横浜市内の傾斜マンション問題。解決にほど遠い、構造的な根深さをはらんでいる。
不況を乗り切るための危うい悪循環
旭化成の子会社「旭化成建材」が杭打ちを手掛けた、横浜市の「傾斜マンション」問題。データ改ざん、データの流用などが次々に明らかになり、被害は他県、公共施設にも広がっています。建て替えを前提条件とした補償交渉も、住民それぞれの事情を考えれば、難航必至。なぜ、大手業者がこれほどずさんなのか、唖然とするばかりです。根が深い問題だと感じています。
2005年の耐震偽装問題を受け、国は、建築基準法や建設業法を強化しました。これにより、現場管理者は書類の事務処理などに追われ、「現場をくまなく見て歩く時間が減った」と言われます。バブル経済がはじけ、時間をかけて優秀な人材を育てる余裕がなくなったうえ、現場ではさらに負担が増えた。しかし、大手業者は、不況を乗り切るため、この危うい悪循環を放置しました。
現場の重層構造化が進むなかで
建設現場は、多くの人や組織が関わる世界です。バブル後は、設計から施工まで、下請けへの発注が増え、その下請けも数が増えて、現場の重層構造化が進みました。こうした状況下では、責任の所在や、全体の指揮命令系統があやふやになりがちです。それが巡り巡って、施工不良につながり、お客さんの不利益につながるとうい発想も、失われつつあるのではと懸念します。
傾斜マンション問題は今後もさらに広がり、決着までに、長い時間を必要とするでしょう。現場管理者の能力の低さ、改ざんに関わった担当者の悪質さは明らかですが、責任を個人に押しつけるべきではない。建設業界だけでなく、社会全体で、今回の出来事から学ばなければなりません。モラルとは何かを、よく考えましょう。社会として、襟を正す時期に来ているのです。
[2015.11.14]
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