価格交渉を行うためのポイント(前編)

論理的、客観的な根拠が必須

急速な円安・ドル高が進むなかで、原油などのエネルギーコストや原材料価格は高騰しています。また最低賃金の引き上げや人手不足により、労務費も上昇傾向にあります。

このような中で、中小企業が事業を継続していくためには、経費の上昇分を取引価格に適切に転嫁するための「価格交渉」が欠かせません。今回は価格交渉を行うためのポイントについてご紹介します。

「値上要求」のための価格交渉の進め方

ほとんどの商取引は、売り手よりも買い手の方が強くなります。売り手と買い手が「価格交渉」を行った場合、売り手は不利な立場になりがちです。
では、買い手に対してどのように「値上要求」をしていけば良いのでしょうか。単に「苦しいから値上げをお願いします。」では通じません。

ここでは、その基本的な流れについてご説明します。

STEP 1「事前準備」

  • 価格根拠の資料を作成

価格交渉では、価格の根拠となる客観的なデータを提示する必要があります。
原材料費・エネルギーコスト・労務費について、これらの上昇を取引価格に反映しない取引は、独占禁止法の「優越的地位の濫用」に該当する恐れがあります。

値上要求にあたっては、たとえば以下のような価格根拠の資料を作成して、交渉に臨みましょう。

原材料の内訳と、客観性のあるそれぞれの原材料価格の推移(上昇)資料
電気料金・ガス料金、燃料調達費などの客観性のあるエネルギーコストの推移(上昇)資料
最低賃金の引上げ、人手不足による労務費の上昇資料説明
上記の外的なコスト増加に対応するために企業努力で対応可能な範囲及びこれまで実施してきた企業努力をアピールする資料
価格変更は安定供給や品質安定にどのような影響があるかをアピールする資料
  • 買い手との関係性の確認

買い手が、自社にとってどのくらい重要な取引先なのかによっても、値上交渉の条件は異なる場合があります。

以下について確認しておきましょう。

買い手が、全体の売上・利益に占める割合、依存度
買い手が、下請法が適用されるかどうか
買い手が、自社の経営状況(決算書)を把握しているかどうか
  • 競合に対する自社の強みの把握

競合(同業他社)と比較した場合の自社の強みを整理しましょう。

価格だけでなく、品質・納期・機能など価格以外のメリットについてもまとめましょう。

競合と比べて、価格は安いのか、高いのか
競合と比べて、製品・サービスの品質はどうか
競合と比べて、納期対応力・生産能力はどうか
競合と比べて、製品の機能・技術力は優れているか
  • 提示価格・目標価格・最低価格等の設定

はじめに、

(1)取引先に提示する「提示価格」、

(2)自社として納得できる「目標価格」、

(3)これ以上は譲歩することができない「最低価格」

の3種を設定します。

「提示価格=目標価格」でもかまいませんが、取引先によっては価格交渉のテクニックとして目標価格よりも上の提示価格を決めておく必要があります。

また価格以外に、自社で受け入れることができる取引条件についても整理しておきます。

STEP 2「価格交渉」

  • 価格交渉の要請

「価格改定検討のお願い」等のタイトルで文書を作成し、送付します。この文書には「価格値上」が必要な背景についても記載します。 取引先の担当者には、事前に価格改定の要望について打診をし、交渉のテーブルを設定するようにお願いします。

  • 価格・取引条件の交渉

事前に準備した客観的かつ合理的なデータを提示しながら、値上交渉をします。 テクニックとしては、最初に提示価格を提示し、相手の反応を見ながら「目標価格」での妥結をめざします。

また必要に応じて、価格以外の対案・取引条件を提示します。たとえば、以下のようなものが考えられます。

加工方法や原材料、設計の変更
包装方法や納品頻度の変更
検査方法の見直し、変更
支払い条件や保証期間の見直し
サービス体制の変更
不稼働金型の管理費・廃棄ルールの設定

STEP 3「価格・取引条件の文書化」

  • 議事録などによる文書化

価格交渉の経緯については、その都度、決まっていることと決まってないことを文書化しておきましょう。議事録の作成・共有が難しい場合には、打ち合わせメモとして「間違いがあるとご迷惑をおかけするので確認させてください」と、取引先に電子メール等を送信しておくと間違いがありません。

  • 取引条件・ルールの文書化

取引条件・ルールについて、議事録・見積書・契約書などで文書化しておきましょう。

取引条件に関するルールとしては、以下のような例があります。

製品単価の算出ルール更
追加費用の負担ルール
型の保管・廃棄ルール
補給品の支給条件・単価算出ルール
運送経費の算出ルール
図面・ノウハウの開示ルール

まとめ

以上、「価格交渉」に必要な流れと必要なツールについて説明してきました。

繰り返しになりますが、「交渉」に必要なものは、ロジックとデータです。別の言い方をするならば、必要なのは思いを伝える「文学的、国語的」なものではなく、相手を説得、納得させる「論理的、数学的」な要素です。

これは価格交渉だけではなく、銀行交渉にも通じる必要な要素です。 自社のおかれている状況を見つめ直す良い機会でもありますので、実際に価格交渉を行うかどうかは別にしても、この機にいろいろとデータを集めてみてはいかがでしょうか。

関連記事:

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