新たな私的整理制度案「事業再構築法制(仮)」

「事業再構築法制(案)」

11月25日、経産省の非公開の有識者会議で新たな私的整理の制度案が示されました。2024年内中にも報告書をとりまとめて、2025年の通常国会に関連法案を提出する見通しとなっています。

経産省によると、経営難に陥った企業の債務を債権者の4分の3以上の多数決で減免できるようにする私的整理の制度で、対象は大企業や中堅企業となっています。景気の変動などで過剰な債務を背負った企業の債務を迅速に整理し、成長が見込める事業を伸ばして経済の新陳代謝を促す狙いがあります。

◆経産省案の主なポイント
対象企業大企業・中堅企業
対象債権金融債権に限定。金額ベースで4分の3以上の多数決
申請債務者が再生計画の概要を国が指定する第三者機関に提出
監督第三者機関の弁護士や会計士が手続きを監督
認可裁判所が計画を認可

(経産省資料より当社作成)

債務整理とは

債務整理とは債務(借金)の減額や免除、利息カット、返済スケジュールの調整などによって債務を無理なく返済できるようにする手続き全般を指します。まず、個人を対象とした債務整理には任意整理や個人再生、自己破産などがあります。法人の債務を整理する手段には裁判所が監督する破産や民事再生、会社更生といった法的整理と、裁判所が関与せず債務者と債権者が交渉する私的整理があります。

法的整理は倒産した事実が公になり、社会的には信用リスクが高く事実上事業継続は難しいのが実態です。一方現行の私的整理は債権者の全員一致が原則で、交渉に時間を要してしまい、債権者交渉をしているうちに事実上の破綻してしまい、制度はあっても実効性が低いことが課題とされていて、ほとんど活用されませんでした。

基本的に金融機関からの借入金だけでなく、買掛金といった取引上の債務も種類を問わず債務整理の対象となります。

債務整理は借金返済の負担を減らせるという大きなメリットがありますが、債務整理の種類によってそれぞれ注意点も異なるため、経営不振の企業がどの手段を選択するのか慎重に検討する必要があります。

4分の3以上の合意で債権放棄

新制度では私的整理において、金額ベースで4分の3以上の債権者が合意した場合に、債権の放棄や返済計画の変更をできるようになります。

対象の債権は金融債権に限られ、商品の仕入れ代金など商取引の債権は含まれません。金融債務に限定されると、複数の金融機関債権者がいることを念頭に、大企業や中堅企業など一定以上の規模がある企業を想定しています。

また、公平性を担保するため、裁判所が関与します。手続きフローは下記のようになります。

  • 債務者は国が指定する第三者機関に再生計画の概要を示し、手続きを申請する。
  • 第三者機関に属する実務経験を持った弁護士や会計士などが関与する。
  • 裁判所の認可を経て計画に効力を持たせる。裁判所の認可への異議申し立てもできるようにする。

早期再生をめざして取捨選択

日本の非金融法人の債務残高の合計は新型コロナウイルス禍前の2019年末の567.9兆円から、23年末には679.7兆円へと111.8兆円増加しました。この新制度により、成長が見込める事業と撤退すべき分野を選別して早期に再生を果たす新たな選択肢が生まれることになります。

(日銀データより当社作成)

この法案はドイツで2021年、裁判所が限定的に関与して公正性を担保したうえで多数決で私的に債務を整理できるようにする「StaRUG」を導入しました。今回のこの日本の新制度はこのドイツの事例を参考にして制度設計されていると言われています。

当面は対象が中堅企業・大企業とされていますが、企業再生への切り札ともなり得る制度ですから、中小企業の経営者の方も是非、今回の新私的整理である仮称「事業再構築法制」の動向を注視すると温めていた事業に新たな展開が開けます。

経済状況の変化に対応する昨今は、「事業性融資推進法」や今回の「事業再構築法制(仮)」の動向をブログで都度追いかけて、動向を紹介していきたいと思っています。

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