「医療・福祉事業」倒産件数、6年連続前年超え!診療・介護報酬の同時改定で持ち直すか?
負債1億円未満、小規模倒産が8割強
平成30年度の診療報酬と介護報酬の同時改正を前に、平成29年の「医療・福祉事業」の倒産が前年比10.1%増の249件に達し、6年連続で前年を上回り、平成12年に介護保険法が施行されてから最多件数となりました。負債総額では2年連続で前年を上回りましたが、全体では負債額1億円未満の小・零細規模事業者が84.7%占めるなど小規模倒産がほとんどでした。
日本は超高齢化社会となり、「医療・福祉事業」は成長産業として注目されていますが、介護職員の人手不足や人員維持への賃金アップなど経営手腕の難しさが増しており、業界内では再編への動きが加速しています。
「老人福祉・介護事業」倒産が最多
業種別でみると「老人福祉・介護事業」の111件が最も多く倒産件数を押し上げました。次いでマッサージや整体院、整骨院、鍼灸院など「療術業」が68件、「病院・医院」が27件、「障害者福祉事業」が23件と続きます。
倒産に至った要因では、「業績不振」が137件で全体の55.0%を占め、「事実上の失敗」が50件、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が17件と続きました。
内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、平成28年10月1日現在、日本の65歳以上の高齢者人口は3,459万人と、総人口に占める割合は27.3%に上り、現在も上昇傾向にあり「医療・福祉事業」は、高齢者には欠かせない存在となっています。
改正、医療費40兆円、介護費10兆円をどう増減させるか
診療報酬と介護報酬の同時改正は、一定年ごとに見直され、平成30年度は診療、介護とも報酬が見直され、年間で使われる医療費約40兆円、介護費約10兆円をどう増減させるかを決めるもので、価格は国が決める公定価格となっています。
結果として、平成30年度より治療費・入院費などの「本体」はプラス0.55%、「薬価」はマイナス、「介護」はプラス0.54%で決定しました。
「本体」は医療従事者などに配分、「介護」は介護人材へ配分が望まれます。特に「介護」は3年前の改正時に大幅にカットされたため、小規模事業者の倒産が相次ぎ問題化した苦い思いもありました。
医療から介護へ財源シフトも
安倍政権は、消費税増税分の一部を介護人材賃上げ分として盛り込みましたが、予算的には十分と言えず医療から介護へ財源をシフトすることも考えなければならなくなります。
財務省は、介護事業者の利益は中小企業平均に比べ高いと報酬の削減を求め、厚生労働省は、生活援助や通所介護を削減する方針です。
一方、在宅での訪問看護サービスの拡充や、主治医と介護職員との連携や認知症の人向けサービスの強化なども検討しています。必要な人に必要なサービスが行き届くか今回の改定での効果、検証が必要です。
●関連記事:「企業倒産は減少傾向、「老人福祉・介護事業」だけは介護員離職相次ぎ倒産増、過去最大!」[2017.10.1配信]
[2018.1.10]
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