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2021年度の「ゾンビ企業」率が急上昇、コロナ関連支援が影響か

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リーマンショック時の水準に迫る「ゾンビ企業」率
2021年度の「ゾンビ企業」率は12.9%で前年度から1.5ポイント増え、全国の「ゾンビ企業」の数は約18.8万社に達しました(帝国データバンクの分析)。ゾンビ企業とは、借入残高が多く、金融機関の助けなしには事業を継続できない企業のことです(※)。今、日本の企業の1割以上が、売上げはあっても収益力に問題があり、多額の負債を抱えていて、金融機関や取引先などからの協力や支援なくしては会社の存続ができない状態にあるとされているのです。
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いわゆる「ゾンビ企業」が問題視されるようになったのは1990年代後半からです。90年代前半のバブル崩壊で、それまで企業が増やしてきた有利子負債の価値が突然損なわれました。そのため、負債額が資産額を上回る企業や、利益で負債を完済するまでに何年も要する企業が多数生まれてしまったのです。その後、企業が有利子負債を抱える割合を減らし、金融機関が不良債権処理を進めるなか、過剰債務に苦しむ企業の割合は徐々に減っていきました。
※「ゾンビ企業」とは
「ゾンビ企業」とは、経営が破綻しているにもかかわらず、金融機関や政府機関の支援によって存続している企業・会社のことである。「ゾンビ」とは西アフリカ、カリブ海、米国南部に広がるヴードゥー教の力で死人のまま蘇った人間のことである。それになぞらえ、マスメディアには好んで使われている。(ウィキペディア)
2008年のリーマンショック後、ゾンビ企業の数は再び急増します。これは2009年から4年ほど実施された中小企業金融円滑化法のもとで、中小企業が借入金約定返済のリスケジュールした企業が多かったことが主な理由のひとつと考えられています。

今回発表された2021年度のゾンビ企業率12.9%は、リーマンショック前後に迫る高水準になりました。現在の政府方針ではリーマンショック時と同様に、臨時の資金繰りセーフティーネットなどの緊急対策支援が行なわれていますが、これが回復の見込みのない企業(ゾンビ企業)の延命にすぎないのではないかと指摘する政府関係者や政治家もいます。

「ゾンビ企業」への支援は単なる延命か?
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業種別に見ると、最も高いのは小売業で19.5%と、5社に1社がゾンビ企業状態にあります。運輸・通信業、製造業がそれに続きます。

従業員数別では、従業員数が少ないほどゾンビ企業の割合が大きくなっています。中小企業のなかでも規模が小さいほど事業存続のために支援が必要であることが分かります。

コロナ禍でのさまざまな金融支援策、特にゼロゼロ融資(コロナ融資)と来年1月10日から始まる「コロナ借換え保証(民間ゼロゼロ融資等の返済負担軽減のための保証制度)」は規模や業種を絞ったほうが効率的ではないかという意見もあります。見込みや効率を優先して支援の対象を限定した場合には、支援を受けられない企業が出てきます。とりわけ緊急時には、効率性にはある程度目をつぶっても、広い範囲の企業が恩恵を受けられるほうが社会にとっては重要でしょう。

多くの企業がゾンビ状態を脱してきた
自民党金融調査会会長の片山さつき参議院議員はメディアのインタビューで、中小・零細企業の売上減や収益悪化は、コロナ禍での自粛要請、ウクライナ危機によるサプライチェーンの断絶、原材料やエネルギー価格の高騰など、経営者の責任の範囲では負えないリスクが原因であり、「事業者だけの責任にすることはできない」としながらも、「生きることも死ぬこともできないゾンビ企業を何の改善もなく支援をしても効果はない」とも発言しています。たしかに、生産性向上や競争力強化に前向きに取り組もうとしない企業がだらだらと生き延びるのは如何なものかとの考えも理解できます。しかし、避けようのない世界経済の激変に翻弄されながらも、努力を惜しまない中小企業が追い詰められるのは理不尽といえます。

現在の日本では、いまだ売上げや利益が改善していないのに物価高や賃上げなどにも対応しなければならず、資金繰りに苦慮している企業は少なくありません。それでもコストカットをしながら、助成金などを利用し、必要ならば借換え保証もして時間的な猶予を得て、なんとか生産性を上げようと努力する企業には様々な支援が用意されています。

冒頭に示したグラフを見れば分かるように、2012年以降、ゾンビ企業の割合は着実に下がっています。つまり、いちど「ゾンビ企業」と判定されても、その状態から脱した企業も多いということです。片山氏が「『倒産』という言葉は使わないで、『民事再生』とか『事業再生・再構築』を」と語るように、事業の存続をいったん断念しても支援を受けて新たに始められるようなスキームが整えられつつあります。今、経営が苦しい企業も積極的に支援を受けて負債の整理や事業の見直しを実現してもらいたいものです。そして、国や金融機関、特に銀行にも企業への助力を惜しまないでほしいものです。

[2022.12.30]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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