貸金業法、22年6月改正で多重債務者51万人に減、ヤミ金相談は3倍増、消費者金融業は壊滅
多重債務者減少傾向:改正貸金業法の効果か
消費者金融業者が多く加盟する個人の信用情報を扱うJICC(日本信用情報機構)によると、今年1月末時点に借入れが5社以上ある多重債務者数は、前年同月から24万人減り51万人となったと発表しました。金融庁の発表では、平成18年時点での多重債務者数は約230万人、19年は約171万人、20年は118万人と減少傾向にあります。金融庁や厚生労働省による相談窓口やセーフティネットの充実など積極的な救済策効果が表れています。
金融庁ではその後、さらに平成22年6月に改正貸金業法を完全施行。金利の上限は29.2%から20%へ引き下げ、借入額は総量規制により年収の1/3に抑え、多重債務者は急減しました。
大阪貸金業者の6割が経営悪化:廃業、縮小検討、ヤミ金業へ転身?
多重債務者救済の目的は果たしつつある一方で、改正貸金業法の影響で生活費を穴埋めする家庭や、中小・零細企業経営者などが利用していたつなぎ融資などにも影響が出ています。同法は一律の規制で返済余力のある「借りることができれば良くなる層」をも窮地に陥れる可能性も出てきています。
改正貸金業法で貸金業者はやみ金に転身か?背景には業績の極端な悪化
大阪府では同法施行以降、府内の貸金業者数が約4割減少する一方で、無登録で違法に資金を貸出す「ヤミ金」への相談が昨年87件と前年の30件から約3倍に増加しました。
大阪府では昨年9月に府内の貸金業者179社から聞き取り調査を実施。このうち約6割が同法の完全施行で経営が悪化、事業縮小や廃業を検討との結果となりました。大阪府では、規制強化で経営悪化した貸金業者が「ヤミ金」へ転身した例もあるとみて相談体制を強化しています。
増えるヤミ金摘発報道:法定金利の160倍で貸付け
報道では、都内の元貸金業者が法定上限金利20%の約24~160倍で約136万円を貸付け、利息として約152万円を受け取ったとして摘発されました。警視庁生活経済課によると元貸金業者は、顧客の携帯電話へ連絡し勧誘。顧客約250人に違法で貸付けており、ほとんどの顧客が多重債務者だったとあります。今年に入りヤミ金業者の違法貸付けによる摘発は数件に上り、借す側、借りる側両者の需給バランスや与信法など新たな改正案を望む声も上がっています。
信用情報機関JICC取扱高首位を奪われる
改正貸金業法による影響は、貸金業者中心に加盟する信用情報機関・JICCにも及んでおり、貸金業者数の減少から取扱高も急減しています。これまで取扱高で首位だったJICCは、クレジットカードや信販会社が多く加盟するCIC(シー・アイ・シー)に月次取扱高で今年度初めて首位を奪われました。
貸金業者数 47,504社から25年で2,405社、わずか5%に激減
減少を続ける貸金業者は昭和61年の47,504社をピークに、昨年12月には2,405社と、25年でわずか5%にまで縮小しました。
消費者向け無担保貸付残高でも日本貸金業協会が集計を始めた平成19年の13兆7,000億円から約6割も減少し5兆6,279億円となりました。
総量規制の対象外の銀行無担保融資徐々に増加
一方、改正貸金業法の総量規制の対象外となる銀行の無担保融資が徐々に拡大を見せています。消費者金融大手では、銀行融資の保証業務に力を入れ、昨年12月末時点で三井住友銀行グループのプロミスと三菱UFJファイナンシャルグループのアコムの保証残高はともに前年比で8%伸びています。銀行系融資が拡大しつつあるものの、規制が強化された消費者金融市場を補うには至っていません。中小・零細企業経営者のヤミ金利用への懸念は当面残ります。
[2012.2.24]
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