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ベンチャー企業が海外で上場、上場廃止続々で新ジャスダック市場縮減か

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ベンチャー投融資額4年で7割減
日本のベンチャー企業の発展を支援する経済産業省の認可財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(東京都中央区日本橋蛎殻町1-16-8 理事長:市川 隆治)の「平成22年ベンチャーキャピタル等投資動向調査の結果(速報値)」によると、平成21年度(平成21年4月~平成22年3月)、ベンチャーキャピタルなどによるベンチャー企業への投融資額が前年同期35.9%減の875億円、投融資先社数が同比23.4%減の991社であったと公表しました。
101125_1.gif投融資額の減少は3年連続でピークであった平成18年度の2,790億円から68.6%減少、平成10年以降初めて1,000億円を割りました。新興市場や景気の低迷による投資先の業績悪化や、増加傾向にあるファンドの投資資金回収不調など、投資力の低下でベンチャーキャピタルは厳しい経営状況が続いています。

製造業に続きベンチャーまでもが海外へ
実績や資金力のないベンチャー企業は、成長のための資金調達の場として新興市場へのIPO(新規株式公開)によって資金を確保します。平成22年IPOした企業は予定も含め22社で、通年でも20数社程度とめっきり少なくなってしまいました。主な要因として株の取引の低迷が挙げられますが、大企業同様の内部統制や、上場維持費の負担、上場の際の初期費用増加や手続きの複雑さが、新興ベンチャー企業にとっては負担が多すぎるという点もあります。
10月にジャスダックとヘラクレスが統一された大阪の新ジャスダックでも上場の際には初期費用が840万円、上場の相談や数多い提出書類にヒアリングと、とても円滑に上場できるとは思えないシステムです。社会的な認知度と信用度、ブランディング、資金調達など上場にはメリットがあるものの、新興市場なのに敷居が高すぎるようです。
次に、上場したばかりの新興企業の中には、粉飾決算や予想利益を大幅下方修正し、上場廃止になる事態が続いた事で、監査法人、主幹事証券、取引所における上場審査が非常に厳格になったことも挙げられます。
審査のハードル、費用、上場までの手間と時間を考えれば香港やシンガポールなど成長の高い新興国へベンチャー企業が上場しているのが現状のようです。

ジャスダックETF、12月上場JASDACーTOP20
ジャスダックは代表的な20銘柄で構成する株価指数「JASDACーTOP20」に連動した上場投資信託(ETF)を12月3日上場します。ETFは少額、10口から売買する事ができ、投資銘柄を選定する手間も省ける事から個人投資家が参加しやすいというメリットがあります。大阪証券取引所の米田社長は「ジャスダックの魅力創出策の一つ。投資家が入りやすくなる仕組みを考えたい」とコメントしています。

少額投資に手数料無料で市場活性化なるか
インターネット証券大手の楽天証券と松井証券は11月17日、ジャスダックETFの取引手数料全額を現金で返還し、事実上無料にすると発表しました。また通常、145~1,277円かかる手数料を楽天証券はETFが上場する12月3日から来年1月末まで、松井証券は来年6月末まで期間限定で手数料無料となります。投資家にとって少額での投資、手数料無料でジャシダック市場が活性化されるか注目です。

最近の傾向、MBOで上場廃止へ
「アフタヌーンティー」などを展開するサザビーリーグが11月19日、MBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)を実施、上場を廃止すると発表がありました。同じく中堅出版社の幻冬社も2日に発表しています。企業の収益が低迷する中、株式の非公開化で中長期の事業改革を進めるようです。上場廃止は経営判断が迅速に行え、手間もコストも削減する事ができるメリットがあります。経営と資本の一本化の流れは今後も起きてくるでしょう。資金に余裕が生まれれば上場する必要もなく、上場がステータスの時代ではなくなってきているのかもしれません。

新興市場は玉石混交!
米国NASDAQにしても元来新興市場は、何らかの原因ですぐに破綻する会社もあれば、爆発的成長のポテンシャルを持った企業も存在するのが当然です。このようなリスクもあれば将来が楽しみな面もあります。投資家は一定のリスクを加味しましょう。新興市場に上場した企業コンプライアンスばかりを強めて市場本来の意義や役割が損なわれることになってはいけません。

考えると新興市場への投資家の引き込みは、小口売買や手数料無料化ではありません。報道で、上場のデメリットばかりが紹介されてしまっては、上場を目指すベンチャー企業出てきません。市場そのものの、今のシステムが見直されなければ企業や投資家に対して新興市場の魅力は保てません。官民識者による魅力ある市場になるために試行錯誤を繰り返し、海外の新興市場に負けないマーケットを日本国内に作り上げてもらいたいものです。

[2010.11.25]

 

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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