デフレで赤字申告74,5%!『総合特区』成長分野の法人優遇、静かに進む「成長戦略」
申告総額11年前水準に落ち込み
国税庁によると平成21年度(平成21年4月~平成22年3月)の企業の決算について、平成22年7月までに税務申告をした278万6,000件のうち、74.5%にあたる207万6,000件が赤字申告であったことがわかりました。長い景気低迷による業績の悪化などが影響しているようで、前年度繰越欠損金を除いた単年度だけを見ても赤字申告は53.7%と、昭和42年、統計公表以降、最も悪い数字となりました。
平成21年度の申告所得の総額も、前年度比10.9%減の33兆8,310億円で3年連続の減少と公表しています。申告所得総額がピークの平成18年度の57兆828億円から比べると平成21年度は40.7%減と、平成10年度(11年前)の33兆7、837億円の水準にまで落ち込みました。
総合特区:設備投資、研究開発で法人税控除
長引くデフレや急激な円高で輸出産業は海外へ拠点をシフト、そこに関わる関連産業までもが海外へ引っ張られるようにシフトし始め、国内市場の縮小はより加速した感があります。
10月25日に政府が新成長戦略の柱として創設する「総合特区」について企業への税制優遇案が示されました。「総合特区」は規制緩和と組み合わせ行われるのが特徴で成長分野である医療や環境、農業など特区内で事業を行う企業に設備投資額の一部を法人税額から控除したり、研究開発費の控除限度額の拡大などを実施するようです。特区内限定で企業活動の自由度を高め、国内外からの投資を呼び込んで経済活性化につなげるとしています。
今回の措置は特定業種を対象に控除で税制優遇されるもので、法人税引下げや全企業を対象にした優遇案は年末にかけて調整していくようです。税制優遇、規制緩和決定には、もう少しスピードを加速させて欲しいものです。
財務省総務省:法人税率5%下げで2兆円の減収
10月21日財務省と総務省は、政府税制調査会で経済産業省が要望している法人税率5%が引き下げられた場合、国税や地方税を併せ約2兆円の税減収になる見通しだと示しました。減収額分の財源確保にナフサ(石油製品)などの案も浮上しているようですが政府内で意見が分かれているようです。
政府は平成32年を目標に新成長戦略構想を持っており、この特区や法人税引下げもその構想のもと進められているようです。しかし中小企業の現実は、年末のボーナス資金など資金繰りがさらに悪化する企業もあると予測できます。法人税5%引き下げに目標としている中国、韓国並みの水準にするにはあと何年かかるのでしょうか。
法人税優遇:空では規制緩和
新成長戦略の工程表(2010年度)の予定事項として、10月25日、日米両政府は両国間の空の規制緩和、航空自由化(オープンスカイ)協定を正式に結びました。2国間の路線や便数、航空会社などが自由に決められるようになり、首都圏を除いてオープンスカイに合意しているアジア諸国とも平成24年まで完全実施の方針、日本の空の自由化の幕開けです。観光客増大が見込まれる韓国や台湾、中国などからの訪日で観光産業には明るい材料といえるでしょう。
一方、今後のライバルは国内だけでなく海外の航空会社、さらにこれも新成長戦略の予定事項として、LCC(Low-Cost Carrier:格安航空会社)が日本の空へ参入を果たすのは確実です。規制と発着枠に縛られ、守られてきた日本の航空産業も、規制の緩和で一層競争が激しくなります。会社更生法手続き中の日本航空も生き残りのため、歴史やブランド、技術を次世代に残すために、時に事業規模縮小も必要なのです。独自の特徴を生かしてアジアへ、海外へ羽ばたいてもらいたいものです。
静かに、着実に成長戦略がすすんでいる!
円高問題や尖閣問題、レア・アース問題等に隠れて、菅政権のゴタゴタで政府批判のみが目立ちがちですが、羽田の国際化、成田の発着枠拡大、LCC誘致、外国人旅行者の拡大策、医療ツーリストの拡大・推進策等々は、新成長戦略に基づいて着々と実行されています。このことは、今は実感がないかもしれませんが、近いうちに必ず私たち中小企業を含めた事業法人にチャンスを提供します。
マスコミ主導の目に見えがちな現象だけにとらわれず、近い将来のビジネスチャンスを逃さぬようにしっかりとアンテナを張っておきましょう。
[2010.10.28]
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: デフレで赤字申告74,5%!『総合特区』成長分野の法人優遇、静かに進む「成長戦略」
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.h-yagi.jp/mt5/mt-tb.cgi/196
コメントする