金融庁デリバティブ調査:1万9千社、金融ADRで解決/業績黒字!為替損失で資金難
赤字穴埋め融資、解約資金の指導は出たが・・・
金融庁が大手行や地銀120行に行った聞き取り調査によると、急激な円高、ドル安で多額の損失を被っている為替デリバティブ(金融派生商品)を保有する中小企業が19,000社に上ることが発覚しました。契約数では約40,000件にも及ぶとあります。業績が黒字にも関わらず、多額の損失を抱えたために経営難や倒産に追い込まれる中小企業が今後も増大する恐れが出てきました。
自見金融相は、1月21日の会見で、金融庁に苦情・相談が相次いでいることから中小企業と金融機関が締結した悪影響を調査、「金融機関が自発的に対策を検討するべきことだ」と金融機関に対処するよう述べました。19日の報道では、金融庁は三菱東京UFJ、三井住友、みずほ銀行へ行政指導として為替デリバティブで多額の損失を被った企業へ、新規で穴埋め資金や途中解約のための資金を融資するよう通達が出されたと報じています。各金融機関は金融庁と意見交換を踏まえて取組を開始したようです。
金融庁方針「和解に介入せず」、ADRを活用
三菱東京UFJ銀行は数千社ある対象企業に、「1社1社あたって状況を把握する。場合によっては融資することもある」と聞き取り調査を始めるようです。三井住友銀行は、「すでに行内に横断的なチームを設けて、聴き取り調査を開始しており、相談にも応じている。そのなかで、本業の様子を見ながら融資という選択肢もある」とし、みずほ銀行も「すでに専門セクションを設けて対応にあたっている。また、苦情や紛争への対応セクションとして金融ADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決制度)を1月中にも立 ち上げる」としています。
自見金融相も同21日の会見で「顧客と銀行の紛争に行政が介入のするのは適当でなく、金融ADRによる解決が適当だ」との認識を示しています。
ADR:指定紛争解決機関制度
金融ADRは、平成21年6月の金融商品取引法、銀行法の改正により、金融分野での裁判外紛争解決制度の中核として指定紛争解決機関制度を導入。平成22年10月から金融機関に対し指定紛争解決機関との契約が義務づけられています。簡単に言えば金融商品のトラブルによる訴訟などで、弁護士や司法書士に頼らず、時間やコストをかけず中立的な立場の機関を交え短期間で解決を図るというものです。
ADRによって金融機関・顧客企業相互の和解案
融機関は全国銀行協会や信託協会、日本貸金業協会などのADR(紛争解決)機関と契約締結が義務づけられ、相互解決に向けた和解案を拒否することはできません。「金融商品で説明された以上の損失が出た」、「十分な説明がされずに強引に契約を結ばれた」などのトラブルで損失を被った企業は、ADR機関へ連絡、面談を申し出れば、弁護士、司法書士など専門家によるADR委員が相互の間に入り事情を調べ正当な和解策を提案してくれるでしょう。
融機関は全国銀行協会や信託協会、日本貸金業協会などのADR(紛争解決)機関と契約締結が義務づけられ、相互解決に向けた和解案を拒否することはできません。「金融商品で説明された以上の損失が出た」、「十分な説明がされずに強引に契約を結ばれた」などのトラブルで損失を被った企業は、ADR機関へ連絡、面談を申し出れば、弁護士、司法書士など専門家によるADR委員が相互の間に入り事情を調べ正当な和解策を提案してくれるでしょう。
確実な手数料ビジネスが生んだ為替被害
金融機関が為替デリバティブ関連商品の販売を拡大したのは平成17年からとされています。財務省は平成15年~16年にかけて約34、9兆円のドル買い・円売り介入を実施しており、当面は100円を割り込まないとして長期契約が結ばれました。金融機関では当時、手数料ビジネスの拡大を目指しており、為替デリバティブは確実な手数料収入源として拡販されてきました。
為替デリバティブ問題は、昨年11月22日に公明党、西田まこと議員が参院予算委員で提起されました。「中小企業が金融機関からの執拗(しつよう)な勧めで、通貨オプション取引を結び、急激な円高を背景に大きな損失を受けるケースが増えている」と指摘しました。2ケ月たってからの実態調査も遅く、その対処法までいまだ「金融ADRが適当」と、損失に頭を抱える企業をもう少し考えてもらいたいものです。水面下には、為替デリバティブで損失を被った企業、モラトリアム(中小企業金融円滑化)法でリスケジュール中の企業が100万社を超えています。政府はどこまで金融機関を指導し、企業を支援するのかが今後注目されます。
●関連記事:デリバティブ:巨額損失に穴埋め特例融資を!/金融庁:金融機関に行政指導[2010.1.20 配信]
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[2011.1.25]