日本振興銀行:破綻は中小零細企業に暗雲
拡大指向が裏目、初のペイオフ発動
日本振興銀行が9月10日、民事再生手続開始の申し立てを行い、設立6年余りで経営破綻しました。
金融庁は、経営陣が金融庁の検査妨害した疑いで逮捕されていて、公的資金での救済は国民の理解を得られないとの判断しました。1971年に預金保険機構(制度)が発足して以来初めて、「ペイオフ」発動に踏み切りました。
振興銀の小畠晴喜社長は、これからメガバンクを目指すという標を立てて、SFCGなどノンバンクの債権買い取りなどで目先の収益拡大に走ったことが経営破たんの原因だとしています。
中小向けミドルリスク市場担う
日本振興銀行の設立趣旨は、地銀やメガバンクが躊躇する中小企業に救いの手を差し伸べることでした。経営リスクは高いがこれからの成長性を見込み、今までの金融機関が取引に躊躇する会社の資金調達の一助だったのです。大手企業向け融資よりもリスクの高い、中小企業向けミドルリスク市場を担ってきた振興銀の志は高く評価できます。
石原都知事:異例のコメント
石原都知事は振興銀の破たんについて、「木村剛君(振興銀行元会長)は私と同じように国の冷たさに業を煮やして銀行を作った。私たちは中小企業が疲弊している状況を捉えて、画期的な開発などで日本の技術の底辺を支えている企業に目を向けて融資を行ってきた。一方で皆さんの税金を何億円もつぎ込んで立て直した大きな銀行は何もしていない。本来なら政府が、振興銀行が努力しがいのある環境をつくってあげるべきだったと思う。手を差し伸べれば立ち直れる企業は沢山あるにも関わらず政府はやらない。その意味で振興銀行には意味があったと思うが、こういう結果になり残念だ。」と述べています。
新銀行東京のケース
類似したケースで「新銀行東京」があります。株主が東京都、事業性融資を中心としており、資本経済の中で地方自治体が運営する商業銀行としては日本経済のモデルケースでした。しかし現在は不祥事や経営不振により業務を縮小しています。新銀行東京の縮小に続いて、日本振興銀行の破綻は資金調達に苦しむ小規模零細企業に打撃を与えました。
不良債権救世主だったのに報道主導世論誘導?
日本振興銀行の経営にいくつかの問題があったことは否めません。しかし木村剛元会長に関する一連の報道内容については違和感を感じます。日本銀行に勤務していた90年代、木村氏はバブル崩壊後の不良債権処理に注力し、小泉政権誕生後は完全処理を目指した功績があります。
かつて日本を不良債権地獄から救った人がいまや、極悪人ように報道されています。確かに木村氏は経営者としての責任を負っています。しかし印象だけで報道され、それがあたかもコンセンサスであるかのように誤解させるような木村氏に対する報道には、疑問と失望感を覚えます。
未成熟な金融政策
今回の日本振興銀行破綻の他、新銀行東京の経営不振や武富士の会社更生法申請など、中小零細企業の資金調達手段はなくなりつつあります。中小零細企業金融にとって必要不可欠な金融機関が減っていく中、防ぐ手立てがなかったのでしょうか。
中小企業金融には高いニーズ
中小零細企業向け金融機関が破綻するのを見過ごし、大企業中堅企業を対象にする金融機関が危うくなれば公的資金で救う。このような悪しき金融環境は判断が未熟であると言わざるを得ません。中小零細企業金融の現状を早急に把握して、志のある商業銀行の設立や意識変革を促す法整備に期待したいところです。ミドルリスク市場には常に高いニーズがあるのです。
[2010.9.29]
記事一覧
日銀はなぜ今、利上げするのか―物価を抑えて、成長まで抑えてよいのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 09 / 19◆二十四節気◆令和8年(2026)9月23日「秋分(しゅうぶん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 09 / 18最低賃金1,177円時代へ――「賃上げできない会社」がこれから直面すること
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 09 / 08◆二十四節気◆令和8年(2026)9月7日「白露(はくろ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 09 / 01人手不足国家・日本は外国人材で救われるのか?――2027年「育成就労制度」で変わる中小企業の採用
八木宏之の経済時事ウォッチ 未分類
2026 / 08 / 24◆二十四節気◆令和8年(2026)8月23日「処暑(しょしょ)」です。◆
季節のお便り 未分類
2026 / 08 / 18日銀はなぜ利上げを急ぐのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 08 / 14◆二十四節気◆令和8年(2026)8月7日「立秋(りっしゅう)」です。◆
季節のお便り
2026 / 08 / 03骨太の方針2026を読み解く
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 08 / 02◆二十四節気◆令和8年(2026)7月23日「大暑(たいしょ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 07 / 21日銀金融政策決定会合(6月)を読み解く(後編)
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 07 / 17日銀金融政策決定会合(6月)を読み解く(前編)
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 07 / 06◆二十四節気◆令和8年(2026)7月7日「小暑(しょうしょ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 06 / 30◆二十四節気◆令和8年(2026)6月21日「夏至(げし)」です。◆
季節のお便り
2026 / 06 / 19日銀はインフレの原因を見誤っているのではないか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 06 / 172026年上半期の日本経済を総点検
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 06 / 09◆二十四節気◆令和8年(2026)6月6日「芒種(ぼうしゅ)」です◆
季節のお便り
2026 / 06 / 03「関税ショック」後の中小企業サバイバル戦略
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 05 / 292026年「骨太の方針」はなぜ重要なのか ― 中小企業経営者が知るべき“国家の方向性”と与党内のせめぎ合い
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 05 / 21◆二十四節気◆令和8年(2026)5月21日「小満(しょうまん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 05 / 19大胆な投資促進税制とは何か
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 05 / 07◆二十四節気◆令和8年(2026)5月5日「立夏(りっか)」です。◆
季節のお便り
2026 / 05 / 02日銀「金融政策決定会合」から読み解く日本経済
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 04 / 29◆二十四節気◆令和8年(2026)4月20日「穀雨(こくう)」です。◆
季節のお便り
2026 / 04 / 17値上げは悪いこと?物価高時代に企業が取るべき経営戦略
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 04 / 17◆二十四節気◆令和8年(2026)4月5日「清明(せいめい)」です。◆
季節のお便り
2026 / 04 / 02日本企業に起きている「静かな淘汰」
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 03 / 31金融政策決定会合(3月)-中小企業経営者が知っておくべき金融環境の変化-
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 03 / 23◆二十四節気◆令和8年(2026)3月20日「春分(しゅんぶん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 03 / 16エネルギー価格上昇に中小企業はどう対応するか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 03 / 12◆二十四節気◆令和8年(2026)3月5日「啓蟄(けいちつ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 03 / 02第二次高市内閣で日本の産業政策はどう変わるのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 02 / 26◆二十四節気◆令和8年(2026)2月19日「雨水(うすい)」です。◆
季節のお便り
2026 / 02 / 16【衆議院選挙後】新政権と金利上昇をどう読むか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 02 / 09◆二十四節気◆令和8年(2026)2月4日「立春(りっしゅん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 02 / 01消費税減税は実現するのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 01 / 31日銀金融政策の転換期をどう読むか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 01 / 25◆二十四節気◆令和8年(2026)1月20日「大寒(だいかん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 01 / 172026年度予算――規模・評価軸・企業経営への示唆
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 01 / 03◆二十四節気◆令和8年(2026)1月5日「小寒(しょうかん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 01 / 02日銀・金融政策決定会合(12月) 利上げの背景と今後の政策運営
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 12 / 21◆二十四節気◆令和7年(2025)12月22日「冬至(とうじ)」です。◆
季節のお便り
2025 / 12 / 17取引適正化推進法(旧:下請法)とは?
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 12 / 10◆二十四節気◆令和7年(2025)12月7日「大雪(たいせつ)」です。◆
季節のお便り
2025 / 12 / 03外国人のビザ要件強化の背景とその影響
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 11 / 30高市政権×21兆円補正予算:中小企業に訪れる“追い風”
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 11 / 24◆二十四節気◆令和7年(2025)11月22日「小雪(しょうせつ)」です。◆
季節のお便り
2025 / 11 / 16ガソリン税ついに廃止!軽油も2026年にゼロへ
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 11 / 10◆二十四節気◆令和7年(2025)11月7日「立冬(りっとう)」です。◆
季節のお便り
2025 / 11 / 04どう変わる?日銀の10月会合に見る金融政策の行方
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 10 / 31