施行目前「改正耐震改修促進法」/耐震改修の負担増で老舗旅館は廃業の危機!
「改正耐震改修促進法」11月より施行/27年末までの耐震診断の実施義務付け
先日、久方ぶりに携帯電話の緊急地震速報が鳴り響いて慌てた方も多いのではないでしょうか。「地震大国」とも呼べる日本。平成23年の東日本大震災発生以降、大地震に備えて建造物の耐震化は急務です。
今年5月には改正耐震改修促進法が成立。11月に施行される運びとなりました。これにより、昭和56年以前の旧耐震基準で建設された建物のうち、一定規模以上の病院やホテル、子どもや高齢者など、避難弱者が利用する施設については、平成27年12月末までの耐震診断の実施が義務付けられることとなります。
自治体が結果を公表/診断費用が経営圧迫!
施設所有者は耐震診断の結果を、市など自治体に報告、自治体は診断を受けなかった場合も含め、公表することとなりますが、所有者がこれに従わない場合、100万円以下の罰金など罰則規定が設けられています。
デパートや病院も含め、延べ床面積5,000平方メートル以上の約1万3,000棟が対象となる見通し。耐震診断は物件によって大きく開きが出ることが想定されますが、数百万円、施設によっては1千万円規模の費用が掛かる場合も。診断にかかる費用の補助はあるものの、所有者側の負担は不可避。経営への圧迫も懸念されるところです。
中規模旅館の倒産懸念
旅館やホテルの場合は、8〜10階建てで客室数40〜50の中規模施設が対象。経済成長期に建設された豪華ホテルや温泉付き保養所などが想定されますが、その数は全国で1,000軒を超えると見込まれています。
また、口コミ商売でもある旅館やホテルでは特に、「耐震不足」と診断され、それが公表されることで集客力を落とすという不安も残ります。命を預かる施設が「安心」を提供するために必要な診断を受け、設備を整えるのは当然のこと。利用者の立場にしてみれば、耐震化の必要性はもちろん理解できます。とはいえ現時点で資金を用意できず、改修予定を立てられないという施設も少なくはないでしょう。
温泉地自治体の財政も危機
改正法成立に併せて整備された新しい補助制度を活用すると、自己負担は33〜89%で済むとのこと。ただし補助金は、国と同額を自治体が出さなければいけないという原則があり、その割合は都道府県や市町村など、自治体がどれだけ負担できるかで変わります。
例えば、温泉旅館や保養所が多く建つ静岡県熱海市では、耐震診断の対象となる旅館は少なくとも14軒。全館の耐震工事をすると約100億円がかかる試算で、補助額も数億円は避けられません。
観光活性、景観保全につながる柔軟な支援策を!
熱海市に限らず、老舗旅館の多い温泉地を擁する市町村のほとんどでは、景気の衰退と共に財政規模が逼迫しているのが実情。施設改修のための支出は重すぎる負担です。
これについて、全国82市で構成する「温泉所在都市協議会」は、国に財政支援などを要望。観光産業活性や景観保全などの側面から、より柔軟な支援策が求められます。
[2013.8.20]
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