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「公租公課倒産」の動向

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近年「公租公課倒産」や「社保倒産」なる言葉が見受けられるようになってきました。

聞き慣れない言葉なので何のことかピンと来ない人が多いでしょう。

 「公租公課倒産」や「社保倒産」とは、社会保険料や税金などの公租公課の滞納が要因となった企業の倒産のことです。多額に上る公租公課の滞納や延滞金の未納により、自社の預金口座や土地などの資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課倒産」は、近年驚くほど多く発生しているのです。 

 

公租公課の滞納状況

帝国データバンクの発表によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事業所は、22年度末時点で14811事業所に上り、適用事業所全体に占める割合は5.2%を占めました。前年度に比べて滞納事業所数は減少したものの、依然として多くの企業が納付に苦慮する状態が続いているといえます。

社会保険料や各種税金の納付は、社会保障制度を維持・継続するために企業が公平に負う義務であり、仮に差し押さえ等で事業継続に行き詰まる企業が増加したとしても、年金事務所等の責めに帰すことはできません。ただ現状は、足元の円安や資源高による物価高などの影響も重なり、社会保険料の支払い催促に対して弁済可能な資金を有する中小企業は決して多くありません。従って社保や税金滞納分の支払い見込みが立たず、事業継続を断念するケースは今後さらに増えていくことが予想されます。


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年金事務所の態度が硬化した?

厚生年金や健康保険などの社会保険料の徴収を担当しているのは、皆さんもよくご存知の通り日本年金機構(以下、年金機構という)で、その実務を担当しているのが全国に312ヵ所ある年金事務所です。

最近経営者の方たちから、「年金事務所の態度が冷たくなった」という趣旨の言葉を耳にすることが多くなりました。「冷たくなった」とは、今までは交渉の中で、例えば「納付をもう少し待って欲しい」とか、「納付額をもう少し減額して欲しい」といった企業側の条件をある程度受け入れてくれていたが、最近は一切条件を認めてくれない、ということを指しているのでしょう。

本当に「冷たくなった」のでしょうか。それは年金機構の行動原理や運営方針を見てみれば答えはシンプルです。結論を先に述べると「徴収に対するスタンスが元に戻りつつある」です。

 

日本年金機構

ここで年金機構という組織のことを少し説明します。

年金・健康保険行政は従来は社会保険庁が担っていました。ところが、詳しくは割愛しますが、2000年に入ると「予算の無駄使い」や「消えた年金問題」といった諸問題が発覚し、同庁は社会的に大きな非難の的となりました。結果同庁は解体されることになり、その業務の受け皿となる組織として2010年に発足しました。

同機構は、一般企業ではごく当たり前ですが、期初に目標を掲げ、期末に総括するという活動をしています。そこで同機構がどのような目標を掲げて日々活動しているのか、ということを知ることで同機構のスタンスを知ることができます。

 

日本年金機構の5大業務

年金機構は、1.「適用・調査業務」、2.「保険料徴収業務」、3.「年金給付業務」、4.「相談業務」、5.「記録管理・提供業務」の5つを5大業務としています。いまは特に経営者の皆さんにとって関心の高い2.「保険料徴収業務」について令和4年度と令和5年度の計画についてどのような違いがあるのか見てみましょう。

 

厚生年金保険・健康保険等の保険料徴収対策

令和4年度

令和5年度

・・・(前略)令和4年度においても、法定猶予制度の効果的な活用を図り、引き続き事業所の存続を図りつつ、新規発生保険料以上の納付を促す等、適切に納付計画を策定し、履行管理を行うことにより、安定的な保険料収納の確保と収納率の向上を図る。

また、法定猶予制度の適用を受けた事業所の履行管理や滞納事業所への対応に注力するための徴収体制の強化、システムの効率化を実施し、専門性の高い徴収職員を育成する。

・・・(前略)令和4年度においては、法定猶予制度の適用を受けた事業所(以下「法定 猶予事業所」という。)からの保険料収納を確保するため、新規発生保険料以上の納付計画を基本とした運営を順次進めるとともに、納付協議に応じない事業所には滞納処分を実施することにより、収納率の向上が図られている。

新型コロナウイルス感染症の拡大前(令和元年度)の徴収実績への回復を見据え、令和5年度においても、法定猶予制度の適用も含め、納付に重点を置いた徴収対策を着実に実施し、公正かつ公平な保険料収納の確保を図る。

 

このことから、年金機構としてはコロナ禍は既に過ぎたことで、いまは「平時」を前提にして行動していることが分かります。

 

日本年金機構による差し押さえ事業所数の推移

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同機構による差し押さえ事業所数の推移を見ると、2009年度は約8300社でその後ほぼ一貫して増加してきており、2019年度は33100社まで増加していきました。同機構によると、今年度は上半期(49月)だけで約26300社に上ります。半年で前年度1年分(約27800社)に達する勢いなのです。これはコロナ禍で猶予されていた保険料の徴収が本格化したためで、同機構が平時に向けたスタンスに切り替わっているのがデータからも読み取れます。

こうしたことから、差し押さえがきっかけの「公租公課倒産」が増えてきているわけです。

 

最後に

ここまで説明してきた通り、年金機構の徴収スタンスは明らかにコロナ以前への回帰がみらます。今後新型コロナの感染症の扱いが再び2類になるなど社会的混乱が再来すれば別ですが、この「コロナ以前への回帰」の動きが緩まる事はないでしょう。経営者としては、そういう認識で対応にあたらなければなりません。

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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