低賃金から脱却「世界の工場」中国:所得4倍計画に産業ロボット導入で対抗
経済同友会「円高、海外移転、割り切る」金型組合18社、集団でインドネシアへ
経済同友会の長谷川幹事長は9月5日の講演で、円高や電力供給不足の影響で企業が海外へ進出。空洞化する国内産業について「内需主導で経済を成長路線に向かわせるのは難しい。企業がやるべきことは成長のパイを日本に持ち帰ることだ」と述べました。企業は海外で稼いだ収益を日本へ持ち帰り納税し、それをどのように配分するのかは政治と行政の役割と示しており、「そう割り切らざるを得ないところまできている」と指摘しました。
しかし中小製造業にとって、海外進出は決して低いハードルではありません。進出対象国の文化や経済、販路、雇用、生活など多くの不安材料が頭をよぎり、なかなか積極的には行動できないものです。報道では、富山の金型メーカー18社が加盟する「富山県金型協同組合」がインドネシアに工場を建設し、集団で海外進出するとありました。加盟企業は、自動車の内装部品の金型を得意とし、現地部品メーカーに金型を売り込みを目指しており、中小単独では難しい海外進出を組合ごと移転と新たな取組みを見せています。
国内製造業には魅力!韓国はFTAで競争力向上、台湾は日本専用工業団地を整備
アジア諸国からは日本の製造業誘致に滑車がかかり、経済特区など日本企業に対し、税制や雇用など優遇策や緩和策が設けられる国があります。日本に近い韓国や中国、台湾など国や行政挙げての誘致活動は、国内製造業にとっては魅力的なもの。FTA(自由貿易協定)が進む韓国は、相手国への輸出の際の非関税、競争力向上をアピール。台湾では、日本の中小製造業向けに工業団地を整備する方針を固めたことが報道で明らかになりました。
アジア各国では、自国企業の競争力向上に日本の製造業との連携を模索。日本企業は円高、電力供給不足で海外に魅力を感るなど需給のバランスは問題ありません。台湾当局は、8月末に230人の官民共同の日本企業誘致団を東京、大阪に派遣し、日本企業に特化した工業団地を整備、通訳も用意、行政手続きも簡素化とアピールします。
中国政府系工商業連合会:最低賃金年15%ずつ引き上げ
「世界の工場」と言われるほど各国工場が集まる中国は、13億人を超える人口から大量の労働力により膨大な貿易黒字を生み出し、米国に次ぐ経済大国にまでのし上がりました。人件費の安さを魅力として日本企業も数多く進出していますが、昨年から始まった賃上げを背景に、産業ロボットの導入やインドネシアやベトナムなどASEAN(東南アジア諸国連合)など新興国へ移転する企業も見え始めました。
中国都市部の最低賃金は今年、各地で20%前後上昇。政府の経済団体・中華全国工商業連合会では、最低賃金を平成32年まで年15%ずつ引上げ続け10年間で4倍にする「所得4倍計画」を提案しています。最大の売りであった人件費の安さが消滅すれば機械化や、さらなる安さを求め他国へ移転も視野にいれなければなりません。
鴻海精密工業:100万人の賃上げに対抗、100万台の産業ロボット導入
米アップルを顧客に持つ電子機器製造委託サービスの鴻海精密工業は、広東省深センを中心に100万人の従業員を雇用しています。同社では、より安い人件費を求め内陸部にも工場を増設しましたが、深センが賃金引き上げで中国で最高水準となったことを受け、今後3年で従業員に匹敵する100万台の産業ロボットの導入を決めました。100万人の年間人件費160億元(約1,920億円)が10年で4倍になれば640億元(7,680億円)に膨れ上がります。
中国政府「安い賃金ではもう作れない」!
賃金引き上げの対応策として産業ロボット導入。もはや大量労働力、マンパワーに頼る中国進出が成立しなくなっている感があり、中国政府の「安い賃金ではもう作れない」という声にしか聞こえません。日本は歴史的な円高が続きで、製造業は利益が圧迫されており、中小製造業においても海外への拠点移動が視野に入り始めていることでしょう。JETROなどの国家機関が担う役割は、お役所、役人仕事の領域を超え、中小企業を先導する「重責」の域にあると思います。
[2011.9.9]
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