今年もまだまだ続く人手不足
人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)
昨年2023年5月8日以降、新型コロナウイルス感染症の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」になりました。それ以降徐々に人流が活発化し経済が回り始めましたが、それと同時に「人手不足」という言葉を耳にする機会が多くなりました。
人手不足による企業経営への悪影響が顕著になりはじめ、さらに物価上昇の影響も深刻になっています。こうしたなか、2024年2月26日に帝国データバンクから「人手不足に対する企業の動向調査(2024年1月)」が発表されましたので内容をみてみましょう。
人手不足割合は正社員で52.6%、非正社員も約3割
<帝国データバンク>
2024年1月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業は52.6%で、前年同月比で0.9ポイント上昇し高水準となりました。
また、非正社員では29.9%となり、こちらは前年同月から1.1ポイント減少しましたが、引き続き約3割の水準で推移しています。
グラフの推移からも分かるように、過去最高値を更新するのも時間の問題といえるかもしれません。
正社員の場合:ITエンジニア不足の情報サービス、77.0%で過去最高を更新
正社員の人手不足割合を業種別にみると、主にIT企業を指す「情報サービス」が77.0%でトップとなりました。15カ月連続で7割以上と高水準が続いているなか、過去最高を更新する結果となりました。
その背景には旺盛なシステム関連需要があるものと思われます。「システム開発の案件が増えてきているが、人材不足で対応できず機会損失している。」など、人手不足がボトルネックとなっている現状が多くみられます。中には人材不足を補うためにシステムを導入したいが、そのシステムが分かる人材がいない、といった皮肉ともいえる状況も見受けられます。
また2位、3位には「建設」(69.2%)や活況なインバウンド需要が目立つ「旅館・ホテル」(68.6%)などが続き、10業種中8業種が6割台となりました。
【正社員・非正社員別の業種別人手不足割合】(帝国データバンク)
<正社員>上位10業種 <非正社員>上位10業種
非正社員の場合:飲食店が72.2%でトップ、人材派遣業も6割超と高水準
非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が72.2%となり、前年同月から8.2ポイント減少と人手不足の緩和がみられたものの、引き続きトップとなりました。次いで「人材派遣・紹介」(62.0%)では人手不足の高まりによる需要増によって、派遣人材の不足が目立っています。以下、正社員でも上位となった「旅館・ホテル」(59.6%)など、小売・サービス業を中心に個人向け業種が上位に並びました。
2024年問題は既に顕在化。バス路線、全国8600キロ余が廃止!
2023年8月までの過去1年5カ月間に全国で合わせて8600キロ余りのバス路線が廃止されたと、昨年2023年11月24日にNHKが報じました。その原因のトップにあげられていたのはコロナ禍による利用者の減少でしたが、2番目に多いのは運転士不足でした。
さらに運転士不足という直接的な理由もさることながら、「人手不足で現状の形態では事業を維持できなくなるとか、将来に対する不安感から大量の退職者が発生している」という状況も生まれています。生活路線の運行に支障をきたす現象はすでに始まっており、生活に必要な「足」が無くなり、地域コミュニティーが崩れつつあると言っても過言ではありません。
賃上げが無理なら・・・
人材の確保・定着に欠かせない「賃上げ」ですが、昨年来多くの企業で賃上げが実施されています。しかしその中心は上場企業や大手企業で、中小、零細企業では賃上げをしたくてもできない状況が続いています。2024年も引き続きこうした傾向は続くでしょう。
人材不足というピンチに直面して「お金がないからできない」とあきらめるのか、それとも「お金以外のところで何かできないか」と考えていくのか。当然ながら両者には大きな差が生じるのではないでしょうか。
きらりと光る技術やユニークな商品の訴求、社長はじめ幹部と社員間の風通しの良さ、また社員同士仲が良いといった社風、やりがいの場を作り出すなど、経営者のみなさん自身ではなかなか気づきづらいけれど魅力的なものがきっとあるように思います。これを機に見つめなおしてみるのも良いかも知れません。
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