相続税対策のアパート・マンション「貸家」新設着工件数バブル崩壊?空室埋まらず地方ではもう限界
昨年の「新設住宅着工戸数」は前年から6.4%増、3年ぶりの高水準
国土交通省の「平成28年建築着工統計調査」によると、新たな住宅を着工した件数を示す「新設住宅着工戸数」は、前年から6.4%増加し96万4,137戸と、2年連続して増加。平成25年の98万7,254戸以来、3年ぶりの高水準です。
内訳を見ると、「持家」やマンションなど「分譲住宅」は1桁伸びですが、賃貸目的のアパートやマンションの「貸家」は、前年から10.5%と2桁ベースで増加し41万8,543戸でした。「貸家」が40万戸を超えるのは平成20年以来8年ぶりとなりました。
「貸家」の新築着工戸数が伸びた要因には、平成27年1月に施行された相続税の改正が大きく影響しています。
相続税法改正が「貸家」建設バブルに
相続税の改正は、非課税枠が5,000万円に相続人1人につき1,000万円がプラスされていましたが、改正後は3,000万円に相続人1人につき600万円となりました。これまで自分は無関係と思っていた方も相続税納税の対象となる可能性もあり、財務省の試算では、課税対象は4%〜6%に上がると試算しています。
また、更地を所有していれば、そのまま放置するよりアパートなどを建てた方が相続税法の評価額が下がり課税対象も少なくて済むというメリットがあります。
この改正によって「貸家」の新築着工戸数が伸び、さらに、日銀のマイナス金利政策で金利は低水準。金融機関からの融資も増加しました。
これまでの日本では、良い循環でお金が回り人々の住居が確保されるという理想な形ですが、現在は少子高齢化、日本にとって毎年人口が減少する中、「貸家」を建てたものの入居してくる人々がいるかが課題となっています。
サブリース契約で安心?空室でも賃料は保証の「罠」
この課題を打破するように建設企業では、建てたアパートやマンションを長期に渡って一括で借り上げ、一定期間の賃料を保証する「サブリース」を考案。これも「貸家」が伸びた要因にもなっています。
借り上げ期間は、長いもので30年、賃料は1〜2年ごとに見直し改定するものですが、人口が減少する日本において入居者は減少する傾向があります。結果、約束していた賃料が大幅に減少したり、契約を解除されるなど訴訟に発展するトラブルも少なくありません。
昨年の「貸家」の建設を地区別で見ると、長野県が前年比36.8%増、富山県が同36.7%増、、徳島県が同32.4%増と、人口減少に加え、首都圏に人口が集中する中、地方での「貸家」建設が増加しています。
「貸家」新設着工件数、3ケ月連続前年割れ
国土交通省によると、「貸家」の新設着工戸数は今年6月から8月まで3ケ月連続で前年同月を下回りました。地方では空室が埋まらず、期間を限定し無料で貸し出す物件もあります。金融機関、特に地銀にとっては、貸出先に頭を悩ませていたところにアパート・マンション建設融資が優良先となっていましたが、金融庁の監視強化もあり、融資の流れが変わりつつあります。
金融庁では、アパート・マンション融資は、地銀と顧客の信頼関係を損ないかねないとし、今後も実態を把握していくとの方針です。首都圏ではアパート・マンションニーズは、まだ残りますが、人口減少が加速している地方では、新規供給はもう理にかないません。
●関連記事:「新設住宅着工戸数2年連続増加!相続税対策の貸家は供給過剰、20ケ月ぶりにマイナス」[2017.10.12配信]
[2017.10.23]
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