トランプ関税:中小企業に与える影響

トランプ関税(第一期)とは何か?
トランプ関税とは、トランプ政権(2017~2021年)が実施した、外国製品に対する高関税政策です。とくに中国との貿易戦争を背景に、鉄鋼やアルミ、電子部品などに大幅な追加関税を課しました。
図1:主な対象品目と関税率(2018年当時)
| 品目 | 追加関税率 | 主な対象国 |
| 鉄鋼製品 | 25% | 中国、日本など |
| アルミ製品 | 10% | 同上 |
| ハイテク製品 | 最大25% | 主に中国 |
| 太陽光パネル | 30% | 世界全体 |
なぜ導入されたのか?トランプ政権の狙い
第一期のトランプ関税の目的は以下の3点です。
- 米国製造業の復活
輸入品の価格を上げて、自国製品の競争力を高める
- 対中貿易赤字の是正
中国からの輸入を抑えることで貿易バランスを改善
- 知的財産保護
中国企業による技術盗用への対抗
トランプ政権の“第2期”関税とは
2025年初頭に始まったトランプ元大統領による第二期関税政策の最大の特徴は、
1)第一期よりもはるかに広範かつ高率な「包括関税化(universal tariffs)」
2)「同盟国を含む全世界への対象拡大」
にあると言えます。
① 関税対象の“世界規模化”
第一期では中国を主とした特定国・特定品目が中心でしたが、第二期では以下のように対象が広がっています。
| 対象 | 第一期 | 第二期 |
| 国 | 中国中心、一部EUやカナダ等 | 中国、EU、カナダ、メキシコ、日本、韓国、ASEAN、ベネズエラ関連国など |
| 品目 | 鉄鋼・アルミ・一部工業製品 | 自動車、電子部品、銅、食品、医薬品までほぼ全分野 |
特に、同盟国であるEUや日本・韓国も関税対象とされたことは、第一期と比べた際の大きな断絶点です。
② “包括関税”という新アプローチ
2025年4月「Liberation Day関税」として発表された内容では:
- 全輸入品に一律10%の関税を課す
- 「互恵的でない国」57ヵ国に対しては35%〜50%の関税
という、従来のWTO原則(最恵国待遇)を無視した“抜本的政策”を採用しています。
対象国(一部)
- 中国(30%)
- EU諸国(35〜50%、交渉中)
- カナダ・メキシコ(USMCA除外品は免除)
- ベネズエラ原油の購入国(全品25%、大統領令14245による)
③ 関税率が“より高く”
過去の関税(第一期)は最大でも25%程度でしたが、第二期では50%関税が複数品目に適用済みです。
代表的関税率(2025年7月時点)
| 品目・対象国 | 関税率 |
| 鉄鋼・アルミ(全世界) | 50% |
| 自動車(非USMCA) | 25% |
| 銅 | 50%(2025年8月1日発動) |
| 中国製品 | 30%(8月12日まで暫定措置中) |
| その他輸入品全般 | 10%(包括関税として提案中) |
| EU・メキシコ・カナダ | 35〜50%(交渉中) |
中小企業への影響ポイント
こうした影響は中小企業にも少なからず影響を与えます。
- サプライチェーンコストの急騰
原材料(鋼・銅)、部品(自動車用など)、製品の輸入コストが数十%上昇
- 輸出価格の競争力低下
特に米国向けや第三国経由の販売に影響、納期の遅延や契約再交渉が必須
- 価格転嫁が難航
国内外ともに物価圧力となり、利幅の圧縮が避けられない
中小企業が今すべき対策
トランプ関税の第二期は、通商政策というより戦略・安全保障・選挙対策を内包する“超政治化された政策”へ変貌しています。中小企業もこの影響を受けないとは言えません。特に中小企業は以下の行動が求められます。
| 対策項目 | 詳細 |
| 取引先・調達先の多様化 | 欧州・アジア・中東への切り替えや代替調達先の確保 |
| 契約見直し | 関税・為替リスク条項の追加、価格調整条項の明記 |
| 価格転嫁・コスト補填策 | 顧客への説明、バンドル販売や経費削減策の導入 |
| 政治・通商情報のモニタリング | 政府広報、省庁通達、商工会議所などからリアルタイム情報収集 |
| 法的対応の検討 | 業界団体との協力、訴訟・行政訴訟手続きへの参加を視野に |
今後の見通し
- 8月1日以降、EU・メキシコ・カナダ・銅などに関税が正式発動されれば、世界規模でコスト圧力が加速します
- 各国との交渉が成功すれば、急激な発効は回避される可能性もあり、8月初〜中旬が一つの分岐点
- 一方で、貿易交渉が決裂すれば長期的な影響が予想され、サプライチェーンの恒久的な見直しが必要になります
不安定な国際通商状況を踏まえ、経営の柔軟性を高めるために今すぐできる「備え」を強化しましょう。
記事一覧
10年で企業倒産はどう変わったか――増える小規模企業の倒産
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 10 / 07◆二十四節気◆令和8年(2026)10月8日「寒露(かんろ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 10 / 04日銀はなぜ今、利上げするのか―物価を抑えて、成長まで抑えてよいのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 09 / 19◆二十四節気◆令和8年(2026)9月23日「秋分(しゅうぶん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 09 / 18最低賃金1,177円時代へ――「賃上げできない会社」がこれから直面すること
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 09 / 08◆二十四節気◆令和8年(2026)9月7日「白露(はくろ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 09 / 01人手不足国家・日本は外国人材で救われるのか?――2027年「育成就労制度」で変わる中小企業の採用
八木宏之の経済時事ウォッチ 未分類
2026 / 08 / 24◆二十四節気◆令和8年(2026)8月23日「処暑(しょしょ)」です。◆
季節のお便り 未分類
2026 / 08 / 18日銀はなぜ利上げを急ぐのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 08 / 14◆二十四節気◆令和8年(2026)8月7日「立秋(りっしゅう)」です。◆
季節のお便り
2026 / 08 / 03骨太の方針2026を読み解く
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 08 / 02◆二十四節気◆令和8年(2026)7月23日「大暑(たいしょ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 07 / 21日銀金融政策決定会合(6月)を読み解く(後編)
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 07 / 17日銀金融政策決定会合(6月)を読み解く(前編)
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 07 / 06◆二十四節気◆令和8年(2026)7月7日「小暑(しょうしょ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 06 / 30◆二十四節気◆令和8年(2026)6月21日「夏至(げし)」です。◆
季節のお便り
2026 / 06 / 19日銀はインフレの原因を見誤っているのではないか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 06 / 172026年上半期の日本経済を総点検
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 06 / 09◆二十四節気◆令和8年(2026)6月6日「芒種(ぼうしゅ)」です◆
季節のお便り
2026 / 06 / 03「関税ショック」後の中小企業サバイバル戦略
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 05 / 292026年「骨太の方針」はなぜ重要なのか ― 中小企業経営者が知るべき“国家の方向性”と与党内のせめぎ合い
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 05 / 21◆二十四節気◆令和8年(2026)5月21日「小満(しょうまん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 05 / 19大胆な投資促進税制とは何か
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 05 / 07◆二十四節気◆令和8年(2026)5月5日「立夏(りっか)」です。◆
季節のお便り
2026 / 05 / 02日銀「金融政策決定会合」から読み解く日本経済
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 04 / 29◆二十四節気◆令和8年(2026)4月20日「穀雨(こくう)」です。◆
季節のお便り
2026 / 04 / 17値上げは悪いこと?物価高時代に企業が取るべき経営戦略
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 04 / 17◆二十四節気◆令和8年(2026)4月5日「清明(せいめい)」です。◆
季節のお便り
2026 / 04 / 02日本企業に起きている「静かな淘汰」
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 03 / 31金融政策決定会合(3月)-中小企業経営者が知っておくべき金融環境の変化-
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 03 / 23◆二十四節気◆令和8年(2026)3月20日「春分(しゅんぶん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 03 / 16エネルギー価格上昇に中小企業はどう対応するか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 03 / 12◆二十四節気◆令和8年(2026)3月5日「啓蟄(けいちつ)」です。◆
季節のお便り
2026 / 03 / 02第二次高市内閣で日本の産業政策はどう変わるのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 02 / 26◆二十四節気◆令和8年(2026)2月19日「雨水(うすい)」です。◆
季節のお便り
2026 / 02 / 16【衆議院選挙後】新政権と金利上昇をどう読むか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 02 / 09◆二十四節気◆令和8年(2026)2月4日「立春(りっしゅん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 02 / 01消費税減税は実現するのか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 01 / 31日銀金融政策の転換期をどう読むか
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 01 / 25◆二十四節気◆令和8年(2026)1月20日「大寒(だいかん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 01 / 172026年度予算――規模・評価軸・企業経営への示唆
八木宏之の経済時事ウォッチ
2026 / 01 / 03◆二十四節気◆令和8年(2026)1月5日「小寒(しょうかん)」です。◆
季節のお便り
2026 / 01 / 02日銀・金融政策決定会合(12月) 利上げの背景と今後の政策運営
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 12 / 21◆二十四節気◆令和7年(2025)12月22日「冬至(とうじ)」です。◆
季節のお便り
2025 / 12 / 17取引適正化推進法(旧:下請法)とは?
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 12 / 10◆二十四節気◆令和7年(2025)12月7日「大雪(たいせつ)」です。◆
季節のお便り
2025 / 12 / 03外国人のビザ要件強化の背景とその影響
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 11 / 30高市政権×21兆円補正予算:中小企業に訪れる“追い風”
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 11 / 24◆二十四節気◆令和7年(2025)11月22日「小雪(しょうせつ)」です。◆
季節のお便り
2025 / 11 / 16ガソリン税ついに廃止!軽油も2026年にゼロへ
八木宏之の経済時事ウォッチ
2025 / 11 / 10