何が違う?育成就労制度と技能実習制度

何が違う?育成就労制度と技能実習制度

「育成就労制度」とは、外国人が日本で働くための制度の一つです。これまで30年近く続いてきた「技能実習制度」に代替される制度として、「育成就労制度」を盛り込んだ改正法が2024年6月に可決・成立しました。3年後の2027年6月までに施行される予定です。

両者は何が違うのでしょうか。実は、そもそも根源にある「制度の目的」がまったく違うのです。

技能実習制度の目的
技能実習制度は、開発途上国への技術移転を通じた国際貢献を目的とし、日本の企業での実務を通じて技能を習得させる制度です。

育成就労制度の目的
育成就労制度は、人材確保を目的に、外国人が日本で安定的に働きながら技能を習得し、一定期間後に他の企業への転職も可能とする制度です。

◆「技能実習制度」と「育成就労制度」の主な違い

項目技能実習制度育成就労制度
制度の目的国際貢献・技術移転労働力不足対策

技能実習制度の問題点と新制度創設の背景
技能実習制度は「国際貢献」を名目に導入されましたが、実際には人手不足を補う労働力として利用されるケースが多く、制度の目的と実態に乖離がありました。また、労働者の転職が原則認められないため、劣悪な労働環境や人権侵害、長時間労働、低賃金などの問題が国内外から批判されていました。
こうした背景を踏まえ、外国人労働者を単なる「実習生」ではなく、労働者として適切に受け入れ、保護しながら育成する制度が求められるようになりました。そこで創設されたのが「育成就労制度」です。
この制度は、人材育成と人手確保を両立させることを目的とし、適切なキャリア形成や一定の条件下での転職も可能にすることで、労働者の権利を尊重しつつ、企業側のニーズにも応える仕組みとなっています。

◆「技能実習制度」と「育成就労制度」の主な違い

比較項目技能実習制度育成就労制度
制度の目的技能移転を通じた国際貢献人材育成と人手不足の解消(労働力確保)
滞在期間原則最長5年最長5年(特定技能への移行で更に延長可能)
転職の可否原則不可(やむを得ない事情のみ)一定条件を満たせば可能(業種内での転職)
監理団体の役割監理団体が企業を指導・監督監理団体は廃止予定。新たに登録支援機関等が役割を担う
受け入れ企業の責任技能実習計画の作成と実施キャリア形成支援と人材育成の明確な責任
問題点への対応労働者保護が不十分との批判労働者の権利保護やキャリア支援を強化

中小企業にとって何が変わる?

前述の通り新たな制度である、育成就労制度は、2027年6月までに施行される予定ですが、中小企業にとってどのような影響があるのでしょうか。以下にあげてみましたので参考にしてください。

1. 人手不足への対応がしやすくなる可能性

育成就労制度は、実質的に労働力としての受け入れを明確に位置づけているため、建設、介護、農業、製造業などの慢性的に人手不足な業界にとって追い風となります。制度上、より安定した形で外国人材の受け入れが可能になります。

2. 人材の定着率が向上する可能性

技能実習制度では「帰国前提」だったため、育成や長期雇用へのインセンティブが低い傾向がありました。育成就労制度ではキャリア形成や特定技能への移行も視野に入るため、企業が育てた人材がそのまま戦力として長く働く可能性が高まります。

3. 転職可能による“競争”の激化も想定される

新制度では、一定条件下での同一業種内での転職が可能になります。そのため、労働環境や待遇が悪いと、他社へ流出するリスクも。職場環境の見直しや待遇改善がより重要になるでしょう。

4. 受け入れ体制の見直しが求められる

監理団体の廃止に伴い、企業側がより主体的に教育・支援体制を整える責任を負うようになります。特に、語学サポートや生活支援など、外国人が安心して働ける環境づくりが求められます。

5. 制度理解と準備が今後のカギに

新制度は段階的に導入される予定ですが、現場での対応がスムーズに進むよう、早めの情報収集と準備が重要です。業種ごとの対応指針も注視しながら、自社に合った受け入れ方を考えることが成功のポイントです。

町工場が育成就労制度に備えて行った3つの取り組み

以下にとある企業の具体的な事例をご紹介します。

(企業A)

東京都大田区にある精密部品を扱うA社(従業員30名)は、これまで技能実習制度を活用してベトナム人実習生を3年間受け入れてきました。しかし、制度の見直しを受け、2025年からは「育成就労制度」への移行を見据えた準備を始めました。

1. 転職可能性を踏まえた「働きやすさ」の見直し

A社では、外国人労働者が定着しやすいように、休日の柔軟化や住宅手当の支給を導入。日本人社員との交流の場として、月1回の「交流ランチ会」も始めました。これにより職場の雰囲気が改善し、日本人社員の満足度も向上。

2. 語学・技術教育の内製化

これまで外部に委託していた日本語教育を、社内OJT+提携オンライン講座へ切り替え。社内のベテラン社員が、簡単な日本語で技術指導できるようマニュアルを整備。教育の質と効率が上がり、外国人材の理解度も向上。

3. 受け入れ担当者の役割明確化と支援強化

制度改正に合わせ、「外国人サポート担当者」を社内で任命。生活相談や行政手続きのフォローなど、日常的なサポートを一手に担う仕組みをつくりました。担当者は自治体主催の研修にも参加し、制度や文化の違いに対応できる体制を整えています。

~知らなかったでは済まされない時代へ~

育成就労制度は、単なる「制度の変更」ではなく、外国人労働者との関係性そのものを見直す転換点です。今後は、企業側が主体的に制度を理解し、適切な対応を取ることが、トラブルの回避や人材の定着につながります。

また、育成就労制度では「ただの労働力」としてではなく、共に働き、成長していける人材として外国人を受け入れる姿勢が求められます。A社のような取り組みは、制度移行をチャンスに変える好例といえるでしょう。

「準備した企業」と「そうでない企業」では、外国人材からの選ばれ方が大きく変わってくる時代になります。中小企業にとっても、制度理解と現場対応力が、人材確保と企業成長のカギを握ることになるでしょう。

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