中小企業融資 新法「事業性融資推進法」成立
「個人保証に頼らない」 新興融資へ120年ぶり新担保法案
令和6年6月7日、企業の技術力や成長性といった事業価値を担保に融資ができるようになる新法「事業性融資推進法」が成立しました。同法は、担保登記システムなどの関連する法律の更改を経て2年半以内に施行されます。最大のポイントは、企業の持つ事業価値全体に担保権を設定できる「企業価値担保権」を新設したことです。これは実に約120年ぶりに融資に関わる法律上の新たな担保権が生まれたことになります。
資金調達の多様化
一般的に銀行など金融機関が企業に融資する場合、返済されないリスクに備えて担保や保証をとります。経営者個人の資産が対象の経営者保証を利用したり、企業が持つ不動産を担保にしたりすることが一般的です。また在庫や売掛債権など「動産担保」と呼ぶものも登記することで担保になります。
これらの担保は企業が傾いたときに企業活動に欠かせない事業所や生産設備のある工場を失いかねず、企業再生の足かせになって、再建が出来ない主な要因になっていました。また、新規のスタートアップ企業などは担保提供として差し出せる手持ちの資産が少なく、金融機関からの新規の融資を受けにくいという課題がありました。
新しい概念の企業価値担保権を使えば、担保を持たないスタートアップ企業でも運転資金を調達する道が開けました。金融機関による経営者の個人保証原則が緩和され、金融機関融資のあり方が抜本的に変わる可能性も秘めています。
金融機関の姿勢
問題は、金融機関がこの新たな仕組みをどこまで活用できるか。全資産を担保にとるため、管理のためのコストが高くなり、その分貸出金利が高くなるという可能性も出てきます。
みずほフィナンシャルグループは部門ごとにどのような活用が可能かアイデア会議を開きました。受託者が担保権の管理や保全を行う担保権信託など、類似の手法をみずほ信託銀行が手がけています。
三井住友銀行は外部講師を招き、行内で勉強会を開催しました。実務上の論点を洗い出すなど準備を進めているようです。
現実的な課題
金融機関にとっては事業の目利き力を見極められるかという課題が残ります。
地銀や信用金庫の多くが融資する際に使うのは、企業の貸借対照表や損益計算書、調査会社の評価を機械処理にかけ、評点を出して債務者区分する方法が一般的です。
事業性融資推進法での企業価値担保権が導入されれば企業のノウハウや技術力、将来性など財務諸表に表れない将来の価値を行員が見極めて評価する必要があります。金融業界では特に将来キャッシュフロー(CF)の現在価値をはかるディスカウントキャッシュフロー法(DCF法※)がよく使われますが、地銀や信用金庫などではなじみは薄く、どこまで対応できるのかは今のところ未知数と言えます。先ずはメガ銀行の動きをみてから、というのが地銀や信用金庫など実態でしょう。
※ディスカウントキャッシュフロー法(Discount Cash Flow、DCF法)
企業価値評価の代表的な算出方法の一つ。企業が生み出すキャッシュフローに注目して企業価値を算出する方法であり、具体的にはフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算出します。
簡易例)金利3%、1年後の100万円の現在価値をDCF法で計算すると
100万円÷(1+0.03)≒97万874円 現在価値は97万874円
バスに乗り遅れるな
このように金融行政も大きく動き出しています。新法の施行は冒頭ご紹介したように、担保の登記システム更改などを経て2年半以内に施行されます。
まだ先の話のようですが、2年半以内はアッという間に時は過ぎます。
企業価値を高めるためには何が必要か。
自社の強みは何か、収益の源泉は何かといった洗い出しや、将来価値を現在価値に割り引く”ディスカウントキャッシュフロー”といった考え方も理解しておく必要があるといえるのではないでしょうか。
これからの中小企業
新法施行で金融機関担保の考え方に新しい概念が入ると、企業経営の考え方も変わってきます。すでに優良企業が不動産を資産として取得する時代は終わりを迎えつつあります。金融行政の通達や情報をいち早く取得して、これからの経営に活かす時代がすぐそばまで来ています。経営者はアンテナを上げて情報収集に邁進しましょう。
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