モラトリアム法終了目前の資金調達!金融庁、動産担保を不動産以上の評価に明確化
地域金融機関の中小融資の実態:担保の9割以上が不動産、個人保証
金融庁は2月5日、企業などが保有する在庫や設備などの動産や売掛金を担保とする融資を増やすため、不動産と同等以上の資産価値と評価できるよう基準を見直すことを発表。金融検査マニュアルに動産は不動産同様70%と評価し、回収しやすい売掛金は80%と今年3月中に明記する方針を示しました。
金融検査マニュアルは、金融庁が金融機関を検査する際に用いられ各金融機関では、規模、特性に応じて内部規定を策定し業務の健全性と適切性の確保を図っています。金融庁によると中小企業を主な融資先とする地域金融機関では、担保の9割以上が不動産や個人保証で占められています。
進まぬ動産担保融資:融資全体の1%にも満たず
金融庁では、今年3月のモラトリアム法(中小金融円滑化法)の期限終了を迎え、中小企業の資金繰り支援に金融検査マニュアルを改訂。一般担保として認める動産や売掛金を担保として受入れない金融機関へは改善を求めるとしています。同庁によると平成19年以降、金融機関へ不動産以外の担保の活用を促すものの、平成23年度は動産や売掛金を担保とした融資額は9,484億円と融資全体の1%にも満たず、2年連続前年を下回っています。
麻生金融相は2月5日の閣議後の会見で、「動産担保融資のさらなる活用を推進したい」とコメント。不動産以外の担保で中小企業の資金調達を促し、資金繰りを下支えする方針です。
東北被災地:地価変動でABLは増加傾向
ABL(Asset Based Lending:動産担保融資)は、中小企業が保有する設備や在庫であれば、農家などが飼育する肉牛や乳牛を担保に融資を実行した例もあります。昨年は食品大手のカゴメが原材料のトマトを担保に10億円を調達した事例もありました。
東日本大震災の被災地では、地価の評価が大きく動いたことから東北の金融機関でABLが増加傾向にあります。不動産担保に頼らず、建設機械や水産物まで担保物件は多彩。金融機関では、資産価値をどう見極めるかが課題となり、目利き養成などの動きも見られます。売上や在庫など不動産評価に頼らず、取引先の事業の実態を把握する金融機関本来の業務が試されます。
動産の価値評価の養成:動産評価アドバイザー創設
平成19年よりABLを手がける七十七銀行はこれまで47件、総額58億円を融資。震災後には14件、総額34億円に上るABLを実行してきました。復興を進めるために被災地解体業の油圧ショベルなどを担保に融資をするなど動産の価値評価を判断しています。
NPO法人日本動産鑑定では昨年、動産評価アドバイザーを創設。東北の金融関連17機関の18人が取得し全国の2割超えを占めています。このうち七十七銀行では全国最多の8人が取得。専門家を育て上げ、積極的なABLを促します。
不動産と同様以上に担保価値を明確とする金融庁の検査マニュアル改訂により、中小企業の資金調達にABLが再び注目されます。
●関連記事:「トマト担保に10億円の融資!ABL活用で海外事業の成長狙うカゴメ/長期的な「トマトブーム」で株価も高値更新」[2012.9.6配信]
●関連記事:「技術力・知的財産でベンチャー融資:日銀がABL(動産・債権担保融資)枠、メガバンク融資枠創設」[2011.8.8配信]
[2013.2.13]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: モラトリアム法終了目前の資金調達!金融庁、動産担保を不動産以上の評価に明確化
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/1189
コメントする