富岡製糸場:世界遺産へ!「奇跡的」保存状態が決め手/「女性進出」の象徴
富岡製糸場:世界遺産へ/近代産業遺産では国内初の登録
4月26日、文化庁は日本が世界文化遺産に推薦していた「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬県富岡市など)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が世界遺産登録を勧告したことを発表しました。
今年6月にカタールの首都ドーハで開かれる第38回ユネスコ世界遺産委員会で正式決定しますが、登録勧告を受けた場合はそのまま認められる可能性が高いとされています。正式登録されれば、日本の世界文化遺産では昨年の「富士山」以来14件目。世界自然遺産も含めた世界遺産では国内18件目。近代産業遺産では国内初の登録となります。
GW人入りは過去最多!受け入れ態勢不備「うれしい悲鳴」?
元々観光スポットとして定番化していた富岡製糸場。この報道を受け、26日当日だけで2,638人の観光客が詰めかけたとのこと。ゴールデンウィークの連休と重なったこともあり、一夜明けた27日は、過去最多の4,972人が訪れました。過去の最多入場者数は昨年5月4日の3,446人でしたが、まだ続く連休の中でさらに更新が見込めるかもしれません。
観光客であふれる地元では、交通整備や周辺の商店などの受け入れ態勢が整わないといった課題も指摘されていますが、今後国内外からの訪問客増加の期待もあって地元の意識は概ね高く、早期の改善が見込まれます。
「奇跡的」高評価の保存支えた企業の功績
今回の登録勧告にあたって、「世界の絹産業の発展と絹消費の大衆化をもたらした技術革新」に加え、イコモスが大きく評価したのは「構成資産の保存状態の良さ」。主要施設は創業当時のまま、ほぼ完全に残されており、その保存状態は「奇跡的」と讃えられています。
富岡製糸場が創業当時の姿をほぼそのまま残して保存されてきたのは、昭和14年の民営化により経営を引き継いだ片倉工業株式会社(旧片倉製糸紡績株式会社/東京都中央区明石町6‐4/代表取締役社長:竹内彰雄氏)の功績があります。
操業停止後も「売らない、貸さない、壊さない」/億単位の維持費を18年間負担
昭和62年に富岡工場(現富岡製糸場)を操業停止した後も、当時の経営者は「売らない、貸さない、壊さない」の3原則を掲げ、平成17年に富岡市に寄付するまで、億単位の維持費を毎年負担してきたとのこと。近代産業と共に発展した「勝ち組」企業とはいえ、この意識の高さには感動を覚えました。
「ブラック企業」ではなかった?女性の社会進出に貢献した富岡製糸
歴史のある製糸工場というと『あゝ野麦峠』などに描かれた過酷な労働環境が連想されます。しかし産業近代化の模範としての官営工場であった富岡製糸場は、フランス人による技術指導や寄宿舎の完備に加え、能力別の月給制度や細かい就業規則などがある「模範工場」であったとも語られています。
折しも「アベノミクス」の評価が乱高下するなか、富岡製糸場の世界遺産登録が女性の労働環境の改善を後押しすることを期待したいものです。
[2014.5.6]
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