米国TPP離脱①:医薬、自動車、食糧業界困惑。自由貿易阻害の可能性? 戦略練り直し必須に
自由貿易が阻害されるのか?
トランプ次期米大統領に対し、日本の産業界の受け止め方はさまざまです。今回は、渦中の「環太平洋経済連携協定」(TPP)を巡る反応を列記します。医薬、自動車、食糧など、業界関係者からは困惑の声が漏れてきます。自由貿易が阻害されるのか、戦略の練り直しに大わらわです。
知財保護の枠組み決定に期待を寄せていた製薬業界
製薬業界では、日本製薬工業協会の藤井光夫・知的財産部長が、「TPPから米国が離脱するのであれば残念だ」と明言しました。
TPPでは、副作用が少ないとされるバイオ医薬品の開発データ保護期間が「実質8年」でまとまりました。新薬開発は21世紀のビッグビジネスですが、莫大なコストがかかり、企業規模によっては一剤の開発に社運を賭けることになる。知的財産の保護の枠組みが決まり、「(TPP非加盟の)中国やインドに統一ルールを拡張する上で重要なステップ」と期待しただけに、足元がすくわれた感じなのでしょう。
NAFTAまで見直されるとしたら...
自動車では、TPPが発効した場合、日本産乗用車にかける2.5%の関税を25年間かけて撤廃する予定でした。米国で販売される日本車は、多くが北米自由貿易協定(NAFTA)域内での生産で、米国のTPP離脱の影響は軽微とみられます。しかし、トランプ次期米大統領の方針は未知であり、「NAFTAまで見直されるなら、戦略に影響が出る」との見方です。
一括離脱であれば飲食業界の戦略も変わる
食糧分野では、米国産の牛肉やコメなどの関税が段階的に引き下げられ、日本の消費者の生活にも、メリットがあるはずでした。巨大農業国である米国にとっても、悪い話ではなかったのです。しかし、一括離脱であれば、飲食業界まで戦略が変わります。ロイヤルホールディングス(ロイヤルHD(株):東京都世田谷区 黒須康宏社長)は、「米国のTPP離脱で仕入れ価格の低減が遠のいてしまう」など、残念きわまりないとするコメントを発表しました。
[2016.12.3]
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