金融円滑化法(リスケ)後破綻93件、延長・廃止、賛否両論:鍵はモラルハザード

リスケジュール延長正式発表は?
平成21年11月4日施行されたモラトリアム法(中小企業金融円滑化法)が施行されて1年が過ぎました。金融庁が11月26日公表した「中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況について」によると、中小企業が金融機関などにリスケジュール(返済猶予)を申請した件数は9月末時点で1,114,889件(速報値)で、実行されたのは979,693件、審査中が67,999件とありました。

効果のあったモラトリアム法案
中小企業では、この金融支援策によって企業倒産が平成21年9月以降15ヵ月連続で前年同月を下回り、同法の効果の現れととれます。同法は平成23年3月で終了しますが、11月30日付けの日本経済新聞では「平成24年3月まで延長」と報道されたものの自見金融相からの正式発表は未だ聞かれません。
効果の反面「倒産の先送り」とも揶揄される同法の延長に関して政府は12月6日、各金融機関の代表を招集した意見交換会を開きました。自見金融相は「延長も視野に検討している」と意見する一方で、金融機関側からは「延長する場合は借り手のモラルハザード(倫理の欠如)を防ぐための適切な見直しが必要」との意見が相次ぎました。
リスケジュール後倒産、66%増大
中小企業は本来、モラトリアム法で与えられた猶予期間に事業を立て直し、黒字経営への事業改善計画が必要ですが、意見交換会では「2度目の条件変更を要請する例もあり、経営状況は改善していない」と小川全国地方銀行協会会長(横浜銀行頭取)が強調。一部だけとはいえ、私どもセントラル総研に相談にこられる経営者も同じです。これが返済猶予期間中の中小企業の実情のようです。
帝国データバンクが12月8日公表した「第2回返済猶予(リスケジュール)後倒産の動向調査」によると、平成22年1月から11月、リスケジュール後に破綻した企業は93件と前年同期の56件から66.1%増と大幅に増えています。金融機関などへの負担が軽減されて一息ついてしまい、経営改善を計画通りに実行出来なかったのでしょう。景気の影響もあるとはいえ残念な結果となってしまいました。
C/F経営で破綻を回避 2割が該当
93件の原因をみると、構成比79.6%の74件が不況型倒産となっています。リスケジュール後に一時的にキャッシュフロー(C/F)を立て直したものの、本業の業績が行き詰まってしまったものです。一方で2割の企業倒産の原因は不況に関係なく設備投資や経営計画の失敗が原因での破綻と推測できます。すなわち破綻企業のうちキャッシュフローさえしっかり把握していれば破綻を回避できた企業が2割あったのです。

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【参考】設立4年、年商46億円のベンチャー物流会社が破綻のケース
売上げが上がる一方で物流センターなどの設備投資に借入金が膨らみ、第1期には3,200万円だった借入が第4期には約25億2,300万円に膨張。設立したばかりの企業にこれだけの融資を金融機関がするはずもなく、関連会社が代わりに短期調達で融資を受けていたと言います。その結果平成22年1月には、金融機関への月次返済が約5億円にも達し、事業は自転車操業状態となり5月にはそれも限界を迎えました。このケースを分析すると、キャッシュフローさえしっかり把握していれば法的処置する必要はなかったでしょう。
営業、技術、そして財務把握
中小企業経営者は、どの程度キャッシュフローを把握しているでしょうか。残念なことですがほぼ皆無が今までの経験からの答えです。「売上げがあるのに金がない」が経営者の言い分で財務は、「経理や会計事務所に任せている」が実情です。売掛金はあるものの回収が遅れたり、在庫があっても不良在庫だったりと、赤字経営は無論、黒字経営でも破綻は現実的にあるのです。
キャッシュフロー経営とは、現金の流れを管理、入金と出金の増減を注視して、常に現金を手元に残すよう心がける経営のことです。現金期首手元有高、現金期中の増減内容、現金期末手元有高など経営者にとっては専門的で抵抗がありますが、現金の流れを定期的に把握していればキャッシュフローの問題点がすぐに見え、破綻は避けられるのです。

経営者自ら経営改善計画に着手
中小企業にとっての経営者は、優秀な営業マンだったり、技術を極めた職人だったり事業に利益をもたらす要です。そのため、より利益を上げようと時間や体力を注ぎます。反面、利益を生まない財務関連は、どうしても専門家任せになりがちです。モラトリアム法で猶予を与えられた期間に、事業改善計画に従い、デューデリジェンス(財務精査)で資金の流れを把握、健全な経営に乗り出し、より事業を安定させましょう。

●関連記事:モラトリアム(中小企業金融円滑化)法関連の記事はこちらです。

[2010.12.11]

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