「中小企業活性化パッケージ」...リーマンショック後の悪夢の再現を回避せよ
倒産件数は減っているが、負債額がほとんど減らない......
4月8日に帝国データバンクが公表した調査結果によると、2021年度の倒産件数は5916件(前年度の7314件から19.1%減)と、1965年度の5593件に次ぐ低い水準となりました。
負債総額(1兆1828億7100万円)も4年連続で前年度を下回りました。ただし前年度比わずか2.8%減ですから、倒産件数の19.1%減と比べると、ほとんど減っていないと言えるでしょう。事実、負債額が50億円以上の大型倒産は前年度の23件から34件に増えています。
「モラトリアム法倒産(返済猶予後倒産)」が増えるのは数年経過してから
重大な経済危機でダメージを受けた多くの企業が、強力な金融支援のおかげで資金不足をなんとか回避しながらも、借金を減らして経営を立て直すところまでには至っていない――この状況は、2008年9月のいわゆるリーマンショック後の日本経済を思わせます。
当時、混乱する民主党政権内では対策を打ち出すことができず、野党の公明党と国民新党が協力して緊急の資金繰り支援を立案しました。法案の骨子段階では私自身もかかわり、中小企業の実情説明などを行ないました。
そして翌2009年、緊急の資金繰り支援として施行されたのが「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」です。資金繰りに苦しむ中小企業に、金融機関はできるかぎり返済猶予(リスケジュール)などに応じるよう明記されました。
同法が終了したのは2013年。企業は返済猶予で時間を稼ぎつつ経営を立て直すはずでした。けれども、施行後8年が経過した2017年、返済猶予を受けながらも倒産した企業は480社、負債総額は約3600億円に上ったのです。(帝国データバンクの追跡調査より)
このときリスケジュールを申請した会社のほとんどが事業規模が小さく、経営の合理化や抜本的な再建計画の策定が難しい中小企業でした。リスケジュールを繰り返しても問題の先送りにしかなりません。この状態が長期化すると、経営者の高齢化や後継者不在などの理由で、事業継続を断念しなければならなくなってしまいます。
「中小企業活性化パッケージ」は資金繰りとリスケ後の自立の2本立て
今年3月、経済産業省・金融庁・財務省が連携して策定した「中小企業活性化パッケージ」はの骨子は、「コロナ資金繰り支援の継続」と「収益力改善・事業再生・再チャレンジの促進」の2本立てです。
11の関連施策のうち8つが「中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジの総合的支援」にあてられていることからも、資金繰りばかり支援しても中小企業を救うことにはならないという過去の教訓を踏まえたものだと思われます。次回はこれらの施策について要点を押さえながら見ていきます。
●関連記事:「倒産増加説はホントか?モラトリアム法(中小企業金融円滑化法)間もなく終了!」[2010.10.13配信]
●関連記事:「3省庁が連携して中小企業を支援、「中小企業活性化パッケージ」に期待」[2022.3.16配信]
[2022.4.20]
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