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iPhone中国工場で自殺多発!米労働協会調査で違法発覚「アップル環境改善は日系工場には打撃?」

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米公正労働協会・中国工場調査:過剰労働、健康被害の違反50件判明
iPhoneやiPadなど米アップル製品を委託生産する中国の工場で、ここ数年、過酷な労使問題を巡り若い従業員が十数名自殺する事件が相次いでいます。米独立監査機関のFLA(Fair Labor Association:公正労働協会)は先月、アップルに対し行った是正勧告が、中国に工場を持つ外資系製造業に大きな波紋を広げました。
FLAは、アップルからの要請を受け今年1月から同社製品を生産する富士康(フォックスコン)の広東省深センなど3工場を調査。約3万5,000人の従業員への聞き取り調査を行った結果、賃金問題や過剰労働、健康被害など労働環境において違法行為やFLA違反などが50件判明しました。

「他人事でない」ソニーや任天堂もアップルと同じ工場で生産
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フォックスコンは、台湾のEMS(Electronics Manufacturing Service:電子機器の受託製造)大手・鴻海精密工業の中国法人で、従業員は平成21年時点で75万人と巨大工場で電機、電子製品の組み立てが行われています。アップル以外にもインテルやデル、HP、モトローラなど米国の大手ITメーカーの製品の他、日本のソニーのテレビや任天堂のゲーム機、ソフトバンクのモデムなどの組み立ても行っています。鴻海精密工業は、アップル最大のサプライヤーで傘下の中国工場、フォックスコンでは平成22年には成都工場で爆発が事故が起き4人が亡くなるなど、従業員の自殺とともに問題となりました。

NYのアップルストアー前で中国工場の労働環境改善デモ
アップル製品は、中国で過酷な状況のもと生産されていると欧米のマスコミでも指摘され、非難の声も上がりました。今年2月には、ニューヨークのアップルストア前で労働環境改善を訴えるデモが行われ、約25万人分の署名がアップルに提出されましたが、フォックスコンの工場・労働管理体制はアップルのみならず外資系製造業にとっても他人事ではないようです。

親会社、台湾・鴻海精密工業は福利厚生アピールでイメージアップ?
企業のイメージ回復のため、台湾の親会社・鴻海精密工業は先月、中国にある22の工場から従業員の中でも優秀な217人を1週間の台湾旅行に招待。小遣いとして一人当たり約6万円が支給された他、約5〜6万円相当のiPhone4がプレゼントされました。従業員の平均給与は約2万5,000円と、台湾旅行まで含めれば1年分の給料にも匹敵します。台湾メディアでは、「給与引き上げをかわすため福利厚生をアピール」と報じました。同社は3月には、シャープの筆頭株主にもなりイメージアップに様々模索しているようです。
今年下半期には最新のiPhone5の発売が噂されるなか、フォックスコンは中国内陸部での工場建設を進めるなど業績を大きく伸ばしています。新たに農村部から若者を雇用し、軍隊式の労働条件のなか魅力ある製品が生産されることのないよう改善が求められます。

iPhone4粗利は65%に賃上げの余力あり
iPhone4の販売価格に占める中国での組み立てコストは3%以下で、製品価格が約500ドルとすれば中国での委託組み立てに関わる対価は1台につきわずか15ドル。一方アップル側の粗利は1台当たり約65%前後と高くみられ、同社では人件費アップなど賃金問題では改善の余力は持ち合わせています。
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FLAから是正勧告を受けたアップルが労働環境改善に取組み、その成果がこれからの中国での委託生産対価のモデルケースとなれば、他の外資系製造業にも大きな影響を与えます。日系電子機器メーカーでは、中国で生産する製品の粗利は約30%と、アップルの改善ケースを労組などに要求されても応える余裕はありません。アップルのティム・クックCEOは今年2月、中国出張の際、投資家向けに「アップルははるか昔から労働環境を真剣に考えている」と発言しているだけに、今後は、中国の工場離れが一層進展しそうです。

[2012.5.3]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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