全国後継者動向調査

全国の後継者不在率は52.1%

先日22日、帝国データバンクより全国の全業種約27万社を対象とした2024年の後継者動向を調査した結果が発表されました。その結果、後継者が「いない」、または「未定」とした企業は14.2万社に上りました。全国の後継者不在率は52.1%となり、23年から1.8ポイント(pt)低下し、7年連続で前年の水準を下回ったほか、コロナ前の19年に比べると13.1ptも低下するなど改善傾向が続きました。

<帝国データバンク>

後継者不在率の改善ペースは鈍化傾向がみられますが、自治体や地域金融機関などの支援機関が事業承継を呼びかけるアナウンス効果も加わり、事業承継の重要性が広く認知・浸透したことが、後継者不在率の改善に大きな影響力を発揮したとみられます。

一方で、経営環境の急激な変化により事業承継を中断したケースや、現代表者による後継者選びの見直し、あるいは後継者候補だった人物の辞退や退社といったケースなどもみられます。事業承継が中断・頓挫した要因は多岐にわたるものの、高齢での事業承継では中断・白紙といったリスクがより高い傾向にあります。

年代別:「50代・60代」で後継者不在率が悪化

2024年の後継者不在率は、代表者年代によって動向が分かれました。全年代で最も減少幅が大きかった「70代」(28.5%、1.3pt減)など高齢層で減少が続いたほか、「30代」(81.8%、1.1pt減)など若年代表者でも後継者不在率が大幅に低下しました。

一方で、「50代」は3年ぶりに、「60代」では連続した比較が可能な2016年以降で初めて悪化に転じました。

<帝国データバンク>

全産業で不在率60%を下回る

業種別では、2011年以降の調査期間で初めて、7業種すべてで不在率60%を下回りました。24年の不在率が最も高かったのは「建設業」(59.3%)だが、過去最も高かった18年(71.4%)に比べて12.1pt、前年比でも1.2pt低下するなど改善傾向が続きました。

<帝国データバンク>

反対に最も低いのは「製造業」(43.8%)で、現状のペースで改善が進んだ場合、2020年代に不在率40%を下回る可能性があります。

2024年の事業承継動向 脱ファミリー化」が加速

2020年以降の過去5年間で代表者交代が行われた企業のうち、前代表者との関係性(就任経緯別)をみると、24年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが36.4%に達しました。これまで事業承継の形式として最も多かった「同族承継」(32.2%)を速報値段階で上回りました。2023年(実績値)は「同族承継」(36.0%)が最も多かったものの、「内部昇格」が占める割合との差は1.6ptまで縮小しました。

<帝国データバンク>

2024年は買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.5%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.5%)など、社外の第三者を経営トップとして迎え入れる事業承継の割合も増加傾向が続いています。日本企業における事業承継は、これまで最も多かった身内の登用など親族間承継から社内外の第三者へと経営権を移譲する「脱ファミリー化」の動きが加速しています。

ベテラン志向

2022-24年の3年間で代表者交代が行われた企業のうち、後継者として就任した後任代表者の業界や経営経験の有無を分析した結果、24年は業界経験が「10年以上」ある後任代表者が8割超を占め、業界に精通した人材が多く代表者として就任しました。

このうち、「経営経験の有無」について分析したところ、最も割合が高かったのは「3年未満」(59.0%)で、多くがベテラン社員や役員として業界経験が長いものの、経営経験が少ない人材でした。一方、業界に明るく経営経験も豊富な人材が後任代表者として就任する割合も増えており、24年は業界・経営経験がともに10年以上の割合が14.2%を占め、22年(13.6%)から拡大傾向が続いています。 最近の事業承継では「社長経験者」など、外部のベテラン人材を後継候補として求める傾向もみられます。

<帝国データバンク>

今後の見通し

コロナ以前から官民一体となって推し進められてきた事業承継への啓蒙活動や支援が中小企業にも浸透・波及し、後継者問題に対する代表者側の意識改革が進むなど、後継者問題への取り組みは一定の成果を上げているように見えます。

その一方で後継者不在率の低下幅は前年に比べて縮小するなど、改善ペースには鈍化の兆しがみられます。

帝国データバンクが集計した「後継者難倒産」は2024年1-10月で455件発生し、過去最多だった23年同期と同水準で推移しています。また近時は「後継者育成」に頓挫し、承継完了が間に合わずに事業継続を断念するケースも目立ちます。

悪質な「M&A 仲介」に注意

事業承継の手法として近年注目されている「事業承継型M&A」ですが、注意が必要です。

・後継者がいない中小企業の代表者が仲介業者を通じて売却したものの、買収元企業により給与遅配や税金未納など健全な企業経営が行われない。

・個人保証が解除されない。

などといったトラブルが相次ぎ表面化しています。

事業承継はデリケートな事項であり広く公に相談する訳には行きません。加えて準備にも数年を要するなど、問題が顕在化してから動くのででは遅すぎます。

中小企業の経営者の皆さまは、資金繰りや売上拡大に追われる日々と思いますが、信頼のおける相談相手はいるか、また相談相手を確保するにはどうすれば良いかなど、平時の今からいざという時に備えて準備することも必要ではないでしょうか。

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