で住宅ローンが可能か?など、工場などを有する事業所では設備投資と運転資金の返済途中の企業が被災したら同じものを再度建てられるかなど二重債務の問題が残ります。今回のケースでは流失した土地の担保価値をどのように見るかなど、担保、融資、設備、信用情報、返済原資の確保など金融システム上の障害に当たります。

二重債務問題の解決には行政上の判断が不可欠
これの解決には行政上の判断が不可欠で、これを機会に債権放棄といった思い切った政策も必要でしょう。反対に旧債務の期限の利益を喪失させて元金確定してから、金融機関から債権回収会社(サービサー)に譲渡して①年度更新の手形貸し付けに切り替えて低利にして、自治体単位での利子補給をする。②サービサーに譲渡後3年間は元金返済猶予するなど、特別な措置が必要だとも考えられます。

政府主導復興は現状復帰/今後の地域グランドデザインは自治体に
要は産業復興が命題で地域の雇用確保が大原則にあります。金融債権の回収はある程度の復興した後、正常な経営に戻ってからの課題なのです。私たちが今のまま何らの努力も無いままに単なる復興を政府任せですることは、将来の災害を未然に回避できる可能性を否定してしまいます。ここで太平洋沿岸部で創業する工場や事業所の安全確保をしつつ、沿岸部の有利な地の利を生かして重量物の運搬や搬入を容易にすることが第1と考えるものです。

被災地復興は地域の将来像をデザインするチャンスに
これからの被災地復興は政府や自治体による地域のデザインが不可欠です。阪神淡路大震災では復興後の産業基盤を早い段階からIT時代を見据えて、IT関連企業の誘致を積極的に行った実績があります。このように太平洋沿岸部の地の利を生かした産業は今までどおりでいいのかどうか、工業集積をどのように考えるかなど早い段階で調整が必要でしょう。菅首相の提案で復興支援会議なるものが創設されていますが、やたらと会議を作る会議では斬新な改革案は望めません。農業集積、漁業の復興、食料基地がせいぜいでしょう。

世界的企業の隠れたパーツ供給基地だった東北地区
東北地区では世界企業のパーツ供給地であったことが今回の震災でわかりました。メーカーも2次下請け、3次下請けまでは把握していましたが、4次、5次下請けは把握していなかったようです。海外大手メーカーへのパーツ供給集積がこれからの東北地区の産業集積化の基本的な課題になるでしょう。山間部や傾斜地の多い東北三陸海岸に大規模な工業集積は現実的ではないかもしません。農閑期漁業閑散期に手っ取り早い収入を得るための家内手工業が世界的企業のパーツ供給地域だったとは経済統計でも出てこない隠れた産業集積でしょう。

仙台銀行・七十七銀行公的資金申請へ「国と一体となって地域復興」

宮城県の七十七銀行(仙台市青葉区中央三丁目3番20号、取締役頭取:氏家照彦氏)は4月18日、東日本大震災の被災企業に復興資金を十分に供給するため、金融機能強化法に基づく公的資金の資本注入の検討に入ったと発表しました。公的資金注入の検討入りを表明したのは仙台銀行に続き2行目。氏家頭取は記者会見で「地域に十分な資金供給を図ることが地域金融機関の果たすべき役割だ。国と一体となって地域の復興を果たしたい」と述べています。

被災による二重債務問題解決が先決、更なる特別措置支援を
東北最大の七十七銀行による公的資金注入の動きを受けて、被災地域にあるほかの銀行もこれに続くことが予想されます。ただし、住宅ローンや債務のある被災者や被災企業は災害復旧のための融資を受けることにより二重債務を抱えることも懸念されます。金融による救済には限界があることを念頭に置き、更なる国家的な支援策が求められています。

農水省TPP見据えた東北再生計画:漁港整備、仙台空港、石巻港から農産物を新興国へ
農林水産省では、東北沿岸部の漁業再生に向け、大型11漁港を重点に整備し、水産加工業や保管業、運送業など関連産業を含めた国際競争力のある漁業拠点の検討に入りました。原発事故による水質汚染問題など残るものの、復興に向けた計画は進んでいます。東北近海産の大量の水産加工物が、仙台空港や石巻港からアジアなど新興国へ輸出拡大。被災地域を発展させ、新しい東北の水産、農業、産業の発展に繋げたいものです。
 
縦割り弊害を解決
このように金融や制度の問題、農水省の戦略や、経産省も把握していなかった産業集積など東北の底深さを知らされる災害でした。復興に関する諮問会議が出来るようですが縦割りの弊害はぬぐえません。これを機会に東北地区全体のグランドデザインを話し合って来るTTPや産業集積を計画的に実施していきたいものです。難しい問題山積ですがリーダーシップ発揮のタイミングです。日本書紀に出て来る伊邪那岐、伊邪那美の「国つくり」の意識で望んで欲しいものです。

 [2011.4.21]
 
事業再生

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
著書の紹介はこちらから。

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