被災地の伝統工芸を海外へ!経産省有識者会議「クール・ジャパン」でブランド化
経産省有識者会議「クール・ジャパン」で復興支援
経済産業省の有識者会議は5月12日、東日本大震災の復興に向けて、被災地の伝統工芸品のブランド化支援を打ち出しました。
同会議がまとめた提言によると、震災や東京電力福島第一原子力発電所の事故で、海外では日本ブランドのイメージが傷ついているとして、政府の支援により、日本製品の海外への売り込みなどを積極的に行うべきとしています。そのうえで、海外で人気の高い日本文化「クール・ジャパン」関連の事業で東日本大震災の被災地復興支援につなげるため、震災の被害を受けている地域の伝統工芸品の販路拡大などを見込んでいます。
具体的には、海外のホテルチェーンとの連携を強化したり、被災地の地場産業の商品開発などを支援したりすべきと提言。経済産業省では、この提言を、政府が来月中をめどにまとめる日本ブランドの売り込みに向けた「行動計画」に反映させる方向です。
国指定の伝統的工芸品210品目
一般的に「伝統工芸」や「伝統工芸品」という言葉が使われますが、正式には、伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づいて指定された次の5つの要件を満たす工芸品が「伝統的工芸品」と定められています。
1. 主として日常生活で使われるもの
2. 製造過程の主要部分が手作り
3. 伝統的技術又は技法によって製造
4. 伝統的に使用されてきた原材料
5. 一定の地域で産地を形成
平成20年4月現在、経済産業大臣から指定を受けている伝統的工芸品は210品目あり、それぞれの製造協同組合等の検査を受けて合格した製品には、「経済産業大臣指定」の伝統証紙が付されます。
福島:大堀相馬焼窯元が土地を離れる無念
原発の影響が懸念されている福島県では、会津塗、会津本郷焼、大堀相馬焼、奥会津編み組細工の4品目が伝統的工芸品の指定を受けていますが、大堀相馬焼の窯元は福島第一原発から20km圏内にあります。焼物は特に、土地によって原料となる土の成分が違うため、他所へ避難していれば当面は新たな製造ができません。江戸時代末期には東北一の焼物の産地であったこの地域も避難指示を受け、工房に近寄れず荒れたままになっているという報道を見ると、生産者の無念さを感じずには居られません。
文化・技術の継承視野に柔軟な支援を
東北地方の伝統的工芸品としてはほかに、岩手県の南部鉄器や宮城県のこけしをはじめ、各地の塗り物や焼き物なども登録されています。ただし、青森の南部紫根染や南部裂織、福島の会津木綿や会津からむし織など、伝統工芸品の指定を受けていない工芸品も多くあります。それらの非指定工芸品についても、今回の震災により従来どおりの製造や、伝統の文化・技術の継承が難しくなっていることも考えられます。どちらも作り手が被災し、従来どおりの製造が難しくなっている状況は想像に難くありません。今回の工芸品に対する支援も、どうか枠組みに囚われず、広く東北地方を支えることを考えながら実施しされることを強く望みます。
東北経済復興の追い風/平泉:世界遺産登録候補へ
折しも、岩手県では5月7日、中尊寺金色堂など平泉の文化遺産がユネスコ諮問機関のイコモス(国際記念物遺跡会議)からの「登録勧告」を受けて、地域の悲願であった世界遺産登録がほぼ確実となりました。この吉報を追い風として、東北経済の復興に弾みがつくものと期待されています。
松尾芭蕉は平泉を訪れた際、「夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡」「五月雨の降(ふり)残してや光堂」の2句を残しました。震災で多くのものが形を奪われたなかでもその姿を留め、地域の人々の心の支えとなっている金色堂の印象と重なっていることに驚きます。
平泉は、藤原清衡公が幾多の困難を乗り越えて創り上げた人と自然が共生する平和の都です。何世紀も越えたいまこそ、清衡公の思いが成就することを願って止みません。
●関連記事:クールジャパン:アニメフェア3兆円獲得へ/文化産業に初の売上高目標設定![2010.12.25配信]
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●関連記事:グラミー賞受賞50年間で3人:ソフトパワーで日本の心の音楽を世界に![2011.1.24配信]
▼関連ページ:オフィシャルサイト「成長戦略ソフトパワー産業の海外展開」
[2011.5.18]
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