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【雑誌寄稿】進化の行方/著作物産業、紙から電子書籍、盗作、コピーなど消費者の意識向上必要

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進化の行方

戦前からの再販制度を21世紀まで引きずっていた著作物を扱う産業に、まったく新しい流通革命が起きている。「出版社には紙の本のプロはいるが、電子書籍のプロは少ない」作家の村上龍氏はそう語り、電子書籍の制作・販売会社を設立した。
紙の手触りやインクの香り、陳列された棚から本を探す楽しみなどを奪われては味気ないという意見も、もはや古いタイプの本読みのノスタルジーに過ぎないのだろう。確かに、流通コストがかからず、欠品の心配もない。消費者にとっては良い作品を安く読めるうえに、紙を使わないことでエコにも貢献できるなど、いいことずくめの電子書籍の普及に期待が膨らんでいることは言い逃れできない。

しかし、事業再生の現場にいる人間としては新たな心配も生じる。書籍が電磁的媒体で配信されることにより、年々激しさを増している書店業の淘汰に、一層の拍車をかけることは間違いない。既に音楽産業ではレコードからCD、データダウンロードへと変わり、「レコード店」の看板が一部のレトロ嗜好のマニアのためのものとなってしまっているように、出版業界でも同じ様な動きが考えられる。

電子書籍以前から、Amazonや楽天ブックスをはじめ、取次直営のBoople、本やタウン、国内最大手の運輸会社と提携したブックサービスといったオンライン書店の台頭や、書籍以外の商品も扱う複合書店、都市型有力書店の広域展開に伴い、地方の中小規模の書店は確実に打撃を受けている。加えて電子書籍の普及を受け、多くの消費者の流出は避けられない。出版不況の深刻化に伴い、「大手」「老舗」と呼ばれて地元のシンボルとなっているような書店の閉店という報道も散見される。便利さと引き換えに失われるものは、温もりや情緒ばかりではなく、雇用や地方の税収など、もっと生々しいものかもしれない。

加速する電子書籍市場の拡大を受けて、大手書店では電子書籍を紙に印刷・製本して販売するサービスを開始するという。出版形態の多様化に合わせて、購入方法も幅広く変化しているのだ。元々は紙媒体であったものと考えると本末転倒とも受け取れるが、絶版本の復刊や希覯書の販売などにも活用されれば、新たな経済効果も期待できる。
一方で、データの違法コピーによる「デジタル万引き」なる問題も深刻化している。経済の好転のためには消費者の経済参加意識も向上させなくてはならない。
2011年2月号に寄稿

[2011.01.06]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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