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「ぬれ煎餅で赤字補填」の銚子電鉄が自主再建を断念!市へ支援要請、「上下分離方式」で再建目指す

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人気ローカル線、自主再建断念!震災後に観光客激減
銚子電気鉄道株式会社(銚子電鉄/銚子市新生町2‐297/)は2月1日に記者会見を開き、自主再建を断念することを発表しました。
大正11年開業。銚子市内の10駅、およそ6.4キロを1~2両編成で1日33往復する銚子電鉄。予て乗客数の落ち込みによる経営危機に陥っていたものの、苦肉の策で取り組んだ副業の「ぬれ煎餅」のヒットにより近年は黒字化。平成21年度は約1,200万円の純利益を計上していました。
ところが、東日本大震災後に観光客が激減し、23年度の乗客は前年度比約14万人減、運輸収益も約3,000万円減と、経営状況は一転。23年度の決算は約9,000万円の赤字に転落。現在も利用客の増加が見込めず、「今年も赤字基調」と厳しい経営状況が続いていることを明らかにしました。
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5年で6億円の設備投資が経営圧迫/車両交換、信号機更新など
また、業績が持ち直しつつあるものの、老朽化した車両の更新など、設備投資費用が経営を圧迫していることが決定打となっています。
銚子電鉄といえば、デハ801型など、レトロな姿を残すローカル線として多くのファンに支持されていますが、現在保有する車両6両のうち2両を平成26年度までに買い換えなければならないとのこと。そのほか、信号機の更新や変電所の整備なども必要で、設備投資は今後5年間で約6億円必要という試算に至りました。

自治体へ支援要請/設備・経営分離で運行存続へ
このため、自主再建は困難と判断、昨年10月の取締役会で再建委員会を設置し、国、県などへの支援要請を決定。12月には市などに財政的支援を求める要望書を提出していました。
この支援要請に対し、市は「検討する」とし、具体的な協議を行う考えを示しています。再建策を国土交通省などとも相談した結果、車両や鉄道施設などインフラを自治体が維持管理し、運行を鉄道会社が担う「上下分離方式」による経営再建を目指す方針とのことです。

銚子電鉄こそが「観光資源」/「副業の儲けで操業」のユニークな再建スタイル
JR銚子駅から犬吠埼を経て漁港のある外川まで、沿線には観光スポットが多くありますが、それらをつなぐ銚子電鉄自体が地域にとっても重要な「観光資源」と認識されています。鉄道事業のほか、食品の製造・販売も行っていることから、地元特産の醤油を使った「ぬれ煎餅」によるユニークな再建の様子などもテレビ番組などでもたびたび紹介されてきました。「地域のシンボル」として愛されてきた同電鉄の運行存続の見通しに、地域住民や鉄道ファンは安堵の一言に尽きるでしょう。

自治体と連携強化で目指せ真の再生!
ただし、国土交通省関東運輸局からは「客の乗っていない電車を副業で走らせているのはおかしい。もっと本業を頑張ってもらわないと、安全にも問題が出るのではないか」と指摘されていたとも。平成23年度の収入は運賃が約8,000万円、濡れせんべい販売などが約3億4,000万円。本業と副業の「逆転現象」も問題視されていました。
本業云々といっても、利用客がいなければ頑張りようがありません。竹本勝紀社長は会見で、「鉄道の維持は自社だけではできない」とも語っています。ハード面の整備に限らず、自治体との連携を強化することによって、利用客増加、地域活性化につなげたいものです。

[2013.2.12]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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