トヨタとマイクロソフトを比べてみると
令和6年(2024)1月の米株式市場で、マイクロソフトの株価が過去最高値を更新し、時価総額※1が一時初めて3兆ドルを突破した事がロイターなどで報じられ大きなニュースになりました。米新興企業オープンAIに出資するなど人工知能(AI)分野における競争優位性が評価されたものです。同社株はその後も値上がりしており、現在は3兆23億ドル(2月16日)となっています。
時価総額3兆ドルとは、現在の為替レート(1ドル=150円)で換算すると約450兆円となり、これは日本で時価総額ナンバーワンのトヨタ(約53兆円)のおよそ8倍強です。
(ちなみに2月15日に発表された2023年の日本のGDPは4.2兆ドルです。)
※1.時価総額とは、発行済み株式数 × 株価で表され、企業価値をはかる代表的な指標
トヨタとマイクロソフトの決算比較
ここでトヨタとマイクロソフトの決算内容を比較してみます。
トヨタは先日2月16日に、2024年3月期の第三四半期実積と通期見通しを発表したのでその通期見通しの数字を、またマイクロソフトは既に発表済みの2023年6月末の決算数字を用いて比較します。
両者の数字を表にまとめると下記のようになります。
◆トヨタとマイクロソフトの売上高・純利益の比較表
|
トヨタ (2024年3月通期予想) |
マイクロソフト (2023年6月末) |
売上高 |
43.5兆円 |
31.8兆円(2,119億ドル) |
純利益 |
4.5兆円 |
11兆円(726億ドル) |
※為替レートは1㌦=150円で換算
売上高はトヨタの方が多いですが、純利益ではマイクロソフトの方がトヨタの2.4倍と多い結果となっています。製造業とITといった業種の違いがありますが、あまりにも対照的な差です。
トヨタとマイクロソフトの時価総額の比較
さらに株式市場での企業価値を表す時価総額で比較してみると下記のようになり、その差は顕著に見て取れます。
◆トヨタとマイクロソフトの時価総額の比較
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トヨタ |
マイクロソフト |
時価総額 |
56兆円 |
450兆円 |
※両者ともに2024年2月16日 終値ベース
※マイクロソフトは3兆23億ドル×150円として円換算
マイクロソフトの時価総額はトヨタの8倍にもなり、純利益の比較以上に時価総額では相当な開きがあることが分かります。マイクロソフトはどうしてそのような巨額な企業評価となるのでしょうか。それは米国の株式市場の巨大さも一因となっていると言えるでしょう。
日本と米国の株式市場の規模
米国の株式市場には世界中の資金が集まっているといっていいほどですが、日本と米国の株式市場の規模を比べてみます。日本は東京証券取引所の時価総額を、また米国にはNY証券取引所とナスダックという2つの大きな株式市場がありますので、米国は両取引所を合わせて比較すると下記の表のようになります。
◆東京証券取引所とNY証券取引所+ナスダックの時価総額の比較
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東京証券取引所 |
NY証券取引所+ナスダック |
時価総額 |
931兆円 |
7,650兆円(51兆ドル) |
※東京証券取引所は2024年1月末現在
※NY証券取引所+ナスダックは2024年2月2日現在に1㌦=150円にて円換算
日米両国の株式市場の時価総額を比べてみると、米国は実に日本の8.2倍もの規模であることが分かります。こうして比較してみると、「資本」のパワー、ダイナミズムの差に圧倒されます。まさに大人と子供ほどの差と言っても過言ではありません。
また、NY証券取引所とナスダックの時価総額の合計は、世界全体の48.1%(2月2日時点)を占め、2003年以来の水準にまで拡大しています。
世界の資金の動きからみる成長分野
米国株式市場の活況の原因は、人工知能(AI)開発競争が世界各国で激化する中、米オープンAIが生成AI「Chat(チャット)GPT」を開発するなど米国企業がリードしているのも背景です。また米半導体大手エヌビディアは、生成AIを動かすのに必要な半導体チップでほぼ1強となり、世界時価総額ランキングで4位となりました。(2024年2月16日現在)
このように「株式の時価総額」という視点で世界の産業を見渡してみると、今後の成長分野が見えてきます。日頃は資金繰りや売上確保に奔走されている中小企業の経営者の方も、これからの成長分野や自社の企業価値について考えてみてはいかがでしょう。思えば20年前はFAXと電話、外出先ではポケットベルから、SNSやスマホが当たり前の社会です。人工知能(AI)生成AI「Chat(チャット)GPT」などは、使いこなそうと努力した企業だけ生き残れるのかもしれません。
企業価値の向上
企業価値を量る指標の一つに時価総額があります。時価総額とは前述の通り、「発行済み株式数×株価」で表されますので、常に「株価」が分かる上場企業の場合によく使われます。
一方未上場企業の場合、「株価」が簡単には分かりませんので、企業価値を量る方法はいくつかあります。その中の一つに「インカムアプローチ」という方法があります。
インカムアプローチとは、
<期待される利益(収益-費用)またはキャッシュフロー(収入-支出)に基づいて企業価値を計算する方法>
です。
簡単にいうと要するに損益計算書やキャッシュフローの黒字度合いによって企業を評価しようとする方法です。
自社の企業価値の向上のためにも日頃から損益計算書やキャッシュフローを意識した経営をすることも重要です。
次回は、日本や世界のTOP企業の変遷について分析してみましょう。
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