技術力・知的財産でベンチャー融資:日銀がABL(動産・債権担保融資)枠、メガバンク融資枠創設
技術開発型企業:研究開発で収益までの時間に問題点
東日本を中心に地震が多く発生していますが、日本の技術の結晶である新幹線は事故もなく無事運行を続けています。新幹線は機械や金属工学など数多くの技術が研究開発され包括的なプロジェクトとなって安全が守られています。地震が発生すれば地震波を感知し自動でブレーキがかかる技術もその一つです。他国の技術を単純にコピーした中国の高速鉄道とは比較対象にもなりません。
中小企業やベンチャーにおいても高い技術を持ちながら資金が得られず、宝の持ち腐れとなっている話をよく聞きます。研究開発に時間を要し、収益になるまでに時間がかかるため、この間の開発費や経費を捻出することができないのです。投資ファンドなどから調達するケースも見られますが、上場を目指す企業向けなど規模が大きすぎ、利用しずらいのが現状です。
日銀:ABL枠5,000億円を創設、
日銀は6月の金融政策決定会合で、経済成長を促すために出資や不動産など従来の担保に依存をしないABL(Asset Based Lending:動産・債権担保融資)枠を創設しました。総額は5,000億円で低利貸出し枠は年0.1%の低金利で最長4年、金融機関などへ供給されます。
ABLの市場規模:技術日本は米国の1/100
日銀は、金融機関が企業への融資の際、過度に担保を不動産に依存し、技術や知的財産など無形の優良な資産を保有する中小企業やベンチャー企業へ資金が行き渡っていないとみていました。日銀・西村副総裁は、昨年12月の講演で、金融機関に目利きの行員が減少していることを指摘し、対応策としてABLの普及を推奨していました。米国のABLの市場規模は44兆円に対し、日本の市場は平成20年度で4,400億円とわずか1%に過ぎません。担保評価機関には、日本の先端技術の凄さを理解し正当に評価、資金を供給してもらいたいものです。
担保動産:技術、知的財産より価値の分かる在庫がメインか
三菱東京UFJや三井住友、みずほ3メガバンクが日銀の成長支援貸出し枠を活用し、企業の在庫や動産を担保にした低利融資に動き出しました。三菱東京UFJは、担保となる動産評価にゴードン・ブラザース・ジャパン(東京都千代田区内神田2-5-6 代表取締役社長:フランク・モートン氏)と提携し、ABLの運用金利を0.4%ほど優遇。さらに融資の際の下限3億円を撤廃しました。みずほは、企業が負担する担保評価の手数料を引き下げ、三井住友では、ABLとは別にベンチャー企業向けの投資資金も創設するなど、不動産をもたない中小企業やベンチャー企業への資金供給拡大が期待されます。
ABLは、これまで松坂牛などを担保に地銀の取組みが見られましたが、話題ばかりが先行して広がりを見せません。グローバル化を見据えた技術や知的財産などを担保に、ABLがものづくり日本の下支えとなってもらいたいものです。
日銀:日本企業の技術、知的財産を保証
ABLは、昨年6月に閣議決定した新成長戦略でも動産譲渡登記の改善など法務省の検討課題に挙げられ、技術力ある中小企業の成長支援を促しています。経済産業省による普及団体・ABL協会(東京都中央区銀座5−15−8 理事長:池田 眞朗氏)の中村運営委員長は、「日銀が旗を振ることで金融機関の取組みが本格化し、地域の特産品など担保となる例が増えれば地域活性化にも寄与する」と期待しています。
企業の在庫も動産の一つですが、これから海外で世界標準となるような先端技術や知的財産をもつ中小企業、ベンチャー企業を日銀が支援対象としたことで、金融機関や企業へも認知度が高まり、新たな取引先獲得に繋がる可能性も高まります。日銀保証のABLで資金調達、新たな先端技術や知的財産で、ものづくり文化を支えなければ日本に将来はありません。
[2011.8.8]
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