増加するゾンビ企業 ~2022年は25万1000社に~
先日(令和6年1月19日)帝国データバンクからゾンビ企業に関する最新の統計データが発表されました<※1>。 同社が保有する企業財務データベース(2023年11月時点)において、「3 年連続で ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)<※2>が判明、かつ設立10年以上」の企業は10万1478社。このうち、「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」の企業は1万7387社を数え、この2つの数値をもとにゾンビ企業率を算出すると17.1%にのぼることが判明しました。
また同社の登録企業数約147万社をもとにゾンビ企業率17.1%を掛け合わせると、2022年度のゾンビ企業数は25万1000社にのぼると推計されます。これは2011年に次ぐ2番目の多さとなりました。
ゾンビ企業とは
日本国内では一般的に、金融機関の支援がないと会社の維持が不可能な企業のことをゾンビ企業と言っています。但し国際的な基準もあって、国際決済銀行(BIS)<※3>では、「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」に該当する企業をゾンビ企業と定義しています。
今回の「ゼロゼロ融資」は、ゾンビ企業をそのまま生きながらえさせただけでなく、新たなゾンビ企業を生み出したのではないかという指摘もあるほどです。ICRとはなかなか聞きなれない言葉ですが、損益計算書で考えると分かりやすいでしょう。
一般的な損益計算書は下記のようになっています。
ICRは下記のように表されます。
この数値が1以下ということは、利息等の支払いを営業利益と受取利息・受取配当金では払いきれない、ということを意味します。
2022年度のゾンビ企業率17.1%は過去10年間で最も高く、東日本大震災後の2012年度17.0%と同水準です。この結果、日本企業全体の約6社に1社で企業の"ゾンビ企業化"が進んでいるとの見方もできます。
さらに2023年度のゾンビ企業数は、前年を上回り2011年度の27.1万社を上回ると予想されています。
<※1>「ゾンビ企業」の現状分析(2023年11月末時点の最新動向
<※2>. BIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)は、1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織で、スイスのバーゼルに本部があります。BISには、2022年(令和4年)6月末時点で、わが国を含め63か国・地域の中央銀行が加盟しています。日本銀行は、1994年(平成6年)9月以降、理事会のメンバーとなっています。
<※3> ICR(インタレスト・カバレッジ・レシオ)とは、【営業利益・受取利息・受取配当金の合計】を【支払利息・手形割引料の合計】で割った数値のことで、インタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回るというのは、本業での収益より利息等の支払いが多いことを意味します。つまり、借入(負債) が重くのしかかっていて事業の継続が難しい状態にある企業のことです。
業種別で「小売」、地域別で「東北」、従業員数別で「5人以下」がゾンビ企業
2022年度のゾンビ企業率を業種別にみると、「小売」が27.7%と最も高く、次いで、「運輸・通信」が23.4%、「製造」が17.8%となりました。2021年度に比べると、全業種でゾンビ企業率が高まっており、これら3業種は全体平均の17.1%を上回りました。
従業員数別では、「5人以下」が25.1%で最も高く、「6~20人以下」が18.7%で続きました。他方、「1000人超」は2.8%と最も低く、総じて従業員数が少なくなるにつれて、ゾンビ企業率が高まる傾向にあるといえます。
地域別では、「東北」(21.3%)と「中国」(20.2%)がそれぞれ2割を超える。 地域別では、「東北」(21.3%)と「中国」(20.2%)がそれぞれ2割を超えました。なかでも「東北」は、東日本大震災後の各種金融支援策の影響もあり、震災から10年経った今もなお借り入れ負担が重荷になっています。他方、「関東」(14.8%)が最も低く、とりわけ「東京」は12.9%と都道府県別で最も低い水準となりました。 政府・金融機関の支援姿勢の変化 政府は昨年11月、金融機関による事業者支援の軸足を「コロナ禍の資金繰り支援」から「経営改善・事業再生支援」に移す姿勢を鮮明にしました。金融機関の取り組みを推進すべく、金融庁は今春に金融機関向けの監督指針を改訂する方針です。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務に苦しむゾンビ企業への金融機関の対応も、今後はこれまでの安易なリスケジュールによる返済猶予や、借り換えを繰り返すことが事実上難しくなる時代がすぐそこまで来ています。 ゾンビ企業に対する日銀の利上げの影響 日銀の金融政策は、目先は現状維持との見通しですが、エコノミストの約6割は4月会合でのマイナス金利解除を予想しています。金利の上昇は、企業にとっては借入金の利払い負担が増すことを意味します。いざ利上げとなり慌てるよりも、この機会にもう一度現在の借入条件などを確認し、できれば金利変動による金融コストの影響の有無について事前に把握しておくことが望ましいです。 インフレ、円安、人手不足 インフレによる燃料高をはじめ円安の影響による原材料高や人手不足によって人件費高などさまざまなコスト増の対応に苦慮している中小企業の経営者の皆さんにとっては、今よりもさらに資金繰りを苦しめることになります。計画的な資金繰りと各種資金調達の手段が必要となってきます。今までの金融常識や成功経験から「いつかいつか」と思っている経営者、管理者の皆さん、売上よりも利益確保経営に軸足を置きましょう。 ●関連記事: 2022.12.01 「ゼロゼロ融資」の借り換え保証制度が新設、令和の徳政令なるか? 2022.12.30 2021年度の「ゾンビ企業」率が急上昇、コロナ関連支援が影響か |
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