岸田首相襲撃される! 安倍元首相暗殺から9ヶ月、なぜテロは連鎖するのか

岸田文雄首相、応援演説会場で襲撃される

衝撃的なニュースが飛び込んできました。4月15日、岸田文雄首相が衆院補欠選挙の応援に訪れていた和歌山市の演説会場で、パイプ爆弾に似た物が投げ込まれ爆発する事件が起きたのです。投げ込んだ男はその場で取り押さえられました。幸いSPの機敏な対応などのおかげで岸田首相も無事、周囲にも大きなケガをした人はいなかったようです。
テロリズムの背景にある不景気
安倍元首相暗殺事件から9ヶ月、今度は現職の首相が襲撃されるという事件が起きてしまいました。日本の首相経験者は64人、そのうち14人が襲撃され、7人が命を落としています。事件は昭和初期に集中しています。その発端になったのが、昭和5年(1930)、「ライオン宰相」と呼ばれた濱口雄幸首相が東京駅で銃撃された事件でした。

当時、日本は、のちに「昭和恐慌」と呼ばれるようになる経済危機に陥っていました。第一次世界大戦後の戦時バブルの崩壊につづいて大正11年(1922)の金融恐慌、そして翌12年(1923)の関東大震災が追い打ちをかけました。
濱口内閣は緊縮財政と金融引き締めを進めたうえで、金本位制への復帰を狙って金解禁を行ないましたが、折悪しく昭和4年(1929)のウォール街の株価大暴落とタイミングが重なり、さらなる混乱を招くことになりました。深刻なデフレ、中小企業の倒産や操業短縮、街にあふれる失業者。大卒の就職率が30%という不景気のどん底で、職を求めて奔走する青年を描いた小津安二郎監督の映画「大学は出たけれど」(1929年)が公開されたのも、まさにこの頃です。濱口首相暗殺には、そうした社会の鬱憤が噴出したという側面があります。
不況による世情不安はテロの連鎖を呼ぶ

もちろんそれぞれの事件に至る経緯には、政治思想上の対立など様々な要素が絡み合っています。とはいえ、濱口首相暗殺に続いて五・一五事件、二・二六事件と、権力の中枢を狙うテロリズムが連鎖していく背景には、すくなくとも不景気が引き起こした世情不安があるのは確かでしょう。
長引く不況は、社会全体から冷静さや余裕を奪います。そして、不況や経済格差を生んだ張本人として人々の不満や怒りのはけ口になりやすいのが政治家です。過去の事件では、一部の世論が犯人を賛美したり、減刑嘆願運動が起きたりしました。昨年起きた安倍元首相暗殺事件の容疑者に対しても減刑嘆願や高額のカンパが届いているそうです。
今回の岸田首相暗殺未遂がどんな性質の事件なのか、まだ分かりません。しかし現在、コロナ禍、そしてロシアによるウクライナ侵攻などによって世界経済が低迷し、先行きが見えません。昭和初期と同様に、世情不安が続いています。不況が長引けば長引くほど人心は乱れ、こうした事件が起きやすい土壌が出来上がっていきます。同様の事件が連鎖して起きないか非常に心配です。
●関連記事:「安倍元首相暗殺の衝撃!参院選で大勝利した保守勢力は日本経済を救えるか」[2023.7.11配信]
[2023.4.18]
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