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M&A実行数過去最高:円高メリットで海外の資源・エネルギー確保/中小企業にも波及

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円高の今、海外へ投資で
110105_1.jpg日銀は12月17日、平成22年7月~9月期の資金循環統計(速報)を発表。民間企業の手元資金を表す「現金・預金」が9月末時点で205兆9,722億円と前年同月比5.0%増加。統計で比較できる昭和55年以来、過去最高額を更新しました。景気低迷で先行き不透明な市場に企業は、設備投資や雇用など資金用途をより一層慎重とし、現預金を蓄えたままとなっているようです。この状況は欧州企業でも起こっており、7,000億ドル(約59兆円)近い手元資金を企業は蓄え、各社経営陣に自社株の購入促進の要求が高まっているようです。
日銀が9月に2兆円を使い市場介入を行った際、為替相場は2~3円ほど円安に向かいました。仮に205兆円の1割でも企業が海外へ投資すれば、為替効果はなお一層期待できるでしょう。円高メリットで買収によって事業拡大が期待できる海外企業を今、安く傘下にすることができるのです。

資源・エネルギー企業買収3、5倍に
日本の複数の商社による海外の資源獲得を目的としたM&A(合弁・買収)が今年、件数、金額ともに過去最高を更新しそうだと報道がありました。対象となる資源・エネルギーは、レアアースなどの鉱石や天然ガス、油田などで資源のない日本には不可欠なものです。日本は技術立国であり、これら資源・エネルギーに代わる原材料を技術力でカバーしてきました。代替えになる素材の開発や新しい素材。エネルギーには原子力発電、太陽光発電と今現在は海外に頼るしかないものの、これらの技術が全国に普及されれば海外に頼ることは減少するでしょう。
日本企業の海外資源・エネルギー企業への買収は、今年30件と平成19年の30件を超え、金額も前年の約3、5倍の8,606億円となりました。大手商社6社は資源・エネルギー部門で平成23年度3月期に前期の約2倍の計8,000億円の投資を見込んでいるようです。

政府、輸入金融・投資金融支援
海外からの資源・エネルギーの輸入は、日本の経済を発展させるためにも長期的に安定して輸入契約を締結する必要があります。電気自動車や携帯電話のモーターに必須のレアアースは、中国一国に頼り、輸出が制限された9月には、世界中の自動車、電機産業などが危機的状況に陥りました。中国は来年、日本へのレアアースの輸出を35%削減と決めましたが、9月の教訓から日本はすでに他国での開発、代替技術に乗り出しているため、さほど影響はないようです。
110105_2.jpg政府は、長期的な資源の輸入を後押しすべく、日本政策金融公庫の海外部門を担うJBIC(国際協力銀行)より、輸入金融や投資金融の支援を積極的に行っています。天然ガス(シュールガス)の契約を結んだ三菱商事では「投資先の政府による没収や外貨規制などのリスクがカバーされているため投資に踏み切れる」と報道があるように、資源・エネルギー確保の契約締結には政府のバックアップは欠かせません。

中小企業では事業拡大に!
中小企業にとってのM&Aは、主に事業承継や事業拡大で使われる場合が多くあります。中小企業は合弁・買収によって、事業の継続や従業員の雇用確保、事業拡大と一社でできなかったことを実現します。最近では景気低迷で本業の業況悪化から、M&Aで新しい成長産業への参入や、転業なども見られます。政府の後押しで大企業が海外資源・エネルギー獲得に乗り出すように、中小企業は、相手が異業種やライバル企業であってもM&Aによって生き残り、事業を拡大するべきでしょう。
平成22年は、本間ゴルフやレナウンなど中国マネーによる日本企業への買収が数多く目立ちました。その数は12月27日現在、平成21年より11件多い37件で年々増加傾向にあります。日本の技術力、ブランド力欲しさの中国企業の「日本買い」は、今のところ両者ともに相互利益になっているようです。中国企業は、買収によって日本の繊細な経験に裏打ちされた技術力で作られたクオリティの高い生産品を、粗悪なコピー商品としてしまって製品化し、日本ブランドを汚さないで欲しいものです。

[2011.1.5]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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