「ゼロゼロ融資」の借り換え保証制度が新設、令和の徳政令なるか?
多くの企業がコロナ関連融資で延命できた
9月末、実質無利子・無担保融資(いわゆる「ゼロゼロ融資」)の政府系金融機関の新規受付が終了しました。民間金融機関の受付は2021年3月末、すでに終了しています。2020年3月に始まったゼロゼロ融資の返済は、2023年夏頃からピークを迎えます。
応急処置的な対策とはいえ、ゼロゼロ融資を含む大規模な資金繰り支援は、落ち込んだ売上げをなかなか回復させることができない中小企業を支えるカンフル剤として、一定の効果をあげたと言えるでしょう。
帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルス感染拡大により緊急事態宣言が行われた、まさにその時期(2020年上半期)から、企業の倒産件数は、それまでの上昇傾向が一転して減少に転じました。2021年上半期の倒産件数は3,000件を下回り、歴史的な低水準となりました。
来年はゼロゼロ融資の返済が本格化、倒産が急増する可能性大
そもそも、コロナ前から多くの中小企業が過剰債務の問題を抱えていました。もとより厳しい財務状況だった企業がゼロゼロ融資等で延命できたとしても、売上げが回復しないかぎり、返済が始まった途端に息切れするのは目に見えています。
すでにコロナ関連の融資を受けた企業が倒産したというケース(コロナ融資後倒産)は、じわじわと増えてきています。2022年のコロナ融資後倒産の累計件数は10月時点で317件。前年(167件)を大幅に上回りました。ちなみに、コロナ融資の損失総額は294億円で、国民1人あたり250円負担している計算になります。
ゼロゼロ融資の借り換え保証制度、上限1億円
全体の景況感は徐々にではありますが良くなっているので、企業は人件費や仕入れ費、設備投資を増やして業績回復を目指したいところですが、これまで受けた融資の返済義務がブレーキになりかねません。
そこで、政府は10月末に閣議決定した総合経済対策に、過剰債務を抱えた企業を対象にした債務減免を含めた事業再生支援策を盛り込みました。11月21日、政府が国会に提出した令和4年度第2次補正予算案には、資金繰り支援として「新たな借り換え保証制度の創設」を打ち出しました。
・保証限度額は1億円
・100%保証は100%保証で借り換えできる
・保証料は低い水準に設定
・保証期間は10年以内、元本の返済猶予は5年以内
融資の返済には業績回復が必須です。借り換え制度を利用することで中長期的な資金繰りの目処を立てることができれば、収益力改善のための投資に資金を回すことも可能になるでしょう。経産省によると、借り換え保証制度は今後、有識者の意見を踏まえたうえで、財務省等と調整し、正式に決定するそうです。対象企業の条件は、おそらくゼロゼロ融資よりも厳しくなるのではないでしょうか。いち早く情報を得るためにも国会審議などの動向に注目していきましょう。
[2022.12.1]
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