人手不足国家・日本は外国人材で救われるのか?――2027年「育成就労制度」で変わる中小企業の採用

日本企業にとって、「人手不足」はもはや景気が良くなれば起きる一時的な現象ではなくなりました。
求人を出しても応募が来ない。採用できても定着しない。賃金を上げたいが、原材料費やエネルギー価格も上がっており、十分な原資を確保できない――。
特に地方の中小企業では、「仕事はあるのに人がいないため受注できない」というケースも珍しくありません。
帝国データバンクによると、2025年度の「人手不足倒産」は441件に達し、3年連続で過去最多を更新しました。なかでも建設業、道路貨物運送業、介護、飲食など、労働集約型の産業で深刻な状況が続いています。
こうした中、日本の外国人政策が大きく変わろうとしています。
2027年4月から、これまでの「技能実習制度」に代わって、新たな「育成就労制度」が本格的に始まります。
これは単なる制度名称の変更ではありません。
これまで「国際貢献」「技能移転」という建前が強かった外国人技能実習制度から、政府が明確に「人材育成」と「人材確保」を目的に掲げる制度への転換です。出入国在留管理庁自身も、制度創設の背景として日本の深刻な人手不足と国際的な人材獲得競争を挙げています。
つまり、日本の外国人政策は大きな転換点を迎えているのです。
1.日本の人手不足は「景気循環」ではなく「人口構造」の問題
まず理解しておきたいのは、現在の人手不足が単なる好景気による人手不足ではないということです。
日本では少子高齢化が続いており、働く世代そのものが減少しています。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」では、出生中位・死亡中位の推計で、日本の総人口は2070年には約8,700万人まで減少すると見込まれています。
もちろん、女性や高齢者の労働参加率を高める余地はあります。
AI、ロボット、DXなどによる省力化も進むでしょう。
しかし、それだけですべての産業の人手不足を解消するのは簡単ではありません。
特に、
- 建設
- 物流
- 介護
- 外食
- 宿泊
- 農業
- 製造業
などでは、現場で実際に人が働かなければ成立しない業務が多く存在します。
しかも、人手不足はすでに企業経営そのものを左右し始めています。
帝国データバンクによれば、2025年の人手不足倒産427件のうち、77%に当たる329件が従業員10人未満の企業でした。
これは中小企業にとって重要な数字です。
大企業なら10人辞めても組織全体で吸収できるかもしれません。しかし従業員10人の会社で2人辞めれば、単純計算で労働力の2割を失います。
さらに資格保有者、工場長、施工管理者、営業責任者などのキーパーソンが辞めれば、「人が減る」という以上に事業そのものが回らなくなることがあります。
人手不足は、もはや単なる「採用の問題」ではありません。
企業の存続に関わる経営問題になっているのです。
外国人労働者はすでに257万人
こうした人手不足を補っているのが外国人材です。
厚生労働省によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は、2,571,037人となりました。
前年から約26万8,000人増加し、過去最多です。
外国人を雇用する事業所も約37万1,000事業所まで増えています。
2024年10月末には約230万人でしたから、わずか1年間で約27万人増えたことになります。
さらに注目すべきなのは、企業が外国人を雇う理由です。
厚生労働省の「外国人雇用実態調査」では、外国人を雇用する理由として、
「労働力不足の解消・緩和のため」69.0%が最多となっています。
次いで、
「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」54.7%
となっています。
つまり現場では、外国人雇用はすでに「国際交流」や「研修」といった位置付けではありません。
企業の人材戦略そのものになりつつあります。
2.外国人政策の大転換――技能実習から「育成就労」へ
ここで、これまでの技能実習制度を振り返ってみましょう。
技能実習制度は、本来、日本で培った技能や技術を開発途上地域などへ移転する「国際貢献」を目的としてきました。
しかし実際には、多くの企業が人手不足を補うために技能実習生を受け入れてきたという側面があります。
つまり、制度上の目的=国際貢献・技能移転
である一方、企業側の実態=人材確保
というズレがありました。
政府もこの「制度目的と実態のかい離」を認めています。
また、実習生の権利保護、転籍の制限、送出機関への高額な費用など、さまざまな問題も指摘されてきました。
そこで技能実習制度を発展的に解消し、新たに創設されるのが「育成就労制度」です。
2027年4月、「育成就労制度」が始まる
育成就労制度は、2027年4月1日から運用が開始されます。
法律自体は2024年6月に成立しており、2026年には制度の具体的な運用方針や運用要領も順次整備されています。2026年1月には分野別運用方針が閣議決定され、7月には制度概要も改訂されました。
大きなポイントは、制度の目的が明確になったことです。
新制度では、「人材育成」+「人材確保」が目的として掲げられています。
これは非常に大きな変化です。
外国人を日本の産業を支える人材として正面から位置付ける方向へ、制度が動いたと見ることができます。
技能実習、育成就労、特定技能の違いを大まかに整理すると、次のようになります。
| 技能実習 | 育成就労 | 特定技能1号 | |
| 主な目的 | 技能移転・国際貢献 | 人材育成+人材確保 | 人手不足への対応 |
| 人材イメージ | 技能を学ぶ人材 | これから育成する人材 | 一定の技能を持つ即戦力 |
| 基本的な期間 | 段階的な実習 | 原則3年 | 原則通算5年まで |
| キャリア | 技能実習 | 特定技能への移行を想定 | 特定技能2号等への展開 |
| 政策上の位置付け | 技能移転中心 | 育成+労働力確保 | 即戦力確保 |
育成就労では原則3年間の就労を通じて人材を育成し、その後、一定の技能や日本語能力を身につけた人については特定技能1号への移行が想定されています。
つまり、
育成就労 → 特定技能1号 → 特定技能2号
という、より長期的なキャリア形成が見えてきます。
特定技能1号は原則通算5年が上限ですが、特定技能2号には在留期間の上限がありません。
従来の「数年間日本で働いて帰国する」という発想から、一定の人材については長期的に日本の産業を支えてもらう方向へ制度が変わっていくことになります。
3.日本は外国人材から「選ばれる国」になれるのか
ここは今回の制度改正で最も重要なポイントだと思います。
日本政府は長い間、外国人労働者の受入れについて慎重な姿勢をとってきました。
しかし、日本の人口構造を考えれば、外国人材を労働市場から切り離して考えることは現実的ではなくなっています。
実際、出入国在留管理庁は育成就労制度を創設した理由について、
人手不足が深刻化する一方、国際的な人材獲得競争も激化しており、日本が外国人から「選ばれる国」になることが重要だと説明しています。
この「選ばれる国」という言葉は重要です。
かつては、「日本で働きたい外国人を日本企業が選ぶ」という発想が中心だったかもしれません。
しかし今後は逆です。
「外国人材から日本が選ばれるか」という競争になります。
外国人材にとって働く国の選択肢は日本だけではありません。
韓国、台湾、シンガポール、欧米、中東など、外国人労働者を必要としている国は多数あります。
しかも日本は長期間にわたる円安によって、外国人から見た日本の賃金の魅力が以前ほど圧倒的ではなくなっています。
だからこそ、単に「外国人を受け入れる制度を作れば人が来る」という話ではありません。
外国人を増やせば人手不足は解決するのか
では、外国人労働者を増やせば日本の人手不足問題は解決するのでしょうか。
答えは、それほど単純ではありません。
外国人材の受入れ拡大には、少なくとも次のような課題があります。
① 日本語教育
仕事上の指示、安全管理、顧客対応など、日本語能力が必要な業務は多くあります。
特に建設、介護、製造などでは、コミュニケーション不足が事故や品質問題につながる可能性があります。
② 住宅・生活支援
外国人従業員を採用すれば終わりではありません。
住居、銀行口座、携帯電話、行政手続、病院、子どもの教育など、生活面での支援も必要になります。
③ 地域社会との共生
外国人住民が増えれば、ごみ出し、騒音、交通、教育、医療など、地域社会との接点も増えます。
受入れ人数だけ増やして、社会インフラや地域の理解が追いつかなければ摩擦が生じる可能性があります。
④ 賃金・待遇
「日本人より安い労働力」として外国人を採用する発想は、今後ますます通用しなくなるでしょう。
外国人材自身が国や企業を比較する時代だからです。
⑤ 定着
せっかく教育した外国人が、より待遇の良い企業へ移れば、企業側の教育投資は回収できません。
新制度では外国人の権利保護や本人意向による転籍についても、技能実習制度から見直しが行われます。
企業側から見れば、「採用できるか」だけではなく「選ばれ続ける会社になれるか」が問われることになります。
「外国人=安い労働力」という経営モデルは終わる
中小企業経営者にとって、ここは非常に重要です。
外国人材政策の拡大を、「日本人が採れないから、安い外国人を雇えばよい」と考えるべきではありません。
むしろ逆でしょう。
今後は外国人材についても、
- 給与
- 休日
- 住宅
- 教育
- キャリアアップ
- 日本語教育
- 職場環境
- 人間関係
などを総合的に改善しなければ、人材を確保できなくなります。
これは日本人の採用と基本的には同じです。
企業が外国人からも選ばれる必要があるからです。
外国人を「不足した人数を埋める人」と考える企業と、「将来の幹部や熟練人材として育てる人」と考える企業では、5年後、10年後に大きな差がつく可能性があります。
4.外国人材だけでは解決しない――生産性向上との両輪が必要
一方で、「人口が減るなら外国人を増やせばいい」という議論にも注意が必要です。
経済成長を大きく分解すると、
経済成長 ≒ 労働投入の増加 + 生産性の上昇
と考えることができます。
外国人材の受入れは、「労働投入の減少」を緩和する政策です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
重要なのは、
外国人材の活用と生産性向上を同時に進めること
です。
例えば製造業なら、
「外国人を10人採用する」だけではなく、
「外国人を5人採用し、ロボット・自動化設備を導入して従来10人必要だった工程を6人で回せるようにする」
という発想です。
飲食業ならモバイルオーダーやセルフレジ。
物流なら自動倉庫や配送システム。
介護なら介護ロボットや記録システム。
建設ならICT施工やBIM/CIM。
外国人材とDX・省力化投資は、どちらか一方を選ぶ話ではありません。
両方を組み合わせる必要があります。
5.中小企業は「採用戦略」そのものを変える必要がある
今後の中小企業に必要なのは、「日本人を採用し、足りなければ外国人で補う」という採用戦略からの転換です。
例えば、次の4つを一体として考える必要があります。
① 賃上げ・待遇改善
まず既存社員が辞めない会社を作る。
② 外国人材の採用・育成
育成就労や特定技能を活用し、中長期的に人材を育てる。
③ DX・省力化投資
そもそも必要な人数を減らす。
④ 価格転嫁・高付加価値化
賃上げや設備投資を可能にする利益を確保する。
つまり、人手不足 → 採用だけではなく、
人手不足 → 賃金 → 価格転嫁 → 投資 → 生産性 → 採用
という経営全体の問題として考える必要があります。
これは特に中小企業にとって重要です。
大企業と同じ賃金で採用競争をしても、勝てない企業は少なくありません。
だからこそ、「少ない人数でも利益を出せる会社」へ変わる必要があります。
外国人政策は「受入れ」だけでなく「共生」と「管理」の問題へ
外国人政策については、「もっと受け入れるべきだ」「外国人が増えすぎるのではないか」といった二者択一の議論になりがちです。
しかし、実際の政策課題はもっと複雑です。
日本が人手不足を補うために外国人材を必要としていることは、かなり明確になってきました。
一方で、受入れ人数が増えれば、
- 不法就労への対応
- 社会保険への加入
- 税の適正な負担
- 日本語教育
- 地域社会との共生
- 犯罪・違法行為への適切な対応
- 悪質な雇用主や仲介業者への規制
なども同時に強化する必要があります。
つまり外国人政策は、「受入れるか、受入れないか」という議論から、
「必要な外国人材をどう受入れ、どう育成し、どう社会に定着してもらい、同時にルールをどう徹底するか」という段階へ移りつつあります。
これは外国人材本人にとっても、日本社会にとっても重要なことです。
まとめ――人手不足国家・日本に必要なのは「外国人+生産性」
日本の人手不足は、今後数年で自然に解消する問題ではありません。
人口構造を考えれば、むしろ長期化する可能性が高いでしょう。
その中で外国人材の重要性は確実に高まります。
2025年10月時点ですでに約257万人の外国人が日本で働いており、その人数は過去最多を更新しています。
そして2027年4月には育成就労制度がスタートします。
これは単なる技能実習制度の名称変更ではありません。
日本が外国人材を「一時的な実習生」ではなく、「日本の産業を支える人材」として本格的に位置付け始めた転換点
と考えるべきでしょう。
ただし、外国人材だけですべてが解決するわけではありません。
これからの日本企業、特に中小企業に必要なのは、
「外国人材」+「賃上げ・待遇改善」+「DX・省力化投資」+「価格転嫁・高付加価値化」
です。
そしてマクロ経済の視点から見れば、日本が人口減少下でも経済成長を続けるためのポイントは、大きく3つに集約できます。
① 労働参加率を高める
② 外国人材を適切に受け入れる
③ 一人当たりの生産性を高める
特に重要なのは③でしょう。
人口が減る国でGDPを増やそうとすれば、最終的には一人ひとりが生み出す付加価値を高めるしかありません。
したがって、外国人政策は単なる「人手不足対策」として考えるべきではありません。
外国人材を受け入れながら、設備投資、AI、DX、自動化、人材教育を進め、日本人も外国人も含めて一人当たりの生産性と賃金を上げていく。
そこまでできて初めて、外国人政策は人口減少時代の「成長政策」になります。
2027年に始まる育成就労制度は、その意味で日本の労働政策の大きな転換点になるのではないでしょうか。
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8月23日11時19分「処暑」です。旧暦7月、申(さる)の月の中気で、新暦8月23日頃。天文学的には、太陽が黄経150度の点を通過するときをいいます。

「処」(旧字体「處」)は、「その場所にいる、とどまる、落ち着く」などを意味し、「処暑」は、暑さが落ち着いて、ひと段落することを表しています。『暦便覧』では、「陽気とどまりて、初めて退きやまんとすれば也」と説いています。
涼風が吹きわたる初秋の頃です。暑さは峠を越えて、ようやく過ごしやすくなります。「綿(わた)の花」が開きます。穀物が実り始め、収穫も目前といった時期です。マツムシやコオロギといった秋の「虫の声」もそろそろ聞こえてきます。
また、この時期は「八朔」「二百十日」「二百二十日」と並び台風襲来の時期とされています。暴風雨に見舞われることも少なくありません。
日に日に北から秋の気配がしてきます。道端や河川敷では風に揺れる「ススキ」の姿を見かけるようになります。残暑厳しいなかでも秋の気を感じます。台風にすら秋の気は感じられるものです。
処暑なりと熱き番茶を貰ひけり ―― 草間時彦
(まだ残暑がつづくが、今日は処暑であるので熱い番茶を所望した)
秋は、感じかた次第で長くもあり、また、あっというまに過ぎてしまうようでもあります。人間の感性にゆだねられる秋という季節には自然と「もの悲しさ」が含まれるように思われます。

◆◆七十二侯◆◆
◆初候「綿柎開(わたのはなしべひらく)」
◇綿を包む萼(がく)が開く。「柎(あし、いかだ、うてな)」:鐘や鼓をかける台の脚、花の萼、いかだ(桴、泭)。
◆次候「天地始粛(てんちはじめてさむし)」
◇ようやく暑さが鎮まる。
◆末候「禾乃登(こくものすなわちみのる)」
◇穀物が実る時節。「禾(いね、のぎ)」:稲、穀物、芒(のぎ)。「のぎ」は、イネ科植物のもみがらの先端から出ている針状の突起のこと。
◆◆8月「処暑」の頃の花◆◆

「綿(わた)」 cotton plant アオイ科ワタ属の総称 学名 Gossypium
ワタ属は、繊維作物として世界各地で栽培されている多年生草本植物です。種子表面の毛(繊維細胞)を利用します。年平均気温15℃以上の熱帯から温帯の南部に約40種が分布しています。
花の開花時期は9月頃。開花後5週間くらいすると実が熟して、はじけて綿毛に包まれた種子、いわゆる「綿花(めんか」が外に吹き出します。綿毛は種子の表面の細胞が伸びたもの。
綿毛は綿糸・綿織物の原料、ふとん綿、脱脂綿、さまざまな充填料などに使われます。種子からは品質の良い油が採れ、てんぷら油、サラダ油、マヨネーズなどに用いられます。

ワタは、古代から人間に利用されてきました。ワタの果実や綿糸が、紀元前5800年頃のものがメキシコの遺跡から、紀元前2400年頃のものがワカ・プリエタ遺跡(ペルー)から、紀元前3500年頃のものがモヘンジョダロ遺跡(インド)から発掘されています。
日本に伝来したのは、桓武天皇の時代、延暦18年(799)三河国に漂着した天竺人(インド人)が種子を持ち込んだのが初めといわれています。栽培が広まったのは、中国から種子が導入された文禄年間(1592~1595)だとされています。以来、ワタを「木綿(もめん)」と呼び、蚕の繭から作られるものを「真綿(まわた)」と呼ぶようになりました。
愛知県西尾市に鎮座する「天竹神社(てんじくじんじゃ)」は、日本に初めて綿の種子を伝えたとされる崑崙人(こんろんじん:中国から見たインド人)を、綿の神「新波陀神(にいはたがみ)」として祀ります。日本でも珍しい「綿」にまつわる神社です。毎年10月に行なわれる祭礼「棉祖祭(めんそさい)」では、「舟みこし」が担がれ、古式ゆかしい「綿打ち」の儀式が執り行なわれます。
◆◆◆◆編集後記◆◆◆◆

8月後半になると、朝晩の涼しさを感じます。7月後半から8月は夏の花火大会のピークでした。花火大会に出かける浴衣姿も、処暑の頃になるとすこし減ったように感じます。
処暑を過ぎると、これからは台風到来の季節です。
残暑の疲れが出て、食欲不振や精力減退の方に、お勧めは規則正しい生活です。
皆さん、お体ご自愛専一の程
筆者敬白
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