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デリバティブ:巨額損失に穴埋め特例融資を!/金融庁:金融機関に行政指導

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1ドル110円台が80円台に
平成22年の外国為替市場は15年半ぶりに1ドル80円台と円高になり、中小企業にも多大な影響を及ぼしました。東京のリサーチ会社によると、円高によって直接的、間接的に業績が悪化、倒産に至った企業が昨年1年間に75件と前年の3.4倍に急増しました。
産業別では卸売業が前年比200%増の39件と最も多く、製造業が同比575%増の27件、小売業が4件と続いています。円高によって倒産増加が急増した要因に、為替デリバティブ(Financial Derivative Productsの略:金融派生商品)を契約した企業が26件あったことも影響があるようです。輸入業者を中心に平成17年~19年の円安の時代に例として1ドル100円で5年物、10年物と長期契約を結んだ場合、現在の80円台では取引額は大きくなればなるほど損失も大きくなります。当時の為替相場は1ドル111円~116円。平成20年11月頃より100円を割り込み、現在の為替80円台は事業主には予測できなかったでしょう。為替デリバティブによって、業績が黒字であっても利益を全て為替で吸収されてしまうどころか、損失が大きくなれば破綻に追い込まれてしまうのです。

為替デリバティブ取引

新規融資と抱き合わせにデリバティブ契約
為替デリバティブ取引は、平成19年9月に全面施行された金融商品取引法に規定されています。詳細な取引システムや多額の損失となるリスクの存在など、販売元の金融機関など十分な説明義務が課せられていますが。同法全面施行前には法令のない取引きが事業主と金融機関などの間で多く行われていたのです。
金融庁や全国の財務局にはデリバティブ取引で損失を被った企業からの相談が寄せられています。
▼金融庁:金融サービス利用者相談室

金融庁によると相談内容は、「勧誘の要請をしていないにもかかわらず、電話や来訪で強引に勧誘された」、「取引の内容を理解せず、また、十分な説明を受けないままに取引をしてしまった」、「リスクの説明がなく、元本割れはしないと言われ契約したが、元本割れした」、「外貨預金のようなもので必ず儲かると言われ取引してしまった」など、いずれも金融商品取引法の規定にある禁止行為に該当するものです。詳細な説明を受けずに抱き合わせで融資をちらつかされ、デリバティブ契約を結ばれた支援先がセントラル総合研究所にもいました。金融庁では、デリバティブ取引は相当程度の専門知識が要求される上、非常にリスクが高い取引のため、仕組みが理解できないときははっきり断るよう呼びかけています。

損失穴埋め融資、数百~数千社規模か/金融庁行政指導
三菱東京UFJ,三井住友、みずほ銀行は、金融庁の行政指導による措置として、為替商品で多額の損失を被った企業に、穴埋めとしての資金や、途中解約のための資金を新規に融資すると報道がありました。為替デリバティブは、昨年11月の国会で企業の多額損失が問題となって、金融庁が実態調査に乗り出していました。同庁の指導は、3メガバンクに対して今の法令で可能な対応策をとるよう求めたものです。報道では、為替デリバティブによって毎月数千万円の差損を出し、途中解約のための違約金が2~3億円かかるケースもあるようで金融庁は異例の対応をとったとありました。3メガバンクでは、業績は良好だが為替損失の大きい企業に、新規融資として資金を供給。融資対象企業は、各行数百~数千社とみられています。金融庁では今回の措置を資金繰りが厳しい企業を支援するモラトリアム(中小企業金融円滑化)法の趣旨に沿うものと位置づけています。

繰り返される被害、法改正:十分なシュミレーションを
デリバティブ取引では、損失を被った企業への損失補填は、金融商品取引法上では禁止行為に当たるため、補てんは新規融資という措置となりました。損失補てんの禁止は、自己の責任において当事者間で契約を締結するため、損失分を販売した金融機関などが補填することはモラルハザードに触れたり、不良債権が増大する可能性もあるとの声もあります。また、想定外の急激な円高で損失を被ったのは、企業だけでなく、個人や地方自治体も同じとの声も。しかし、金融商品取引法全面施行前に、何ら為替知識のない中規模企業事業主に十分な説明もせず、儲かる儲かるといわれ強引に勧誘されればついつい手が出てしまうものです。
新しい金融商品は十分な知識をもって全てを理解、納得し、自己責任の上での契約が重要です。最近ではFX(Foreign eXchange:外国為替証拠金)取引で損失を被った多くの個人が問題 となり、取引上の上限額が新たに決められ法令が改正されました。こと(被害)が起きてから法令がかわる日本。新しい商品、法令ができればこの先どうなるか、十分にシミュレートしてもらいたいものです。最近では改正貸金業法の総量規制で返済できる事業者まで運転資金が借りられなくなり、困ることはわかっていたはずです。

●関連記事:金融庁デリバティブ調査:1万9千社、金融ADRで解決/業績黒字!為替損失で資金難[2011.1.25]
●関連記事:オフィシャルサイト「デリバティブ取引とは・意味」

[2011.1.20]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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