(2)会社分割・事業譲渡で次世代に事業継承
私がこの仕事を始めた頃、中小企業の事業再生スキームといえば、経営者の私財提供によって経営責任を全うするケースがほとんどでした。それは経営者の自己破産、一家離散を意味するものです。まあ、今でもこのスキームは残ってはいますが。
本来、法律・税務面からバックアップすべき弁護士や税理士の先生方も当時は「再生」に関してはあまり得意ではなかったようです。やむをなく破産をすすめてしまうことも少なくはなかったようで。残念なことです。
その後、社会が「再生型」へと大きく変わってきたのが、民事再生法の誕生を受けて2003年に大企業の再生を手がける産業再生機構が設立されてからです。法律の整備や再生スキームの成熟によって債務者主導の再生も認知されてきました。
事業継続を前提に経営者の生活や従業員の雇用を維持し、経営を見直し、不採算部門を整理する。このような現実的な再生スキームを債権者も認めるようになってきました。そして、数年前からは金融機関頼みの融資ばかりでなく、再生ファンドなど直接金融のスキームも数多く誕生し、再生のための資金確保も進んできています。
ある関東のメーカーでは、会社分割、事業譲渡によって不採算部門を切り捨て、新工場設立のためのファンドを組むことに成功しました。金融機関にとって正常な融資先確保は至上命令。企業を再生させ、正常な融資関係を結ばなければ日本経済復活はないと納得したことで「債務者主導の再生」が可能になってきました。
100年に一度と言われるデフレ社会の今、事業全体で勝負するのではなく、不採算部門を切り捨て、身軽となって経営のスピードを上げることがポイントです。その決断を一刻も早くしなければ、事業も経営者も生き残ることは出来ません。
資金繰りについてもデフレ期をノウハウとして、新たに追加融資をするのでなく、今の債務を圧縮することが第一優先になり、事業再生に踏み切るチャンスです。金融機関は交渉相手と割り切り、リスケジュールやオフバランス化、債務圧縮交渉などの対策を実行し、甦ってこそ金融機関との健全な関係が始まります。<つづく>
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