日本公庫のCDS、信用補完で民間金融機関の農業者への無担保・無保証融資参入を支援!
日本公庫、新たに新宮信用金庫とCDS契約、累計で124機関と契約
民間金融機関の農業分野への融資参入を支援する日本政策金融公庫は1月11日、同公庫の農林水産事業が新宮信用金庫(和歌山県新宮市)と「CDS(Credit Default Swap:補償手数料を支払うことで信用リスクのみを移転する取引)に関する基本契約」を締結しました。
この契約により、同公庫の農林水産事業がこれまで契約した金融機関は、平成20年10月から累計で124機関となりました。
農林水産事業では、民間の金融機関などによる農業分野への融資参入を支援するため、信用補完のとしてCDS業務に取り組んでいます。CDS契約により、金融機関が農業者へ融資した金額の一定割合を農林水産事業が信用補完することで無担保、無保証の融資が可能となり、農業者ニーズに応える内容となっています。
CDSとは
CDSは、社債や国債、貸付債権の信用リスクに着目し、投資家同士で個別取引するクレジット・デリバティブの一種でもあります。
買い手は債権者や投資家で、保証料を払う代わりに契約の対象である融資や債券などの債権が契約期間中に債務不履行となった場合、元本や利息を保証してもらうのに対し、売り手は保証料を受け取る代わりに債務不履行となった時に買い手に損失分を支払う仕組みです。
取引において債務不履行が起きた場合の損失額を受け取る権利をプロテクションと呼び、CDSは保証料とプロテクションのスワップ(交換)とも言え、保証料は国や企業の信用度合いにより変動します。
BIS規制の対応からCDS市場が拡大
CDSは、銀行など金融機関の健全性や公平性の確保を目的にBIS(国際決済銀行)定めた自己資本率に関わる国際的な統一であるBIS規制の対応から、平成12年頃より急速に市場が拡大されてきました。CDSの利便性から投資を目的に投資家も市場に参入するなど、市場拡大につながりました。
現在のCDS市場は、個別企業を対象とするCDSだけでなく、数十社ほど、代表的な保証料を平均化したCDS指数や、証券化商品などが作られ多様に取引が行われています。
平成20年に起きたリーマン・ショックやその後の金融市場の混乱で、CDS取引は不透明さから市場はパニック状態になった経緯があるため、契約者間の精算から日本証券クリアリング機構などの清算機関での清算へ整備されました。
これまでも規模拡大やコスト削減、6次産業化などを支援
日本政策金融公庫は、これまで「食料・農業・農村基本法」の政策展開に沿った融資供給を通じて農業者を生かす経営改善などを支援してきました。稲作や野菜・果物生産など法人経営や大規模家族経営、新規就農者、異業種からの参入など、地域の農業者が取り組む規模拡大やコスト削減、付加価値をつけた差別化の6次産業化などを同公庫のスーパーL資金などで長期融資を推し進めてきました。
地域の金融機関とのCDS契約締結で、無担保、無保証という融資支援に農業者がどのように活用されるかが注視されます。11ケ国によるTPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋戦略的経済連携協定)は大詰めを迎えており、日本の農業者への懸念も残り、CDSの活用で輸出拡大が期待されます。
●関連記事:「銀行の融資残高72ケ月連続前年超え!地域の地銀、第二地銀支援で農業融資拡大」[2017.10.19配信]
[2018.1.17]
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