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機能しない「産業復興機構」:二重ローン問題1,000件相談なのに解消たったの2件!?、不満から新たな機構設立の声

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「産業復興相談センター」へ相談1,000件に対し買取りはたったの2件!
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東日本大震災で被災した中小企業などの二重ローン問題を解消する「産業復興機構」は、昨年12月28日、福島産業復興機構が設立され、11月に設立された岩手と茨城、12月27日設立の宮城と被災地での課題解消へ準備が整いました。「産業復興機構」は、県と地域の金融機関、中小企業基盤整備機構などが共同で出資し、買取額は約2,000億円程度とされています。
昨年の11月以降、被災地4県には「産業復興相談センター」が開設され、これまで3ケ月で約延べ1,000件の相談がありましたが債権買取りまで到達したのは、「岩手産業復興機構」の2件にとどまっていることが2月14日判明しました。

使えない「産業復興機構」買取条件・価格合わず利用者から「期待はずれ」
二重ローション解消に中小企業は、買取り価格や条件をめぐり金融機関と交渉しますが、債権者との折り合いがつかないケースが多く見られます。「産業復興機構」は、被災企業の再生を大きく後押しすると打ち出したものの、買取り条件やしくみの使い勝手の悪さから「お役所仕事」とか「期待はずれ」の声も上がり改善が急がれます。
「岩手産業復興機構」は、昨年11月に続き1月30日までに2件目となる商業施設の支援を決めました。同施設は沿岸部にあり、1階部分を津波で浸水被害を受け営業を停止。主要金融機関が新規融資を行い、事業再生の見込みがあることを条件に既存ローンを買取り、返済を凍結。再建後に残債を地域金融機関など第三者へ売却することになります。

小規模事業者向け?「東日本大震災事業者再生支援機構」3月5日業務開始
政府は、幅広い事業者の支援を掲げ「産業復興機構」とは別に新しい「東日本大震災事業者再生支援機構」を今月設立。平野復興相は、3月5日から業務を開始すると発表しています。同支援機構は被災した零細企業や農業・水産業者、医療法人など小規模事業者を対象に既存ローンを買取り、最長15年返済を免除するとしています。
同支援機構の本店は被災地、仙台に置き、事業再生や金融の専門家が多い東京都にも拠点が設けられ約100名体制、買取額は約5,000億円を見込んでいます。支援対象は異なるものの両機構とも業務内容に大きな違いもなく、買取条件・価格など組織間のすみ分けに課題が残ります。
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政府案、民間金融機関出資が利用拡大の足かせ?高まる野党案の「新機構」買取り支援
二重ローン問題は、震災前に既存ローンがあった事業者が、再生のため新たな融資を受けることでローンが二重となる状態です。この問題を解消しなければ地域経済の再生ができないと既存ローンを金融機関などから買取り一定期間凍結するのが2つの機構の役割となります。政府案の「産業復興機構」は残債の猶予が5年で、地域の民間金融機関も出資しているため再生の可能性が高い事業者に限られるなど壁の高い支援策となっています。
一方、野党案の「東日本大震災事業者再生支援機構」は猶予が15年、国の全額出資のため対象が大幅に広がると業務開始前から期待が高まります。いづれも買取条件・価格などは金融機関との交渉となるため事業者の課題解消には容易ではなく一定の障壁も残ります。

[2012.2.16]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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