財政破綻間近!?最後の砦「国民健康保険」市区町村から都道府県へ運営移行で財政立て直しへ
診療・介護報酬改定、医療・介護保険事業計画、国保運営、相次ぎ施策改正
今年は、4月から診療報酬と介護報酬が同時改定により新利率でスタートするほか、新たな医療企画や介護保険事業計画の開始が重なっています。このように重要施策が重なることは数十年に一度あるか極めて異例なことです。
その中でも改革の目玉となるのは、国民健康保険の財政見直しです。日本は国民皆保険で、この国で生活するすべての人は健康保険に加入することが義務付けられています。
サラリーマンであれば「協会けんぽ」や「独自の健保組合」、公務員などは「共済組合」、自営業は「国民健康保険(国保)」に加入しています。
この健康保険の中でも、自営業や非正規雇用者などが加入する「国保」の財政悪化が懸念されています。
社会環境の急速な変化で国保加入者内訳に大きな変化
国保は、元々は農林水産業者や自営業者のため創設されましたが、このほかの健康保険に加入していない人の受け皿ともなっているため、社会構造、環境の変化や、急速な高齢化によって加入者の内訳はこの半世紀で大きく変わってきました。
国保が創設された昭和36年、加入者である農林水産業者が44.7%、自営業者が24.2%と約7割を占めていましたが、平成27年には農林水産業2.5%、自営業者14.5%と2割にも満たず、約8割が非正規雇用者と無職者で占められました。これは、急速な高齢化やグローバル化、IT(Information Technology:情報技術)化などが大きく影響しています。
団塊の世代が定年、非正規雇用者が増え国保加入が急増
この変化は、団塊の世代が定年となり、企業はグローバル化により海外との競争力向上に人件費の削減を行い非正規雇用となり「国保」への加入が急増したためです。
特に無職者は昭和36年には全体の9.4%でしたが平成27年には44.1%まで上昇しています。その多くは定年退職した74歳までの高齢者です。75歳以降は、後期高齢者医療制度に移行されます。
非正規雇用者は所得も高くはなく、高齢者は病院へ行く回数も増えるのが当然であり、厚生労働省の「平成27年度国民健康保険の財政状況について」によると同年度の国保の財政は2,843億円の赤字となり、ほかの健康保険に比べ厳しさは格別です。
国保財政、支援拡大目指し都道府県に運営移行
国保は国民健康保険の最後の砦。財政が破綻すれば加入者の健康を守れず、国への信頼度も失われるため、財政安定のため平成30年度より財政基盤を見直すことになります。
国保は、新年度から財歳支援を拡大させるため、これまでの市区町村運営から都道府県に運営が移り財政健全化に向け役割を果たすことになります。
このことで加入者に対し、税制面での変化はほとんどありませんが、将来的には都道府県ごとに保険料率が決められるため、保険料が上がったり下がったりする地域も出てくることは予測されます。
ただ、「いつでも、誰でも、どこでも」医療を受けられる国民皆保険なしではこの国は成立しません。国保の財政立て直しは絶対に成し遂げなければならない課題となります。
●関連記事:「介護保険利用者543万人、過去最高更新!介護費用は8兆円超に増加!」[2013.8.7配信]
[2018.1.13]
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