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改定貸金業法の副作用、9兆残高減!消える貸金業

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過去5年で最多、最高額
帝国データバンクによると平成21年の貸金業者の倒産は平成19年の16件から上昇傾向にあり24件に。負債総額は平成18年の774億8千7百万円から大幅1,090%増の8,443億1千万円(負債総額1千万円以上、法的整理による倒産のみ)で過去5年で最多、最高額となりました。中でも中小企業向け事業者金融大手SFCGとロプロの2件の負債総額は8,000億3千万円で全体の94.8%を占め残り22社の構成比は5.2%と負債総額は大型倒産によるものでした。
貸金業者の規模別を見ると大企業といわれる貸金業者は17.8%(資本金1億円以上)、中堅企業が14.9%(資本金5千万円以上1億円未満)、残りの67,3%が資本金5千万円未満の小規模零細企業、個人となっています。すでに大手、中堅貸金業者の倒産報道から今後は、規模の小さな貸金業者が連鎖倒産に追い込まれる実態が見えてきます。

13社に1社しか生き残れない
金融庁のデータによると貸金業者数は昭和61年の47,504社をピークに減少、平成22年5月時点で3,758社にまで減り、24年間で約13社に1社しか生き残らなかったという計算になります。

100716_1.gifいかに貸金業界が厳しい状況下にあることがわかります。プラス要素の新規貸金業参入条件も、資本金(純資産金)2千万円から5千万円に引き上げられ、さらに法令遵守のための貸金業務取扱主任者の配置の義務化と、まるで新規参入を拒むような法案です。
今後もこの法案によって上限金利の引き下げによる減収、、年収の1/3までの貸し出し総量規制に追い討ちをかけるように、過払い金の返還による収益の悪化など貸金業界の淘汰、整理がスピードを増すことになると予想されます。

予期していたことが起きている
貸金業者(事業者金融、消費者金融)の貸付残高推移を見ると5年前の16年3月に46兆8,040億円(金融庁データ)だった貸付残高は平成21年3月には37兆8,467億円(同)と減少傾向にあり、平成22年は法案によってさらなる減少が予想されま す。
貸し手も困惑、借り手も困惑という状況は施行前から予想されていたこと。国会で「全会一致」で強引に可決された改定貸金業法の副作用が今起きているのです。

市場を新興国へ
消費者金融の大手プロミスが中国の消費者金融事業の認可を取得、今月中国本土へ進出します。日本の消費者金融が中国本土に進出するのは初めてのことで、貸金業者には魅力のなくなった日本市場を捨て、高度成長中で資金需要の盛んな中国市場で金利40~50%といわれている収益確保に乗り出します。厳しい状況下の日本市場を捨て生き残りをかけた戦略です。
中国人観光客による日本市場への消費、日本企業への中国資本投入、そして今、日本の不動産が中国で売買される時代。やはりキーは中国をはじめとする新興国のようです。

日本の経済、中小企業のために
中国には消費者金融という業態がありません。プロミスの中国本土進出はまさしくバブル期にある中国経済、旺盛な消費欲を見越してのものでしょう。反対に日本の市場は法律によって厳しくなり、日本の貸金業者は市場を新興国へシフトしはじめています。中小企業が生き延びるために利用していた商工ローンは壊滅していて、いざという時のつなぎ融資ができないのです。
民主党が連立模索や組閣に時間を費やしている間にも貸金業者はますます消えようとしています。5年で9兆円もの貸付残高減では、生活資金、中小企業のつなぎ融資は望めません。地域企業のために小口金融・商工ローンなどを含めた金融システムを見直して、経済大国日本を復活させて欲しいものです。
[2010.7.16]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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