SDGs実施指針を4年ぶり改訂、企業への影響

 
 岸田政権は12月19日、4年ぶりにSDGs(持続可能な開発目標)の実施指針を改定しました。平成27年(2015)国連で採択されたSDGsは、令和12年(2030)を期限として、持続可能な17の国際目標(経済成長、貧困解消、環境保護など)の達成を目指すもの。日本政府が最初に実施指針を作ったのは平成28年(2016)で、内容を見直すのは令和元年(2019)に続き、2回目となります。
 今回の改訂では、SDGsの認知度が高まった現状を踏まえ、コロナ禍で減速した感のあるSDGs達成への努力を、再び加速させるという強い決意が示されました。国際社会への関わりや現在の経済政策との整合性も具体的に記載されましたが、従来からの政府の方針や政策に大きな変化があるわけではありません。つまり、今後ますますSDGsを意識し、積極的に関与した企業活動が求められるということです。
 
中小企業の成功例
 ただ、SDGsを意識した事業展開は、コスト上昇・効率低下などのリスクを伴うケースもあるため、経営基盤の脆弱な中小企業にとっては死活問題になりかねません。しかし、そこには同時に、ビジネスチャンスが潜んでいる可能性もあるのです。そこで、SDGsを活用して業績アップや企業価値の向上を実現した中小企業の成功例をいくつか紹介したいと思います。
 
処分していた大量の卵殻をエコ素材に転換
 株式会社SAMURAI TRADING(埼玉県桶川市、従業員5名)は、もともとは食品会社としてスタート。業務用デザートを生産する際に排出される卵殻を、毎日大量に処分していました。同社は、この捨てられる卵殻に着目。なんとか持続可能な資源に転換できないかと研究を重ねた結果、卵殻を60%使用したバイオマスプラスチック「PLASHELL」の開発に成功します。
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 さらに、卵殻10~50%をパルプ・填料の代替とした紙製品「CaMISHELL」や、卵殻比率55%の次世代バイオマス素材「Shellmine」も開発。これらの製品は、大手外食チェーンや大手ホテルチェーンなど、SDGsに積極的な企業から採用され、業績を大幅に伸ばす結果につながりました。渋沢栄一ビジネス大賞を2年連続受賞するなど、会社の知名度や評価も上がり、現在はパートナー企業や自治体と共同プロジェクトを展開するなど、活動の幅も広がっています。
 
社会問題になっていた空き家の廃材を活用
 株式会社山翠舎(長野市、従業員25名)は、1970年に長野県で木工所として創業されました。同社が目を向けたのは、地元で社会問題化し、次々と壊されていた空き家の古民家です。日本の伝統的な工法で建築された古民家には、現在では入手が困難な貴重な構造材(樹種、サイズ)が使用されています。廃材となる運命にあったそんな古材に着目した同社は、「古木(こぼく)」とネーミングして活用ビジネスを展開しました。
 具体的には、「古木」を生かした店舗内装の設計・施工と「古木」を使った家具の製作・販売です。歴史の重みを感じる「古木」の魅力は幅広い層に伝わったようで、設計・施工の受注はこれまで500件以上。長野県内だけでなく、首都圏からの受注も増加しているとのことです。家具も好評で、海外への展開も予定されています。また、「古木」ブランドの確立によって職人の若返りも進み、職人の5割が20~30代となりました。
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状態が良い古木は新材にも勝る強度を誇る
 
 
社会貢献や地域密着で企業価値や知名度が向上
 木内酒造株式会社(茨城県那珂市、従業員50名)は、江戸末期創業の老舗酒造メーカー。日本のクラフトビールの代表格で、海外での人気も高い「常陸野ネストビール」でも知られています。同社はもともとエコ意識が高く、酒製造の過程で排出される米や麦の粕を畜産業者に提供するなどの活動を行っていました。
 コロナ禍の時期には、飲食店の営業自粛で大量廃棄されるビールを集め、無料で蒸留を行って「クラフトジン」として返送する取り組みを実施。出荷されずに工場に蓄積されたビールは、手指消毒用の高濃度エタノールに生まれ変わらせて、自治体や医療機関に無償提供しました。また、ビール製造の過程で規格外として処分される大麦を活用したジャパニーズクラフトウイスキー「日の丸ウイスキー」を考案するなど、SDGsの理念に即した製品開発も行っています。これらの取り組みは多くのメディアに取り上げられており、同社の知名度はさらに向上。結果として、製品の売り上げもアップしています。
 
モノを捨てない、ムダにしない企業姿勢
 3社に共通しているのは「モノを捨てない、ムダにしない」という考え方ですが、流儀はそれぞれ異なります。SAMURAI TRADINGが自社の廃棄物をまったく別の資源に転換して活用したのに対して、山翠舎は地域の社会問題となっていた廃材に新たな価値を見出してそのまま利用しました。両者のアプローチは対照的ですが、どちらもビジネスチャンスを狙う明確な意図があり、直接大きなリターンを得ています。それに対して木内酒造の場合は、ビジネスというより社会貢献的な側面が強く、それが巡り巡って自社の評価を上げたという形です。このあたりは、経営が安定している企業ならではの考え方といえるでしょう。SDGsへの取り組み方に迷っている中小企業は、まず地域密着・社会貢献と割り切って始めるというのも一つの手かもしれません。令和6年(2024)は中小企業のSDGs取り組み元年にしたいものです。
 

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