10年で企業倒産はどう変わったか――増える小規模企業の倒産

10年で企業倒産はどう変わったか――増える小規模企業の倒産

企業倒産は、景気や中小企業の経営環境を映す重要な指標です。

ただし、倒産件数だけを見て「景気が悪化した」と判断するのは十分ではありません。負債総額、倒産した企業の規模、業種、倒産形態まで見ることで、初めて実態が見えてきます。

本記事では、確定した年間データがそろっている2016年から2025年までの10年間について、帝国データバンクの「全国企業倒産集計」を基に変化を確認します。

結論から言えば、この10年間で起きた最大の変化は、大型企業の倒産が増えたことではなく、物価高や人手不足、販売不振に耐えられなくなった中小・零細企業の倒産が広がったことです。

第1章 倒産件数は、10年間で25.7%増加した

2016年の企業倒産は8,164件でした。その後はおおむね8,000件前後で推移しましたが、2020年から2021年にかけて大きく減少しました。

企業倒産件数の推移

年倒産件数前年比
2016年8,164件▲4.1%
2017年8,376件+2.6%
2018年8,063件▲3.7%
2019年8,354件+3.6%
2020年7,809件▲6.5%
2021年6,015件▲23.0%
2022年6,376件+6.0%
2023年8,497件+33.3%
2024年9,901件+16.5%
2025年10,261件+3.6%

出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計2025年報」。

2021年の倒産件数は6,015件で、この10年間では最少でした。しかし、これは必ずしも企業経営が大幅に改善した結果ではありません。

コロナ禍では、実質無利子・無担保融資、雇用調整助成金、給付金、社会保険料や税金の納付猶予、金融機関による返済条件変更など、異例の支援策が講じられました。その結果、本来であれば資金繰りに行き詰まっていた企業の倒産が一時的に抑えられた面があります。

支援が縮小し、ゼロゼロ融資の返済が本格化した2022年以降、倒産は4年連続で増加しました。2025年には1万261件となり、2013年以来12年ぶりに1万件を超えています。

2016年と2025年を比較すると、倒産件数は2,097件、率にして25.7%増加しました。さらに、コロナ支援下で最少だった2021年との比較では、4年間で4,246件、70.6%も増えています。

この10年間の推移は、単純な右肩上がりではありません。

2016~2019年の安定期、2020~2021年の政策による倒産抑制期、2022年以降の反動増加期という三つの局面に分けて考える必要があります。

第2章 負債総額は減少――「件数増・小規模化」が進んだ

倒産件数が増えている一方、負債総額は同じようには増えていません。

倒産企業の負債総額の推移

年負債総額前年比
2016年1兆9,916億円▲1.0%
2017年2兆4,549億円+23.3%
2018年1兆6,256億円▲33.8%
2019年1兆4,136億円▲13.0%
2020年1兆1,811億円▲16.4%
2021年1兆1,633億円▲1.5%
2022年2兆3,724億円+103.9%
2023年2兆3,769億円+0.2%
2024年2兆2,198億円▲6.6%
2025年1兆5,669億円▲29.4%

※億円未満を四捨五入。
出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計2025年報」。

負債総額は年による変動が大きく、倒産件数とは必ずしも連動しません。大型倒産が1件発生するだけで、その年の負債総額が大きく動くためです。

例えば2016年には、パナソニックプラズマディスプレイの特別清算による負債5,000億円が含まれていました。2024年にも、旧三菱航空機であるMSJ資産管理の負債6,413億円が総額を押し上げています。

これに対し、2025年は倒産件数が10年間で最多だった一方、負債総額は1兆5,669億円に減少しました。2016年と比較しても、倒産件数は25.7%増えたのに、負債総額は21.3%減っています。

この逆方向の動きからは、近年の倒産増加が大型倒産によるものではなく、小規模企業の倒産増加によってもたらされていることが読み取れます。

負債規模2016年2025年10年間の変化
5,000万円未満4,673件6,383件+1,710件
全倒産に占める割合57.2%62.2%+5.0ポイント

2016年には負債5,000万円未満の倒産が4,673件で、全体の57.2%でした。2025年には6,383件、62.2%まで上昇しています。

2025年は、負債規模別で「5,000万円未満」だけが前年より増加しました。また、個人事業主と資本金1,000万円未満の企業を合わせると7,423件となり、倒産全体の72.3%を占めています。

つまり、現在の倒産問題の本質は、巨額の負債を抱えた大企業の破綻というより、地域の小規模事業者が次々と事業継続を断念していることにあります。

第3章 倒産増加が目立つ建設・小売・サービス・運輸業

2016年と2025年の業種別件数を比較すると、増加が特に目立つのはサービス業、建設業、運輸・通信業です。

業種2016年2025年増減
建設業1,594件2,021件+26.8%
製造業1,053件1,163件+10.4%
卸売・小売業3,024件3,317件+9.7%
運輸・通信業282件416件+47.5%
サービス業1,765件2,648件+50.0%
その他・不動産等446件696件+56.1%
合計8,164件10,261件+25.7%

※2025年の卸売業と小売業、その他と不動産業は、2016年との比較のため合算。
出典:帝国データバンク及び総務省「日本統計年鑑」。

倒産件数は全業種合計で、2016年の8,164件から2025年の10,261件へ増加し、10年間で25.7%増えました。なかでもサービス業は50.0%増、運輸・通信業は47.5%増と、全体の増加率を大きく上回っています。件数では卸売・小売業が最も多い一方、増加率ではサービス業や運輸・通信業の伸びが目立ちます。

サービス業――10年間で50%増加

サービス業は1,765件から2,648件へ増え、10年間でちょうど50%増加しました。2025年は2000年以降で最多です。

内訳では、ソフトウェア開発、広告、調査などを含む「広告・調査・情報サービス」が852件に達しました。デジタル関連は成長市場に見えますが、参入が多く競争も激しいため、売上が伸びても人件費や外注費の上昇によって利益を確保できない企業があります。

医療、福祉、警備、宿泊などの労働集約型サービスでは、人手不足と人件費上昇の影響を受けやすくなります。顧客や公定価格との関係で値上げが難しい事業ほど、コスト上昇を自社で吸収せざるを得ません。

建設業――仕事があっても利益が残らない

建設業の倒産は1,594件から2,021件へ26.8%増加し、2025年には12年ぶりに2,000件を超えました。

なかでも、大工工事、左官工事、土工・コンクリート工事などを含む職別工事業は965件に達しています。資材価格、外注費、人件費が上昇する一方、受注時に決めた工事価格へ追加コストを十分に反映できない場合、工事量があっても利益が残りません。

2025年の「物価高倒産」949件のうち、建設業は240件で最多でした。建設業は、資材高、人手不足、価格転嫁の遅れという三つの問題が重なりやすい業種です。

小売・飲食業――消費者向け価格への転嫁が難しい

2025年の小売業は2,193件で、建設業を上回りました。飲食料品小売業は340件、飲食店は900件となり、飲食店は2000年以降で最多を更新しています。

飲食店では、食材費、光熱費、人件費、家賃が同時に上昇しています。値上げしなければ利益が減る一方、値上げすれば客数が減るおそれがあります。

業態別では、居酒屋などの「酒場・ビヤホール」が204件で最多でした。「中華・東洋料理店」は179件、「日本料理店」は97件となり、いずれも厳しい状況です。飲食店の価格転嫁率は32.3%で、全業種平均の39.4%を下回っています。

大手チェーンは仕入れの規模や省力化投資によってコストを抑えられますが、個人店や小規模店には同じ対応が難しく、業界内の二極化が進んでいます。

運輸業――燃料費と人手不足の影響

運輸・通信業は、2016年の282件から2025年には416件へ47.5%増加しました。

運輸業は、燃料費、車両価格、修繕費、人件費の上昇を受けています。ドライバー不足に対応するため賃金を上げても、運賃へ十分に転嫁できなければ利益は圧迫されます。

荷物がないために倒産するだけではありません。仕事はあっても、運転手を確保できずに受注できないという「供給能力不足型」の経営悪化も増えています。

第4章 倒産の「業態」は、再生より清算が中心

倒産形態を見ると、この10年間を通じて破産が圧倒的多数を占めています。

倒産形態2016年2025年
破産7,638件9,567件
特別清算279件399件
民事再生法246件285件
会社更生法1件10件
合計8,164件10,261件

出典:帝国データバンク「全国企業倒産集計」2016年報、2025年報。

2016年の破産は7,638件で全体の約93.6%、2025年は9,567件で93.2%です。構成比には大きな変化がなく、倒産の大部分が事業を再建する「再生型」ではなく、事業を終了する「清算型」となっています。

2025年には清算型倒産が9,966件に達した一方、再生型は295件にとどまりました。特に法人の民事再生は60件で、2000年以降最少となっています。

特別清算は2016年の279件から2025年には399件へ増え、2000年以降で最多となりました。これは、事業を別会社へ移した後に旧会社を整理する第二会社方式などが広がったことも影響しています。

倒産理由では、2025年の「販売不振」が8,385件となり、全体の81.7%を占めました。不況型倒産全体では8,502件、82.8%です。

一方で、近年は従来の販売不振に加えて、経営環境の変化を示す新しい要因が強まっています。

注目される倒産要因2025年
物価高倒産949件
人手不足倒産427件
ゼロゼロ融資後倒産636件
後継者難倒産503件
経営者の病気・死亡335件

物価高倒産は過去最多、人手不足倒産は初めて400件を超えました。後継者難や経営者の病気・死亡も高水準です。

かつての倒産は「商品が売れない」「借金が多すぎる」という説明が中心でした。現在はそれに加えて、売れても利益が出ない、人を採用できない、事業を引き継ぐ人がいないという構造的な問題が事業継続を難しくしています。

まとめ 10年間で倒産は「大型破綻」から「小規模企業の退出」へ

2016年から2025年までの10年間で、企業倒産は8,164件から1万261件へ25.7%増加しました。一方、負債総額は約1兆9,916億円から約1兆5,669億円へ21.3%減少しています。

この「件数は増え、金額は減る」という動きが、現在の倒産傾向を端的に表しています。

倒産の中心は、巨額の負債を抱えた大企業ではありません。建設、飲食、小売、運輸、サービスなど、地域経済や日常生活を支える中小・零細企業です。

コロナ禍では、金融支援によって倒産が一時的に抑えられました。しかし、その間に原材料価格、人件費、光熱費、金利などの負担が上昇し、過剰債務を抱えた企業の収益力が十分に回復しないまま、返済が再開されました。

今後必要なのは、単に融資を増やして企業の存続期間を延ばすことではありません。

適正な価格転嫁、生産性向上、人材確保、事業承継、早期の事業再生を一体的に進め、企業が利益とキャッシュフローを確保できる経営環境をつくることが重要です。

倒産件数が1万件を超えたという数字だけでなく、その内側で、地域の小規模企業が静かに退出し続けていることに目を向ける必要があります。

注:本記事の「倒産」は、帝国データバンクが集計する負債1,000万円以上の法的整理を対象としています。休廃業・解散や私的整理は含まれません。

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