競争を勝ち残り、世界をけん引している企業は?
その企業がどれだけ社会の中で評価され、価値をもつ存在と認められているかどうかは、「時価総額」※の指標で測ることができます。時価総額の推移、比較を通じて世界経済の実情や国ごとの業界の勢力図の変遷を見ることができます。
どのような企業がどの程度評価されているのか、そしてランキングがどのように変化しているのかをみることで、これからの社会を勝ち残るためのヒントを見出してみたいと思います。
※時価総額:「株価×発行済株式数」で求められる数値で、企業の価値や規模を評価する重要な指標のひとつ。
かつては世界のTOPプレーヤーだった日本企業
まずはじめに日本企業が世界でどれだけ評価されていたのか、昔と現在を比較してみます。そこで1989年(平成元年)と2023年現在の世界の時価総額を比較し、35年の間にどのような変化があったのかをひも解いてみます。
<1989年の世界の時価総額ランング> |
1989/12/31 |
||||
順位 |
企業名 |
億ドル |
国 |
|
|
1位 |
NTT |
1,638 |
日本 |
|
|
2位 |
日本興業銀行 |
715 |
日本 |
|
|
3位 |
住友銀行 |
695 |
日本 |
|
|
4位 |
富士銀行 |
670 |
日本 |
|
|
5位 |
第一勧業銀行 |
660 |
日本 |
|
|
6位 |
IBM |
646 |
アメリカ |
|
|
7位 |
三菱銀行 |
592 |
日本 |
|
|
8位 |
エクソン |
549 |
アメリカ |
|
|
9位 |
東京電力 |
544 |
日本 |
|
|
10位 |
ロイヤル・ダッチ・シェル |
543 |
イギリス |
|
|
1989年(平成元年)は、世界の時価総額ランキングTOP10社の中で、実に7社が日本企業でした。さらにそのうち1位~5位はすべて日本企業が占めていました。ところが35年後の2024年1月には下記のように変化します。
米国企業がダントツ、日本企業は30位圏外へ
<2024年の世界の時価総額ランキング> |
|
2024/1/31 |
|
順位 |
企業名 |
億ドル |
国 |
1位 |
マイクロソフト |
29,542 |
アメリカ |
2位 |
アップル |
28,679 |
アメリカ |
3位 |
サウジアラムコ |
19,550 |
サウジアラビア |
4位 |
アルファベット(A+C)※1 |
16,298 |
アメリカ |
5位 |
アマゾン・ドット・コム |
16,121 |
アメリカ |
6位 |
エヌビディア |
15,197 |
アメリカ |
7位 |
メタ・プラットフォームズ |
8,583 |
アメリカ |
8位 |
バークシャー・ハサウェイ(A+B)※2 |
8,326 |
アメリカ |
9位 |
イーライリリー |
6,129 |
アメリカ |
10位 |
テスラ |
5,965 |
アメリカ |
※1種類株A、Cの合計
※2種類株A、Bの合計
参考)トヨタ 3,263億ドル(30位圏外)
上記のように2024年1月末時点では、上位10社中9社はアメリカの企業が占めています。中でもその多くが超巨大IT企業と言われる企業であることが分かります。こうした世界規模で支配的な影響力を持つ巨大IT企業群は、通称ビッグテックと呼ばれています。残念ながら日本企業でTOP10入りしている企業はありません。TOP10どころか、日本国内では断トツ1位のトヨタ(時価総額 3,263億ドル)でさえランキングは30位圏外です。
変わり続ける勢力図(米国内) ~GAFAMからMATANAへ~
このように世界経済を牽引する米国企業たちですが、実はその時価総額の変遷を見てみるとランキングの順位が大きく入れ替わり、評価される企業が変化しています。ここでは詳しい比較は省きますが、長らくビッグテックと言えば、それぞれの企業の頭文字をとって「GAFAM」と言われた5社でした。それが現在は「MATANA」の6社へと変わっているのです。表にまとめると下記のようになります。
※1 Tesla(テスラ)はEV自動車メーカー
※2 Nvidia(エヌビディア)は画像処理に特化したGPUの半導体メーカー
比べて分かるようにFacebook(現Meta)が脱落し、代りにTesla(テスラ)とNvidia(エヌビディア)がランクインしました。このようにIT市場全体の拡大に伴い、その勢力図は徐々に変わり始めているのです。
ではこのMATANAはなぜGAFAMに変わる存在と言われているのか。GAFAMの一角を担っていながら、MATANAに入れなかったFacebook(現Meta)は一体どこに問題があったのでしょうか。
ビッグテックの一員から脱落したFacebook(現Meta)
長らく「ビッグテック=GAFAM」だった時代は終わり、代わりにこれからは「MATANA」の時代へと影響力を持つ企業の構成が徐々に変化しています。
なぜMetaが脱落したのかというと、その原因は同社のビジネスモデルにあります。Metaの現在のビジネスモデルは、同社が保有するSNSプラットフォーム「Facebook」と「Instagram」における広告収入を主な収益源としています。しかし、未来を見据える投資家たちの関心は、現状の広告収入モデル以外にどのようなビジネスモデルを構築できるかにあるのです。
社運を賭けて、社名の語源ともなった「メタバース」や「VRテクノロジー」に多額の投資を行ってきましたが、残念ながらそれらはまだ市場を変化させるほどのレベルには達していません。つまり、Metaはメタバースの実現などに関して具体的な形でこれからのビジネスを提示することができておらず、市場の期待に答えられていないのです。巨大なプラットフォームを有しているだけでは、ビッグテックに留まり続けることはできなかったのです。
勝ち残るためのヒント
時価総額のランキングの変遷から、主要企業がどのように変化しているのかをみてきました。特に今回は2024年以降も引き続き世界経済を牽引するであろうビッグテック勢力図の変化を中心にみてみました。
中小企業の経営者の方からみると、住む世界が違い過ぎてまるで他人事のように思われるかもしれません。しかし目指す目標は違えども、事業展開の考え方、取り組む姿勢には学ぶべき点があるのではないかと思います。
中小企業においてもそれぞれの業界で競争力を持ち続けるためには、ビッグテックのような戦略や考え方を持つことも有益と言えるのではないでしょうか。またそれは下記のように集約されるでしょう。
- 現状に満足せず、常に新たな価値を追求する
- 競合他社に対して十分な競争力を持つビジネスモデルを確立する
- ユーザーのニーズに合わせて提供する価値を模索し続ける
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