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破産急増:円滑化法で不良債権5兆円、100%保証代弁4,000億円は少い、多い?

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倒産件数:17ケ月ぶりに前年同月比増加
平成20年、リーマンショック後の金融危機による景気低迷で政府は、中小企業の厳しい資金繰り支援に中小企業円滑化(モラトリアム)法や、信用保証協会100%保証の景気対応緊急保証(緊急保証)などの金融支援によって中小企業の倒産を防いできました。モラトリアム法では、リスケジュール(条件変更)によって昨年9月までに110万件以上もの条件変更の申請があり、隠れた不良債権が5兆円との報道がありました。国が保証をする緊急保証の代位弁済額も累計で3,624億円。長期化された政府の金融支援によって中小企業は、「危機に対応する措置」から「延命する措置」に変りつつあると報じています。
帝国データバンクが2月8日発表した今年1月の倒産件数は、976件で17ケ月ぶりに前年同月比2.8%と増加しました。モラトリアム法が施行され14ケ月が経過し、リスケジュール期間が終了した企業が、事業の継続を諦めたと考えてもおかしくない状況です。残された金融機関からの借入れは、信用保証協会が企業の代わりに一括返済する代位弁済され、その額は、いづれ国民の負担になりうるのです。

簡素化法人少額管財手続き:破産申請件数増加
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東京商工リサーチが2月8日に発表した「企業倒産における破産動向調査」では、倒産に占める破産の構成比が71.9%と過去最高だと言います。破産申請をした企業は、負債額が5,000万円以下、従業員5名以下の零細企業が中心だったと言います。企業が経営難に陥り、事業の継続が不可能となった場合、会社更生法や民事再生法を適用して復活を目指すことがあります。一方、破産申請は、特別清算と同様に事業の継続、再建を断念してしまうのです。急増する破産申請は、平成12年、東京地裁で企業の破産手続きを大幅に簡素化した「法人少額管財手続き」が、全国に拡大したからでしょう。簡素化するのは「事業断念手続き」でなく「事業再生手続き」であって欲しいものです。
事業再建を断念した企業は、会社分割や、新会社の設立で新成長戦略産業へ転業、参入していればいいのですが。法務省が1月20日公表した商業・法人の「平成22年11月登記統計・統計表」によると、株式や特例有限、合名、合資、合同会社の登記件数は、88,651社と前年同月の90,350社から逆に減少していました。事業再生を目的とした会社更生法や民事再生法が2ケタで減少するなか、破産申請は増え続け、零細企業から中小企業へ拡大の懸念もあるとしています。

モラトリアム申請企業:3分の2が再リスケ!
報道では、中小企業の延命措置と示されるモラトリアム法のリスケジューについて、「3分の2は再び申請する企業」とメガバンクのコメントを報じています。一度、リスケジュールを申請し、猶予期間中に経営改善計画がすすまず再度、条件変更を申請するのでしょう。金融庁では、同法を1年延長、平成24年3月までとしたが、猶予期間に経営相談や中小企業への指導、事業再生などコンサルティング機能を発揮。事業を継続できる健全な経営に繋げる流れを定着させたいとしています。セントラル総合研究所にもリスケジュールを申請し、事業の復活に向けて支援者、コンサルタントともに何度も打ち合わせを重ね、事業再生プランを進めていますが、金融機関から同様のアクションはないようです。
政府は100%保証の緊急保証も48種に限り今年9月末まで延長し、中小企業の資金繰り支援を継続しますが、金融機関としては100%、国の保証が得られる訳ですから何のリスクもなく中小企業へも融資が行われるでしょう。過去、緊急保証は平成10年から12年にかけて実施された同様の保証制度で代位弁済が融資総額29兆円の約1割、2兆6,000万円にも上った経験があります。現在の緊急保証の融資総額は27兆円。半年、緊急保証が延長されることで増加が予測され、代位弁済も4,000万円弱ではすまないでしょう。

急増する企業、合弁・買収
産業界では新日本製鉄と住友金属鉱業の大型合併が話題となっていますが、合併・買収などのM&Aが昨年から急増しています。同業者同士や異業種、海外企業とのM&Aによって、新たな市場や、新規取引先の確保に協力しなければ萎む国内市場で事業拡大は図れません。M&Aや新成長産業への転業、成長力ある市場への参入など、リスケジュールや緊急保証の支援で時間のある今、黒字を迎えるための健全な経営体制に事業を改善させなければなりません。
横並び文化の日本は、「よその企業がリスケジュールを行えば、我が社も」、「よそが資金調達をすればうちも」と政府の金融支援に甘えている中小企業が存在しているのも事実です。報道では、東京商工リサーチの友田情報副本部長が「支援策は当初の目的を果たしており、続ければ改善の見込みがない企業も延命させることになりかけない」と報じています。

すぐそばにある新しい市場、改善計画が明日を創る
「よそが倒産した」ならば「さて、うちも倒産」と、簡単には行かないはずです。後に後悔が残らぬようじっくりと改善計画、市場調査をして現業を見直し、一工夫した事業をこれからも継続して活況に湧く市場で生き残った企業となりたいものです。
 
[2011.2.12]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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