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被災地融資残高2兆8千億円:被災企業・再生ファンドで二重ローン免除、事業再開へ加速

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津波の被害で崩壊した家屋の融資残高1兆円超え
110531_1.jpg金融庁は、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の沿岸地域の企業や住宅などの融資残高が、概算で約2兆7,800億円となることを明らかにしました。内訳は中小企業向けが1兆4,300億円、大企業向けが1,800億円、住宅ローンは9,400億円で、津波の被害に限定すると1兆1,900億円とあります。調査対象は、3県の沿岸部ほか、福島第1原発の20km圏内にある39の市町村の大手3行と、地方銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫の融資残高の合計ですが、さらに内陸部や間接被害にあった企業や、住宅などの融資残高に、首都圏など他県の金融機関を利用した融資残高も加われば融資残高はさらに大きく膨らみます。

生活再建に向けて地場産業の復活は必定
地震による大津波で建物が玩具のように流され、残された土台だけを目の前にした事業主や家主のこれからを考えれば、残された融資残高は、国全体で負担を軽減しなければならないことは誰でも思うことでしょう。地震や津波、火山噴火、豪雨、洪水など自然災害は的確な予測は不可能に近く、わかっていても人間ではかなわず、ただ呆然と被害状況を見送るしかないことが多くあります。いつ、自分が被災者になるかもしれません。残された設備や住宅の融資残高は、生活再建、事業復活に向けて軽減する政策が急がれます。

七十七銀行:取引先被災企業1,700社の債権処理費用569億円
震災で遅れていた被災地の地方銀行8行の平成23年3月期の決算が5月26日に出そろい、不良債権処理費用は、被災した取引先企業の貸倒費用を大幅に積みましたため、8行で約965億円と前年から約6倍になったと報道がありました。このうち569億円は七十七銀行で沿岸部の取引先約1,700社が被災したのが要因としており、同行と仙台銀行2行は資本強化のため、金融庁が利用を促す金融機能強化法による公的資金注入の検討を表明しています。
サプライチェーン(供給体制)の混乱から自動車、電機産業などに減産の影響を与えた内陸部の企業は回復のスピードを早め、トヨタも6月の生産を平常時の7割としていましたが9割に前倒しました。しかし、沿岸部では土台だけが姿を見せ、がれきの処理もできず、そのままとなった工場跡地も多くあります。どこからどう手を付けていいのかわからなくなる事業主も多くいるでしょう。
七十七銀行の氏家頭取は5月26日の会見で、「全国経済は(復興需要で)V字回復するかもしれないが、被災地は別物」と、沿岸部の産業の見通しに警戒感を示しています。

投資家出資による融資残高の株式化で事業再生、拡大へ
被災者は生活再建に家を建て直し、企業は事業再開に設備・運転資金を金融機関から新たに融資を申し込みますが、既存の融資残高との二重ローンに政府や自治体などで課題解決に検討を重ねています。有力候補として、官民が出資する再生ファンドが、金融機関から中小企業向けの融資残高を買い取り、整理した上で企業の再生を進めるとあります。復興に向けた再生ファンドは、既存の融資残高を免除とする代わりにその企業の株式を取得し融資残高の株式化を実施するもので、政府では再生ファンドを資金支援と経営再建の担い手として活用する計画とあります。
再生ファンドは、事業再生が可能な企業に投資家から資金を集め出資される基金で、企業の早期復旧、事業再開に向けて設備・運転資金などのほか、資金繰りや事業計画などプロとともに事業再生を目指します。岩手県では、二重ローンの解消に国や自治体、金融機関などが再生ファンドに出資、設立し、企業支援を政府に要請していました。同県では、個人の生活再建も重要であるものの、雇用の場を復活させ、被災者の雇用による生活再建も重要としています。

雇用保険申請11万人超、就労先の早急な提供が課題
被災者の不安は、これから先の不透明な住む場所や資金、働く場、実行時期と、今後明確にいていかなければなりません。厚生労働省によると、東北被災地3県で雇用保険の申請に必要な離職票の交付を受けた人が5月22日までに11万1,573人とありました。完全復興には時間がかかるものの、雇用先さえ明確であれば精神的にも前向きになれるものです。被災企業は再生ファンドの活用で二重ローンの不安を解消し、日本の産業発展の支えとなってもらいたいものです。

個人事業主は債権放棄に特別措置、被災企業は再生ファンド活用で重複ローン状態解消
金融庁が5月26日、再生ファンドの対象にならない被災商店主など個人事業主の二重ローン対策として、過剰債務状態に陥るのを防ぐため、債権放棄に特例措置を設けることを決めたとありました。追加融資を受けやすいように信用力を示す格付けの維持も認め、金融機関へは貸倒損失を無税償却できる基準を新設するとあります。また国土交通省では、個人向け住宅ローンの負担軽減に、新たなガイドラインを設け、融資残高の免除する方向で検討とありました。

政府支援:もうすぐ二重ローン問題に具体策提示/情報の取得を怠らないように!
政府は、二重ローン問題に関して、今月内にも具体策を提示とあります。政府支援によって既存ローンは免除され、被災地に新しい家、新しい工場、設備で家主、事業主は震災前以上に前向きな気持ちとなり、再生への意欲向上を図りたいものです。新たな気分で一新、東北に震災前以上の活況を取り戻し、他の地域に経済的な波及効果をもたらせて景気浮揚に貢献して欲しいものです。

[2011.5.30]

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八木宏之プロフィール
セントラル総研・八木宏之
株式会社セントラル総合研究所 代表取締役社長。連帯保証人制度見直し協議会発起人。NPO法人自殺対策支援センターLIFE LINK賛同者。
昭和34年、東京都生まれ。大学卒業後、銀行系リース会社で全国屈指の債権回収担当者として活躍。平成8年、経営者への財務アドバイスなどの経験を活かし、事業再生専門コンサルティング会社、株式会社セントラル総合研究所を設立。以来14年間、中小企業の「事業再生と敗者復活」を掲げ、9000件近い相談に応えてきた。
事業再生に関わる著書も多く出版。平成22年5月新刊『たかが赤字でくよくよするな!』(大和書房)をはじめ、『7000社を救ったプロの事業再生術』(日本実業出版)、『債務者が主導権を握る事業再生 経営者なら諦めるな』(かんき出版)、平成14年、『借りたカネは返すな!』(アスコム)はシリーズ55万部を記録。その他実用書など数冊を出版している。
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